第142話 里見義康

小田原城艦砲射撃に、北条降伏のあと南蛮型鉄甲船は、補給をかねて駿河城沖に停泊して、俺達は入城をした。


もちろん、何かあれば直ぐに砲撃が出来るよう九鬼嘉隆は船に残り、本多忠勝が人質としてキング・オブ・ジパング号に乗り込んだ。


駿河城は徳川家康が新たな拠点として築城途中の城、そこで物資を運んでくる坊丸を待っている。


砲弾はまだ尽きてはいないがこれから安房、上総、下総、常陸へ行くには十分な補給が必要。


それと陸路を進軍している軍も、制圧するためには必要だった。


3日ほど駿河城に滞在すると、先ず徳川秀忠軍38000が着陣する。


さらに次の日には、織田信澄が総大将として率いる織田軍46000が着陣した。


その織田軍には坊丸が率いる補給部隊もおり、南蛮型鉄甲船に砲弾・火薬・食料などが積み込まれた。


「信澄、陸路を北上し北条の城の受け取りをして参れ、秀忠、甲州から来る滝川一益と共に里見、佐竹攻めを始めよ」


と、信長は命令を出す。


「はっ、かしこまりました」


「里見、佐竹などこの徳川の兵にとっては物の数ではごさまいません、直ぐに平らげてくれましょう」


と、言う秀忠に家康は呆れ顔。


「秀忠、力攻めとなれば兵の被害はこちらにもある、佐竹を攻めとなれば蘆名連合軍との大決戦もあるのだ、兵を温存しながら着実に進め」


と、家康が秀忠を叱っていた。


準備は整い、平成で言う千葉県に向けて南蛮型鉄甲船が出発しようとしたとき、房総半島の覇者、里見義康本人が、駿河城に登城してきた。


「降伏、致します」


「で、あるか」


信長は短い返答をする。


「安房の国の二群の領地を与え、それ以外は没収とする」


「そ、それでは我等は食べては行けません」


と、慌てる里見義康、恐らく安房一国と上総の一部の領地ぐらいはと思っていたのだろう。


「ならば、領地に戻り徹底的に戦えば良かろうそして、滅べ」


と、無慈悲な答えを言う信長。


そう、房総半島は東西を海、東西から挟んで艦砲射撃をし山に逃げた兵を大軍を持って攻め入ればさほど時間を必要とはしない。


先程の艦隊決戦、小田原城艦砲射撃による砲撃の噂は里見義康だって聞いているはずだ。


そして、今、駿河城には84000の大軍が集結している。


さらに、甲州にも滝川一益が率いる大軍がいる。


北には蘆名、佐竹と戦っているが伊達、最上、相馬、南部の織田方の大軍がいる。


最早、勝ち目はない。


滅ぶか、小領地で生き延びるかの選択しかないのだ。


「くっ、く、・・・わかりました。仰せのままに」


里見義康は小領地で生き延びるのを選んだ。


残る敵は、常陸の佐竹、磐城の蘆名のみだ。

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