第91話 大津城入城行列進軍
真夏に軍勢パレードの準備期間として、稲刈りが終わった頃、旅には寒くもなく暑くもないちょうど良い秋の始め、まるで運動会日和の日、入城の兵を安土近くに集めた。
その数、二千五百の足軽。
統一された黒い甲冑に身を包み、背中には俺が定めた黒坂家の旗、深緑色の布地に揚羽蝶と抱き沢瀉の家紋が入っているものを差していた。
手には深緑色の布地に包まれた火縄銃を持っている。
もちろん信長には報告済みで監視役に黄母衣衆筆頭、森坊丸が300の手勢を率いて来ていた。
「上様からの命により、大津城入城までお付き合いいたします」
今日は茶々達はいない。
茶々は俺が入城後、正式な花嫁行列を作り入城する手はずらしい。
朝八時、茶々達に見送られながら出立する。
俺は以前、織田信長から拝領した南蛮甲冑を少し改造した軽めの甲冑を着て金蘭の布地で背中に龍神が描かれた陣羽織を着用して、太刀を腰にぶら下げ黄金に輝く馬鎧を着けた馬に股がった。
軍団の先頭に、慶次と幸村が真っ赤な甲冑に身を包み手には槍を持ち馬に股がり二人が並んで進む。
その後ろには、千人の火縄銃を持っている足軽が続き、次に森坊丸が黄色に永楽銭の旗をなびかせ進む。
さらにその後が俺、前には力丸が、やはり真っ赤な甲冑に身を包み、後ろにには宗矩が真っ赤な甲冑で並ぶ。
うちは家老職は示し合わせたのか形、様式は違うが真っ赤な甲冑。
俺の横には、他の足軽とは違う南蛮甲冑を着けた足軽が左右に五人ずつ並ぶ。
この左右合わせた10人は力丸の直属の家臣らしい。
さらに、その右後ろに『富国強国』と『鹿島大明神』と、紺色の布地に金で書かれた3メートルの旗印を掲げ、左後ろには銀色に輝く龍を象った馬印が並んだ。
いつの間にか、旗印と馬印が決まっていたのは驚き、準備するべき物だったんだね。
そして、後ろに千五百の足軽が火縄銃を持って並んだ。
結構な行列を道すがら、田畑にいる農民と思われる人が呆然と見ていた。
足軽数二千五百。
俺の給金二十万石。
実はかなり余裕らしく、蔵にも貯えがあったため、足軽に貸し与える甲冑は新品で購入。
黒い鋼の胴には金で描かれた抱き沢瀉の家紋が入っている。
同じ甲冑に揃えられた足軽だけでも立派なのだが手には、全員が火縄銃を持っている。
俺も革紐を付けた銃を背負っている。
俺の火縄銃は火打ち石型の最新式、以前、俺の提案で作られた火打ち石型銃、不発失敗を繰り返したが改良に改良を重ねて成功して少しずつ生産がされ始めた。
足軽達は火縄銃の為、片方の手には縄で作られた種火をくるくると回している。
火縄銃完全武装に見える二千五百。
一説には、三段撃ちで有名な長篠の合戦に投入された織田家鉄砲隊が三千と言われている。
それに、匹敵するかの火縄銃部隊に見ている人達がざわめかないはずがなかった。
「あんれは、まことに火縄銃かい?」
「あんな数、揃えられるわけねかっぺよ」
「んだんだ、布の中身は何だかわかんねっぺ」
などと、言っているのが耳に入った。
「なんだい、知らないのかい?」
と、旅商人らしき者が大きな声でわざとらしく言う。
「なにがだっぺ?」
「あの、黒坂様って織田信長公側近で火縄銃の改良を成功させた人物、だから毛利もあっという間にやられたってわけよ、あの御方なら数も揃えられるってもんよ」
「ほえ~あんな若そうな人がかい?」
「んだ、間違いね~よ、俺は今井宗久様の出入り商人だから間違いない情報だ、だから、信長公お気に入りで養女が嫁ぐとか嫁いだとかいわれてるんだ」
「ほえ~おそろしあ、おそろしあ、あの天魔王を自ら名乗る殿様の婿かえ?」
「ヤバイな、逆らわねぇほうが身のためだな」
と、言っている。
実は大声で言った商人は今井宗久に頼んでおいた者。
所謂、ヤラセだ、それなりの身なりの商人に噂を流させれば信憑性を増させることが出来ると思い思い頼んだが成功したみたいだった。
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