第131話 キング・オブ・ジパング号

 30隻の南蛮型鉄甲船の中にひときわ変わった船が1隻あった。


基本構造的には変わらないが、小さな天守のような物が船の一番後ろに建てられている南蛮型鉄甲船、その小さな天守は金色に光っていて屋根と外壁には銅板が貼られている。


屋根には、龍の飾りつけがされており、遠目に見ると神輿や霊柩車のように見える。


その船の船首には、黄金色に輝く傘の馬印が飾られており織田信長が乗船するための船と言うのは一目瞭然だった。


マストの帆は他とは変わらないのは、そこまで目立とうとはしていないみたいだ。


狙い撃ちになるからであろう、他の船も船首にはそれぞれの船の大将のなのだろう馬印が掲げられている。


遠目では見分けがつくのは船尾の小天守ぐらいだ。


「キング・オブ・ジパング号だ」


そう、その船に歩み寄りながら言う信長。


「日本の王ですか、良い名の船ですね」


と、俺が返すと信長が残念そうな顔がしながら、


「やはり知っているか」


そのくらいの言葉なら高校生の知識があればわかる、しかし、王を名乗るのか?俺は良いのだが、朝廷・公家が知ったらどうなるのだろうか?


将軍なのだからジェネラルが一番合う言葉なはずだが、やはり信長と言う男は日本の国王になる事を望んでいるのか?


帝は国家元首と定め、王を信長とすることも可能な気がする。


これはいずれ提案するか。


そんなことを考えると、


「常陸、お主の兵はそれぞれの船に分散させて乗せろ、この船には追加では20人しか乗れぬ」


と言うので、俺の兵482人は分散させて乗船させ、キング・オブ・ジパング号には18人の兵士と力丸と政道が一緒に乗船してもらう。


俺の足軽兵は選りすぐりの火縄銃改装備の兵を同行させてはいるが、特別な船乗り経験があるわけではない。


琵琶湖内での安宅船の経験しかなく、あまり役に立てそうにはない。


キング・オブ・ジパング号に乗ると、約200人の兵士が乗っていた、甲板の下に居室があるが広いとは言えない板張りの船内。


信長の案内で、船尾の小天守みたいな船橋に入ると二層構造になっており、一階が八畳、二階が六畳の畳の書院造りの和の部屋になっていた。


「ここを好きに使え」


と、一階を俺と蘭丸、力丸、政道に言うと信長は二階にあがる。


八畳の部屋を四人で使うのはパーソナルスペース的にギリギリだな、甲板の下で大人数よりはましだから文句は言えないが。


二階に上がる信長に俺も付いて上がると、信長は開けられた戸から、船員に向かって軍配を振りかざして、


「目指すは北条、いざ、出陣」


と、叫んだ。




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