第147話 奇才の黄門

事細かく書いた俺の茨城周辺の地図に感心しながら、政宗は蘭丸の説明を聞いていた。


「沿岸を艦隊の援護を受けながら進む、今までにない奇策驚くしかありません、信長様がお考えで?」


と、言うと信長を俺に扇子を向けて、


「この食いしん坊馬鹿が考えた戦術だ」


と、言う、わかりましたわかりましたよ、取り合えず皿は置きますから。


「俺は常陸の鹿島で生まれ育ちました、常陸の地形なら頭に入ってます」


「噂には聞き及んでおりましたがまさに奇才の黄門、常陸様は鹿島ですかそれでですか、なるほど」


と、信じてくれる政宗、って、奇才の黄門って二つ名があるの、俺?中納言だから「黄門」って言われるのは知っていたけど読み方がかっこ悪い、中納言辞めたくなる。


「我が家臣、伊達藤五郎成実と、相馬殿がすでにこの辺りに陣を構えてはおるのですが」


と、言って、平成で言う北茨城市の大北川の北側にある山、磯原あたりを指差した。


「では、そのまま動かず艦隊が南進するまで留め置いてください、大北川より南側の岸を沿って進んでいただきます、山側だけに注意してもらい、こちらからは大砲で進む軍の前を砲撃します」


「砲撃の後の地を進めば良いのですね」


「そう言うことです。俺が一緒に付いて行きましょう、道先案内人になれますよ」


と、俺が言うと信長をが机を扇子で叩き、


「それはならん、常陸はこのまま船で海上からの援護に徹っしよ、もしものことがあったら市になにを言われるかわからん」


と、鋭く睨み付けてきた。


「んーでも、ほら俺の火縄銃改武装の兵が500いますし、その方が山側からの敵に銃弾で対応出来ます」


「ならば、ほら、利家の甥と真田の小倅(こせがれ)が居たであろう、その二名と蘭丸を軍監奉行として付ける、なんなら家康も船から降ろそう」


不味いことになった気がする。


慶次と幸村が政宗と一緒?そして、家康も?内紛起きそう。


家康だけでも降ろさないようにしなければ。


「わかりました、俺は船からの援護に回ります。兵は慶次と幸村に任せますから家康殿に手間をかけさせる必要はありません、力丸、二人は?」


「はい、慶次殿が大津、幸村殿が平潟にございます」


「なら、伊達殿が進軍したらそれに合流するように指示を出して」


「はっ、すぐに」


と、言って陣幕の外にいたうちの家臣が走っていった。


確か、幸村の家臣の佐助だったような・・・。


家臣の家臣の名前までは覚えていない、少し覚えないと駄目だな。


信長は立ち上り船に戻ろうとする、俺は政宗の近くにより、


「で、では、久慈川の河口で合流しましょう」


と、言って手を握ると強く握り返してくれる政宗、伊達政宗と握手しちゃったよ。


って蘭丸と力丸が俺の両肩を掴んで引き離した。


別に握手くらいいいじゃんか、後でサイン貰おう。


信長のサインはこっちに来てすぐに貰ってるしな。


鶺鴒(せきれい)の花押入りのサインを頼もう。


などと考えながら九面の港からキング・オブ・ジパング号に乗り込んだ。

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