第150話 常陸決戦中編
俺はキング・オブ・ジパング号で縛られている。
部屋に残されたのは俺と伊達政宗が弟で俺の側近をしている政道だけ。
もちろん、船には九鬼嘉隆のけたたましいサイレンのごとくの声がしているから兵は乗っているが、信長と力丸は大甕神社の本陣に入ったようだ。
「政道、逃げないから縄ほどいて、暑くて仕方がない、大丈夫だから」
「御大将、もし逃げられると責めは私が負わねばなりませんそれを理解しているなら」
と、言って縄をはずしてくれた。
流石に、家臣が切腹だの斬首だのも困るし、だいいち陸に上がる手段がない。
キング・オブ・ジパング号と陸とは小舟がちょくちょく行き交っているが、それに隠れて乗れそうなほど俺の顔が知られていないわけではない。
だから、脱出などはしないがただただ見ておきたかった。
陸地側の戸を開け目をこらして見るが陣は動いていない。
人が裸眼で海から見えるのか?と、言われると思うが旗と馬印がしっかりと見える。
まだ、敵が現れていないから動きがない。
笠間城と牛久城で佐竹軍は布陣している。
下野にも侵攻している。
「政道、嘉隆殿から情報だけは貰えないかな?船からは出ないって約束するからさ」
と、政道は少し困ったかおおすると、開けていた戸から顔がニョキッと現れた。
「ぬぉーびっくりした!確か、幸村が家臣の佐助だったね?」
「はい、幸村が配下、佐助に御座います。幸村の頭(かしら)から、御大将の傍について指示に従えとの命令がありましたもんで」
外の壁に器用に張り付きながら話す佐助はスパ○ダーマンだな。
「じゃー、常陸国、下野国の情報を逐一教えて欲しいのだけど」
「はっ、我ら真田の忍が散らばりまして、情報を集めさせていただきます」
と、言って外の壁から手を離して海に飛び込んでいった。
んー、嘉隆殿にちゃんと話せばんな無理しないで船の乗り降り出きる気がするんだが。
佐助は夜になる毎日情報を持って現れた。
下野では、羽州探題・最上義光・約18000はが会津から下野に入り那珂川に沿って常陸に攻め込もうとしていたところ、反幕府30000の兵と激突、数で勝る反幕府軍に圧される最上義光軍であったがそこに、上杉景勝の家臣、直江景継率いる10000の兵が合流、一気に形成は逆転し、下野と常陸の国境になる御前山に陣を構えたとの事だった。
反幕府軍の30000の兵は20000に減り、笠間城に逃げ込んだ。
笠間城に本陣を構えていた佐竹義重軍25000と合わせて45000が籠城。
牛久城を拠点に構えていた常陸国南側の反幕府勢力およそ60000は駿河から北上してきたおよそ80000の兵の徳川秀忠・織田信澄軍に攻められ落城、残った55000の兵は水戸城に退却した。
最早、この段階で勝負は決している。
東西南北を囲まれているのだから、そこで佐竹義重は降伏の使者を織田信長に送ってきたが、信長は斬り捨てた。
降伏は認めないと。
信長か望むもの、それは南蛮型鉄甲船と大砲を使った決戦、ただそれだけだった。
佐竹義重は笠間城を放棄して水戸城に入城、兵の少ない北側の俺たちがいる久慈川に活路を見出だそうと進軍してきた。
北へ侵攻している、立て直しを謀ろうとしたのか信長の首を狙うためなのかは不明。
1586年8月31日
佐竹軍およそ100000の大軍は久慈川南岸に陣を構えた。
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