第63話 大津城築城視察・縄張り

 天守に上ると、遠くまで見渡せた。


一番高い所がこの天守な平たい城。


天守の左右には御殿が建築中だった。


「あれって、桧だかの皮を屋根に使うの?」


「はい、一般的な檜皮葺屋根にする予定ですが、瓦にいたしますか?」


と、氏郷が言った。


「いや、銅板屋根にして」


「銅板で御座いますか?かなり金がかかりますが」


「力丸、うちの倉の金出して、結構あったよね」


「はい、入らないので今井宗久にも預けてあります」


「足りなかったら、あれ、あの茶碗売って良いよ、俺、茶器興味ないし信長様に好きにして良いって言われてるし、城と同価値と思う人もいるんでしょ?」


「名物・曜変天目茶碗は最終段階までは売らずに倉の金を先に出しましょう」


と、力丸は売るのを渋った。


「あと、あの建物とか、まだ柱が見えているのは柱と柱の間にバッテンに柱追加して」


と、左右の手を指をバッテンにして見せた。


「え?」


と、氏郷は気になったみたいだ。


「耐震性を高くするのにだから、出来上がってしまってるのは仕方がないけど」


「たいしん性?」


と、聞き返す氏郷。


「地震に強くするってこと」


「わかりました、すぐに指示します。天守も壁を崩して追加します」


と、氏郷が言うと控えていた家臣が走っていった。


急な構造変更ごめんなさい。


「ここって少し変わった作りだね、本丸は琵琶湖に付き出してるのに、輪郭式みたいに別に本丸みたいなのあるみたいだけど」


と、中心に堀で囲まれた場所を指差した。


「はい、あそこは奥の二ノ丸といたしますが」


「だったら、あそこに信長様用に御成り御殿を建てて」


「はい、かしこまりました」


絵図面と実際の景色を見ながら指示を出す。


二ノ丸、三ノ丸、特に意見はない。って言うか縄張りは良い。


流石、蒲生氏郷と言える作りだったが、どうも防御力が弱い。


「町を囲むように堀作れないかな?土塁でも良いけど、町全体を囲んで総構えにしたいんだけど」


「総構え?」


「知らない?北条の小田原城みたいなの」


「あ~なるほど」


「あそこまで巨大なのは求めないけど、町を出来れば水堀で囲えば防御力に水運力もあって良いと思うんだけど」


「しかし、人足が・・・」


「無理かな~」


と、俺が腕を組むと、後ろにいた茶々が


「伯父上様がどうにかしてくれますから、常陸様は希望を言ってみているだけでよろしいかと思いますよ」


と、言った。


なんか、それって怖い気がする。


あまり、わがままは言わないでおこう、あ、でも。


「あ!豚小屋と、鶏小屋をお願い、三ノ丸で飼うから」


「豚?鶏?え?え?え?」


氏郷は驚いてる。


「あ~、俺が食べるからよろしくね」


城内では、普通飼わないのか?飼っていたら籠城にも有利な気がするが。


「あと、庭木には果実がなる木と五加木(うこぎ)を植えて、畳には芋づるを下地にして」


「籠城戦を考えてですね、わかりました」


籠城って基本的に負けに近いのだけど総構えが現実的に可能なら、城内で食べ物を獲られるようになるなら勝ち目はなくはない。


だからこそ、果樹園とか城内にあれば良いのでは?と、思う。


「絵図面も信長様に写しを出してね、基本的な縄張りはとても良いと思うよ、流石、蒲生氏郷」


「え?」


と、驚いてる氏郷。


やってしまったか?築城の名手って言われるのずっとあとのことだし。


「常陸様、お台所を」


と、茶々が誤魔化してくれた。


俺の秘密を知っているの力丸だけじゃないんだよね。


茶々も半信半疑だけど知っているわけだし。


助かった。




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