第166話 常陸入国

 茶々、お初、お江、桜子、梅子、桃子、森力丸、柳生宗矩、伊達政道と足軽を乗せ俺の指揮下に入った九鬼水軍の一部の兵を乗せた南蛮型鉄甲船3隻は常陸国の鹿島に上陸した。


鹿島には俺が常陸の領主になったという段階で、家康が港を築いて南蛮型鉄甲船を停泊できるように整備していてくれた。


勿論、南蛮型鉄甲船にはうちの家臣3000の足軽全員が乗りるわけでもないので大半は陸路。


その他に、だるまストーブの件以来、俺を慕ってくれる鍛冶師集団や、幸村の農政改革の下で働いていた農民も移住してくれると言うの2000人とでおおよそ5000人が常陸に向かっている。


新土浦城は当然完成はしていないが、もともとある土浦城がある為、俺たちの住居は困らない。


茶々は妻、お初は側室の為、同行することはわかっていた。


お江が母親のお市様と一緒に近江に残るかもしれないと思っていたが率先して船に乗っていた。


1586年12月31日


土浦城に入城すると、徳川家康が迎えてくれた。


うっ、そうだよね、新土浦城、頼んでいるのだからいてもおかしくないよね。


「常陸大納言様、お国入り、末永く繁栄いたしますことを願い奉りまして、万歳、万歳、万歳」


と、門で迎えてくれる。


「恥ずかしいからやめてほしいんだけど」


と、ぼそりと言うと、


男勝りに馬に跨っているお初が、


「ほら、しっかり胸張って、これからはここの国主なんだから堂々としなさいよね」


と、背中を一発叩いてきた。


「痛い、っとにお初、少しは力加減をだな」


「なによ、もう一発?」


「わかったわかったからから、やめなさい」


この美少女側室、外見は可愛いのに、『凶暴につき注意』と札でもつけてやりたい。


およそ500の兵を引き連れしっかり胸を張り入城した。


やはりあれをやるべきだな。


門前に一目見ようと集まっていた領民のほうを向き、


「我こそは平氏朝臣大納言黒坂常陸守実琴なるぞ、これより、この地を我が預かる、我が領地、殺さず・盗らず・犯さず、これを厳命する、破ったものは重い罰を与える、しかと心に刻みおけ」


っと言って腰の童子切安綱を抜き振りかざした。


今回は近江大津城に入城したときのような空砲発射はしない。


それはやらずとも俺の名は最早、日本国中が知る物、今更、あの火縄銃改発砲をすれば完全に脅しだ。


織田家に仕える鬼という名は庶民にも広まっているのは左甚五郎の件で知っているので、名乗りを上げるだけで十分かと思った。


「我ら、常陸の民はいついつまでも黒坂家に歯向かうことはありません、常陸大納言様、万歳、万歳、万歳」


と、領民の代表みたいなお爺さんが声をあげると皆が万歳をしていた。


俺はそれを見届け城に入った。


「しまったー、ストーブ先に着けるの忘れてた・・・・・・寒い」


「御大将、そう言うかと思いまして、作っておいたストーブ二台すでに設置してあります。ご安心ください」


と、力丸が言う。


「お、よかった、ありがとう」


「これくらいの事、黒坂家に仕える者としては当然のことでございますよ」


と、言うと、茶々達やほかの家臣が笑っていた。


「ははは、寒がりの殿様ですみませんね、ははは」


「ですが、近江よりは幾分暖かいような」


と、力丸が言うと茶々が、


「そうですね、私もそう感じます」


「太平洋に流れる海流の影響でね、常陸は冬は比較的温暖なんだよ、雪も少ないし、意外かもしれないけど、ここから先の大甕あたりから勿来の沿岸なんて、西に阿武隈山脈があってその山で西からの雪雲を防いでくれるからほとんど降らないんだよ」


「真琴様ってほんと常陸の事になると自慢気に語るわよね」


と、お初が言うと皆が笑っている。


「マコ~常陸の美味しいものは?」


と、俺に負けない組意地姫のお江が聞いてくる。


「ははは、近々入手して作ってやろうじゃないか、ちょうど季節だ、絶品だぞ」


「御主人様、台所は私たちが」


と、桜子達が言う。


「これは譲れないんだな、他の物とちょっとばかし作り方の変わった鍋だから」


「おっ、なにか美味い物の話ですかな?」


緑の狸~聞いていたか。


「家康殿、この度は城築城の協力、並びら治水工事まで請け負っていただきありがとうございます」


「とんでもございません、この家康、常陸大納言様には返しきれない借りを作ってしまいましたから、それより何か美味い物の話をしていましたな?御相伴に預かりたいのですが」


と、よだれを右腕で拭きながら言う家康を忠勝が叩いていた。


「政道、政道なら常陸の道わかるであろう?」


「はい、だいたいなら一度、米沢から近江に行く際に通りましたから」


「じゃあ、大洗の漁師のところに行って仕入れてきて、とにかくデカいやつを数匹」


「はい、わかりました」


と、言って着いたばかりなのに馬を走らせ出て行った。


「桜子達は大根と白菜とネギを仕入れてもらっていいかな?大洗から届いたら使うから」


「はい、かしこまりました」


久々に正月は常陸の名物で年明けだな。


冬のあれ、美味いんだよなぁ~。


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