第161話 築城

 常陸の土浦に作る城を絵図面に具体的に書くこと5日が過ぎようとしていた。


城に逗留している本多正純を呼んだ。


「待たせて悪かったな」


「いえいえ、とんでもございません。毎日毎日、御馳走の数々、私などの為にあのような料理を作っていただき」


「あぁ、あれ当家では毎日の普通の食事でしてね、だから、城内に鶏や豚を飼っているのですよ」


「なっなんと、噂に聞いていましたが、食道楽の鬼と呼ばれるだけのことはありますね」


「なんなんです?その鬼とは?」


なんか俺についているあだ名と言うのか、二つ名と言うのかだんだんすごいことになっている気がする。


「鬼、いえ申し訳ありません、他意はないのですが、それより築城の図面が出来上がったとか」


と、言うので新土浦城の絵図面を渡すと、


「なんですか、これは、初めて見る。こんな城、こんな城にどうやって攻めれば良いのやら・・・・・・」


そりゃ、今は良好な関係でも敵対する可能性だってあるわけだから敵の視点で見るよね。


「作れない?」


「とんでもございません、武士が一度口に出した事、二言はございませんが、ただ、霞ケ浦・北浦、利根川治水工事まではなんとかできますが、流石に高野城にございますか?もう一つの城となりますと人員に限界が」


「では、新土浦城と霞ケ浦・北浦・利根川の件は任せられるのだね?」


「はい、この正純、当主家康に成り代わりましてお約束いたします。出来ない時にはこの腹掻っ捌いてくれます」


「わーあ、そういうのなし、失敗したとしても誰かが切腹するとかなし、それ約束できないなら仕事は任せられないから」


大大名黒坂家がブラック大大名になってしまう。


平成のブラック企業並みの大名の当主、そんな物にはなりたくない。


「優先順位は、新土浦城の築城、それが終わってからで良いから、治水工事を開始して」


「はっ、心得ましてございます。すぐに、堀切などの縄張り作りの作業を始めますが、建物はやはりお好みもおありかと存じますので適当な時期を見計らって常陸にお越しくださればと思います。では、また」


と言って正純は常陸に馬を走らせた。


さて、高野城をどうするか、だが・・・・・・。


「御大将、父上から書状が届きまして、上野の国を賜れたのも御大将に私が仕えている功績もあるから、国造り、城作りにお役に立つなら協力をしたいとの由」


「じゃー、土浦に作る予定の高野城、任せていいかな?こちらの城は、霞ケ浦に港を備えているなら武田流築城術で建てて良いから」


「はい、御大将の新しき縄張りでなければ真田だけで築城は可能でございます」


「予算は、力丸と相談して、必要なら曜変天目茶碗を売るから」


「はい、力丸殿と相談してみます」


お金なら蔵にたんまりとあるはずだが、使っていない興味もない茶器を売ったほうが懐が痛まないで済む、そう思ったが、茶々に叱られた。


「あなた様、曜変天目茶碗を売るなど言語道断、あの茶器は私が預からせていただきます。築城の資金など蔵にも金はありますし、今井宗久、津田宗及、千宗易に出させればよいのです。新しい居城の町に出店を許せば出すはずです」


「えっと、曜変天目茶碗、売っては駄目?」


「はい、私の目標は、あの茶碗であなた様を腰砕けになるほど唸らせられる茶を点てる事なのですから」


毎日毎日、城にいるとき茶を点ててくれる茶々はやはり今もまだ、信長の茶と競っているようだ。


仕方あるまい、曜変天目茶碗を売って築城の金を作るのはやめて、蔵の金とうちの三大御用商人に頼んでみるか。


そもそも、うちの蔵の金っていくらあるんだろう、城っていくらで建てられるのだろう?


今まで決済はまかせっきりだったが少しは気にしないと駄目だな。


確か大きな金は兵士の甲冑を揃えた時くらいしか使っていない気はするけど。


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