第112話 農政奉行・真田幸村
俺は大津城の主だが領地として近江を承っているわけではない。
20万石と言う俺の給金は、お金で年払いで支払われている。
莫大な金額らしく、銅銭の山。
これは『天正和円』貨幣鋳造で変わるのだが、今はまだ銅銭が入った瓶壷が倉にぎっしり。
それはそれとして、近江全体は、織田信長の直轄領であり大津城・長浜城・大溝城・賤ヶ岳城・牧野城は、城主は任命されてはいるが領地は他に持っている。
そんな大津城を中心にした近隣の土地は支配が俺にゆだねられており、大津城に周囲には田畑もあり農民もいる。
その農民たちに新しい作物を頼んだ。
トウモロコシ。
俺は織田信長に助言をする事が仕事なため、大津城にずっといない事は想定済みなので農政奉行に真田幸村を任命した。
家臣には農業経験者が二人いる、真田幸村と柳生宗矩。
二人は有名であるが大大名出身な訳ではなく、田舎の戦国大名、忙しい季節には田畑に入っていたとの事、もっとも、兵農分離がされたのは近年で織田信長の功績、それまでは武士だって農業を普通にしていた。
現在、宗矩は俺の秘書、右筆と活躍しているので空いていた幸村を指名した。
本人も田畑に入って体を動かす仕事は嫌いではないらしく、了承してくれた。
春に安土城に行くとき、あとの事を頼んだわけなのだが、
「御大将、見てください、トウモロコシ十袋に増えました」
と、自慢気に見せてきた幸村。
種として渡した10キロ程の麻袋に入ったトウモロコシは、十倍になる収穫となった。
もちろん、乾燥しているトウモロコシ。
「おっ、初めてなのに良く実ったね」
と、中身を手に取りながら言うと、
「はい、目新しい作物な為、今井宗久の店の番頭に相談したところ、南蛮宣教師を紹介していただいて、トウモロコシの栽培を教えていただきました」
「なるほど、南蛮宣教師か」
「で、でして、南蛮宣教師が御大将に会わせてほしいと申しておりますが」
協力してもらった以上会わないわけにはいかないだろう。
協力してやったのに会いさえしないのか?大津中納言は!などと噂が広まっては困る。
「問題ない、連れてきて良いよ」
「はっ、では日を改めまして連れて参ります」
そう言って、幸村は城を出ていった。
安土城では何度か見かけたが話したことはない、ついに来るのか?
ルイス・フロイス。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます