第93話 入城初朝食
ドォーン
「おはよ~マコ~」
俺は疲れて眠ってしまっていたみたいで甲冑は脱がされ着替えさせられ、爆睡していた。
衝撃で目覚めれば目に入るのは真新しい天井板、畳の真新しい匂いが鼻につく。
明かり取りの真新しい障子は白く輝いていた。
爆睡している俺に乗っかってきたのはお江だった。
「う~重い~」
「ほら、いつまで寝ているのよ、義兄上様、朝御飯の準備ができております。皆が待っておりますから」
義兄上様ではなく、お兄ちゃんと呼ばせたいと思いながら布団からでる。
「着替えるから」
と、二人を部屋から出すと変わりに桜子が入ってくる。
「おはよございます。お召替えの手伝いをいたします」
と、入ってくるが俺は基本的には着物ではないので一人で着替えられるが、これがこの時代の常識、桜子は脱いだ寝巻きを畳み片付ける。
最近、作務衣型の服を作ってもらったので普段着は作務衣。
ただ、刀が腰に差せないので細い帯を結から少し変な作務衣姿。
もちろん、帯刀しないと言う選択もあるが流石に物騒で屋敷の中でも小太刀は必ず帯刀している。
腰に小太刀と言うか脇差しと言うか短い短剣と扇子を差す。
着替えを済ませ真新しい廊下を台所に向かう。
建設から見てきているので流石に迷うことはなく、食事を取るために作られた台所脇の部屋、テーブルと囲炉裏を合体させた長い食事台に椅子が並べられて皆が座って待っていた。
一番上座の席が空いている、当然俺の椅子でそこに座ると、席順が気になった。
すぐ脇の席、左の一番目は空いている。
そこは茶々の席なのは理解できる、で、お市様、お初、お江が座り梅子、桃子が座っている。
右側の一番目には桜子が座っている、ん?良いのか?俺のご飯でも味噌汁でも盛り付ける係りかな?
桜子、力丸、慶次、氏郷、幸村、宗矩が順に座った。
まだ、座れるスペースには余裕のある囲炉裏テーブルには炭に火が入り味噌汁にご飯釜が保温されるかのように弱火になっている、その脇には焼き魚が串に刺さっていた。
朝食の準備万端、俺が望んだ温かいものを温かいうちに、が、実現される。
よしよしと頷くと、
「おはようございます」
と、皆が一斉に頭を下げて挨拶をした。
「おはよう」
と、返す。
梅子が煎茶を運んできて、一口飲んでる間に料理が盛り付けられた。
「いただきます」
と、食べ始める。
「ねぇ~気になったんだけど座り順これで良いの?」
と、聞いてみると皆が不思議そうな顔をする。
ん?俺が変なのか?
「だって、桜子様は義兄上様の側室でしょ?」
って、お江が言った。
あれ?確かに約束はしてあるがまだ、決定事項ではなかったはず。
だいたい、茶々の許しを貰っていない。
「茶々が、桜子は常陸の御手付きだからって言ってたわよ」
と、お市様が言って、俺は口に含んでいた味噌汁を吹き出しそうになった。
「いやいやいやいや、まだ手出してないですから」
「あらやだ、じゃあ常陸は力丸と懇(ねんご)ろ」
ゲホゲホゲホゲホ
「誰ともしてませんから」
義母はなんちゅうことを朝っぱらから口走るかな。
「若いのに枯れているのかしら」
ゲホゲホゲホゲホ
「枯れてないから、性欲より食欲なの、俺は」
と、言うと皆が笑っていた。
普通なら家臣と主家筋がこうやって並んで食事を取ることがない時代なのだが、この囲炉裏テーブルのおかげで身分の隔たりが無くなってるように思えた。
良いじゃん、明るい食事。
昨日の緊張が少しほぐれた気がする。
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