第180話 畜産奉行・高山右近
主に牛、馬、豚の飼育を高山右近に任せて約1年、筑波山の裾のに広がる平地の一角に大規模な畜産城が完成したとの報告があったので視察に出向いた。
新土浦城と高野城の築城と町作りに集中していたので今年は1年が過ぎるのが早い。
畜産場でなく、『畜産城』と表現したのは間違いや誤字ではない。
まさに『城』。
堀は空堀ながら一重の堀を持つ畜産場は、土塁と空堀と木の柵が張り巡らされ、三階建ての小規模な櫓が作られていた。
牛、馬、豚の区画に分けられた小降りな城。
豚は以前から、今井宗久が各地から集めた品種が混在していたが、牛もやはり今井宗久はあっちこっちからかき集めたらしい。
もともといる、黒毛で角が長い農耕牛に混ざって見えるのは・・・?
バッファロー?
こいつって牛?
は?沖縄で海沿いを牛車を引いていそうな牛?
今井宗久、どっから仕入れてきたんだ?
「右近、この牛達は大丈夫なのかい?」
「大丈夫と、言いますと?」
「食べられるのか?ってこと」
「牛は牛ですから、味はともかく」
「柔らかな、脂身いっぱいの牛が食べたいのだけど」
「常陸大納言様、脂身は殺してみないとわかりませんよ」
と、胸で十字をきって祈る右近。
「ん?」
「一頭斬ってみましょう」
と、刀を抜こうとした。
「ちょっと待った、今は良いから、適度に育ったら精肉して送ってね」
「そうですか?味見しなくて宜しいですか?」
「一頭を味見ってちょっとね」
鶏、豚を捌いてるのを見てきてはいるが、牛まで捌くのを見たくはない。
しかも、若いほうが肉が柔らかいだろうと子牛を親牛が見てる前で捕まえてくるんだから、それはやめてほしい。
「牛達の餌にトウモロコシが欲しいのですが」
「あ、えっと、トウモロコシは幸村に任せてるからそっちと話し合って」
「真田殿ですか?」
「そう、幸村を農政奉行に任命してるから、米に片寄りがちな今の農業を改革しているから、今は高野城の築城奉行を優先しているけど来春からは農政改革始めるから」
「わかりました。真田殿と相談してみます」
「そうそう、農政改革で働く農家に優先で牛達の糞を配ってあげて」
「肥料ですね、売れば金になりますが」
「んー、当家はお金には困ってないから農政改革優先かな」
「はっ、かしこまりました。で、笠間城の改修を始めますが、城下に南蛮寺を作りたいのですが」
「んー、前にも言ったけど笠間は稲荷神社の地だから、城下にではなく、城内に小さなのだったら許可するよ」
「笠間稲荷ですか、常陸大納言様は庇護されるか?」
「俺は常陸国内の寺社仏閣は大切にしたいからね、土浦のほうが一段落したらいくつか整備したい寺社があって、笠間稲荷もその1つだから」
「そうですか、仕方ありませんな」
「くれぐれも、無理強いな布教だけはしないで、一向宗みたいな一揆を起こさなければ布教の制限をするつもりはないから」
高山右近の信仰心ってかなり強いんだよな、確か国を離れてでも信仰し続けるんだから。
厄介な事にならなければ良いのだけど。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます