第62話 黒坂家家臣法度?ほうれんそう?
桟橋に降りると、石垣が湖面から出ており石垣作りの水城であるのがわかった。
俺の城かぁ~と、立ち止まって見上げると4重5階建ての小振りな望楼型の天守が建っていた。
「お初に御目にかかります。築城奉行、並びに与力になるよう命じられた蒲生氏郷に御座います」
と、桟橋の木の板の上に方膝をつき頭を下げている武将がいた。
「黒坂常陸守真琴です。こちらこそ、よろしくお願いします」
と、挨拶をすると顔を上げた。
「案内をお願いいたします」
と、後ろにいた茶々が言うと立ち上り少し頭を下げた状態で、
「こちらへどうぞ」
と、歩き出した。
「その体勢疲れませんか?普通に頭あげてください」
と、気になって言ってしまった。
うちの家臣では一番礼儀正しいのか?
ちなみにうちの家臣の歌舞伎者、問題児の慶次は今日は安土屋敷に留守番だ。
しかも、松様の監視付き。
「そんな、殺生な~」
と、嘆いていたが俺の家臣、若すぎるんだよ。
慶次の次に年長で最古参になる力丸は置いていくにはいかない。
俺の家臣の中で唯一、俺の秘密を知っているからこそ。
氏郷は少しずつ頭を上げて普通の姿勢になり歩いていた。
「天守は、完成しておりますので最上階に上って見渡しましょう」
と、天守に案内される。
中は安土城とは違い飾りっ毛がない質実剛健の作りだった。
急な階段を上る。
なんで、城ってこんなに急階段かな?
本丸天守に敵が来た段階で完全に敗けだもん、天守に軍事的な意味ってあまりなくない?
見晴台の意味と、権威の象徴的意味ならわかるのだけど。
安土城は住むことを前提だから緩やかだったよ。
「宗矩、今から言うこと紙に書いてもらえるかな?」
「はっ、かしこまりました」
と、懐から持ち歩き型の筆を取り出し、懐紙を出した。
「常陸様いかがいたしました?」
と、力丸が聞いてきた。
「いや、信長様に報告書として渡して」
「え?」
「これから、希望や改築してほしいとことか言うからさ、そう言うのちゃんと信長様に報告するべきだと思うんだよね」
「しかし、この城は私が奉行として任されたうえで、さらには常陸様が城主に任命されてる城、自由にしてよろしいはず」
と、少し怪訝な顔をして蒲生氏郷が言ってきた。
「俺ってさ、家臣ではないんだよ。まだね、茶々との婚儀が決まっていてもさ、微妙な立ち位置なんだよ。それに、ここって安土城から京の都への通り道、かなり要所じゃん、信長様も通るし場合によっては寄ったり泊まったりするでしょ、だったら、ほとんど信長様の物と一緒だもん、ちゃんと報告しておくべきだよ」
と、言うと話を聞いていた茶々が笑っていた。
「なるほどね、伯父上様がお気に入りにするわけだわ」
と、クスクスと一人で笑っていた。
お江とお初は幸村がお守り役になり先に天守を上って走り回る足音がバタバタとしていた。
「わかりました」
と、蒲生氏郷は納得したみたいだった。
「ほうれんそう、って言うんだけど『報告・連絡・相談』を大事にしないと思わぬ誤解を買うから、あ!うちの法度にも入れるか、『報告・連絡・相談』何だかんだ家臣増えてるし」
「黒坂家家臣法度ですね、わかりました」
少しずつ、家臣に守ってもらうこととか考えないと駄目な立場になって来てるんだから少しは考えないとね。
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