第165話 日本統一
冬風が吹き始め、だるま型ストーブに火を入れ活躍しだしたころ、織田信長は銀閣寺城に帰城した。
それを耳にして俺は京の銀閣寺城に登城した。
「島津を滅ぼしてくれたわ」
信長の第一声はその一言だった。
「えっと、いろいろ言わないことがあるのですが、まずは戦勝おめでとうございます」
「うむ」
「それと、大納言の官位と常陸国、童子切安綱ありがとうございます」
「うむ」
「信長様?疲れてますか?」
「ああ、船旅続きで少々な」
「そうですか、俺、常陸に行ってしまうわけですが大丈夫ですか?」
「信忠も陸路でしばらくすれば帰ってくる。心配はいらぬ、常陸は、常陸国を好きなように統治して見せよ、そけを見て我が政治に活用する」
「体だけは大事にしてくださいよ」
「年寄扱いするな、馬鹿者」
「俺みたいに信長様に無礼の口が利けるのは他にいませんからね、少し湯治でもしたらいかがですか?有馬あたりで」
「うむ、考えておこう、そうだ常陸、あの辛い汁の飯を作れ、あれを食べると元気が出る」
「カレーですね、わかりました」
俺はいつものごとく台所でカレーを作り信長に出した。
ニンニク多め、疲れを取ってもらうのに。
「このほくほくとした実がなかなか臭いが甘みもあり美味いな」
「はい、ニンニクを丸のまま皮を剥いていっぱい入れましたから、ニンニクは滋養強壮の薬にもなりますからね」
「医食同源、大陸の言葉だったな聞いたことがあるぞ」
「はい、食は大切、病気の予防にも治療にもなりますから」
「わかったわかった、常陸の言うとおり無理はせぬから、もう良い、で、他に用があるのであろう?」
「はい、島津を倒した今、信長様にはこの国に敵はおりません。しかしか、日本と言う国は大名がそれぞれ自らを小国の主だと思っています。それでは、日本国を統一したというのには問題があります。そこで、信長様には『日本国統一宣言令』をだしていだき、日本国は織田家が統一した、大名は幕府のしたにある地方自治体でしかないことを宣言していただきます」
「日本国統一宣言令、なるほど、で、日本国はどこからどこまでを指す」
俺はあらかじめ書いておいた樺太から沖縄までの地図を出して、
「蝦夷の北の地から琉球国までを日本国といたします。今の軍事力なら反対するものなどおられないでしょう、そして、伊豆に減俸になった北条を蝦夷地に送ります」
「北条を蝦夷?だから、あの時根伐りは避けたのか?」
「はい、蝦夷を開拓させるのに持って来いの人物だと思っていましたから」
「よし、わかった。その案は採用する。なるほどな、これが日本国か、縦長の島国なのだな」
改めて地図をしっかり見る信長。
「この地図は貰うぞ」
「はい、構いません、俺ならそのくらいの地図ならいつでも書けますから」
「未来の民は皆か?」
「だいたいの形だったらほとんどの人が書けますよ。ただ、地名を指定したりすると書けなくなりますけど」
「だいたいの国の形だけを知っているだけでも知識としては良いと思うぞ、常陸、世界の地図は書けるのか?」
と、不完全な形の地球儀をくるくるとまわしながら言う。
「だいたいなら」
「そうか、では後から書いて送れ、使うからな」
「わかりました。ただ、世界地図だとかなりうろ覚えですよ」
「それでもこの南蛮人が作った地球儀よりは正確なのであろう?」
「はい、日本が二つの島で描かれているこの地球儀よりは」
「なら、そちらのほうを使うのが良いであろう。さて、常陸、寒くなる前に常陸に移り住んだらどうだ?また、寒い冬になるぞ」
「はい、近江の冬は寒いのでそうさせていただきます」
俺はその一週間後、南蛮型鉄甲船三隻に家族、家臣、家畜、荷物を乗せ常陸を目指した。
1586年12月21日
征夷大将軍・織田信長は日本国統一宣言をした。
本能寺の変より数えて4年と半年。
織田信長は名実ともに日本の支配者となった日だった。
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