第110話 九州討伐

大友宗麟と立花宗茂が島津と戦っていたが状勢は逼迫、九州全域が島津によって統一されそうになっている。


そんな中、周防に築城して九州攻めの準備をしている羽柴秀吉が家臣、黒田官兵衛が安土城に織田信長に救援を願う使者とした来た。


それを蘭丸から耳にした俺は、約束もせず押し掛け登城をして信長を止めた。


「無礼を承知で申します」


「常陸、お主は今まで毎回、会う約束をしてから来ていたが元来、常陸を雇うにあたって無礼を許す約束をしていたではないか、そして今は幕府の役人ぞ、登城は無礼ではない、で、なんだ?」


「はい、九州に行ってはなりません。と、言うか羽柴秀吉・黒田官兵衛との合流はよくありません、失敗に終わった明智光秀の謀叛、繋がりがないとは確信が持てない以上、信長様は安土や京に留まるべきです」


「常陸は疑っておるのだな?」


「はい、俺は明智光秀単独犯だとは思っていません。朝廷、足利義昭、毛利輝元、羽柴秀吉、黒田官兵衛、徳川家康を疑っております。足利義昭、毛利輝元は討ち滅ぼし、朝廷は今や京に閉じ込めた状態、なら残すは羽柴秀吉、黒田官兵衛、徳川家康」


足利義昭、毛利輝元は討ち滅ぼし京の都には西に嵐山城、東に銀閣寺城、そして京その物を土塁で囲み大通りには十二門の整備をして朝廷を閉じ込めた。


「だから、その懐に飛び込むなと言うのか?」


「はい、総大将は信忠殿に任せるべきです。信長様と信忠殿は少し離れたほうが良いのです。二人が近くにいては共倒れになるから本能寺の変は成功したのであって、あの時、信忠殿が中国攻めの総大将か、岐阜城にいたならば信長様が討たれるだけで織田宗家の家督を継いでいる信忠殿が生きていれば、羽柴秀吉が好きなようには出来なかったのです」


興奮ぎみに言う俺に少し気圧されたのか短い返事をする信長。


「で、あるか」


「信長様は安土で政治に力を入れて、軍勢を率いるのは信忠殿に任せてはいかがですか?」


「わしも、あの切れ者の光秀が単独であのような謀叛を企てたとは思えぬが、秀吉と官兵衛か、なくはないな」


「信忠殿だけが九州攻めの羽柴軍と合流しても謀叛は起きません。両人を討たなければ無意味だからです」


「あい、わかった、九州攻めの総大将は信忠とする、柴田勝家、前田利家、佐々成政、徳川家康を軍勢に加わらせる」


「お待ちください、二名は近江近くに残しておいてください、近江琵琶湖六城は信長様の逃げ場、城を空にはしたくはなく、と徳川家康も動かさないほうが良いでしょう。北条に対するには滝川一益殿だけでは心許ない」


「常陸、小賢し過ぎるぞ」


「すみません、しかし・・・」


言葉に出せず信長の目をじっと見る俺の額には汗が吹き出している。


目に入って痛いのだが瞬きをせずじっと見る。


「わかった、利家は賤ヶ岳城に徳川家康も残そう」


「はい、賢明なご判断かと、それと姫路城城代の前田利長殿には姫路の守を堅牢にするよう命じてください」


「万が一に備えてか?」


「はい、万が一に御座います」


姫路城は羽柴秀吉が反旗をひるがえしたときに最初の防衛線になるべき城。


そこで何日か軍勢を押さえれば、こちらはこちらで戦の支度が出来る。


逃げる時間稼ぎだって出来るのだから念には念をと考えた。




1585年7月


織田信忠は九州攻めの総大将として大軍を下関城に進めた。


九州攻めの開戦。






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