第92話 大津城入城

安土城から見て南西にある大津城まで陸路で約五十キロメートル。


朝出発すればね休憩を入れながらでも、夕方には着く。


途中何度か休憩を入れる。


甲冑を着て歩いている足軽が疲れないように気を付けながら。


通常は甲冑を着た状態では長距離の移動はしないのだが、今回は軍事力を見せつける為の行列、見た目が重要。


そんな馬に乗る俺もお尻が痛い。


特に穴が・・・・・・。


痔になりそう。


和鞍は平成でも流鏑馬に参加するため使ってはいたが長距離となると痛い。


尻当てになる座布団を作って貰おう、などと考えてるうちに日は少しずつ西に傾いた。


午後三時、今だ街作り途中だが大津城下町に到着、総構えの堀の橋を渡り町中に入った。


町に入ると建築作業をしている者、商いをしている者が家屋から出てくる者が俺に頭を下げている。


ハッキリと言う、こっぱ恥ずかしい。


手を振るべきなのか?いや、頭に手をやってペコペコしたいぐらいだが、力丸達を見ると胸を張って凛々しく馬に乗っている。


それを見習うしかない。


三ノ丸の大手門は開かれ、蒲生氏郷が烏帽子を被り大紋の正装で頭を下げて待っていた。


今だに町の者は見ている。


「出迎え御苦労」


と、偉そうに言うのが俺の役目。


そして、町の方に向きを変えた。


「我こそは平氏朝臣常陸守黒坂実琴なるぞ、これより、この地を我が預かる、我が領地、殺さず・盗らず・犯さず、これを厳命する、破ったものは重い罰を与える、しかと心に刻みおけ」


と、茶々監修で練習した口上を馬上から叫んだ。


そして、背中の火打ち石型銃を天に構える。


すると、足軽も方膝を着いて同じように天に向かって構える。


「これは我がこの地を預かる号令ぞ、放て~~~~~」


バーンバーンバーン・・・・・・・バーン・・・・・・


一斉に空砲が鳴り響いた。


成功した。


ハッタリ火縄銃の空砲。


布が被された竹筒に仕込んだ爆竹。


もちろん、本物二百丁も混じらせている。


轟音とともに煙で辺りが真っ白になる。


その合間に、城に馬を走らせ入った。


塀の影になったところで、馬から飛び下り腰を地面におろした。


「はぁ~疲れた」


「あら、あのような事くらいで疲れられては困りますよ」


ん???


「え?なぜここにいるんですか?え?」


女性が俺に柄杓で水を差し出していた。


「お市様なぜここに?」


「船で引っ越してきました」


と、後ろからニタニタと笑ってるお江とお初。


「マコ~かっこ良かったよ~」


「驚いた?ねぇ~驚いた?」


「えっと、本丸の隣の御殿に住むのは聞いてたけど今日から?」


一緒に引っ越してって聞いていなかったんだけど、


「姉上様だけがあとからなのよ」


と、お初が言う。


だから、お江が毎日うちの料理が食えると言っていたのか。


って料理を作る桜子達はまだ安土城なんだが?と、思うと大好きな香りが漂ってきた。


「え?唐揚げ?」


「桜子様達も同船させましたから」


と、お初が言う。


ん?うちの下女に『様』って疑問が出たが、唐揚げの香りでお腹がグゥ~グゥ~鳴ったので台所に向かうと、唐揚げと豚汁と握り飯が台所で大量に作られていた。


足軽達にも振る舞う分も作っているのだと言う。


揚げたてをつまみ食いをして、台所脇の板間で横になってしまった。


「はぁ~本当に疲れた」

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