第56話 前田利家は親戚?
茶々との婚約の内定は、城内城下でも話題になっていた。
そうなると、俺に近づこうとする来客が増える。
不本意だがそれが今一番、織田信長に可愛がられていると噂される俺なのだからしかたがない。
今は中国毛利攻めと四国長宗我部にも出兵しているので、安土城の大名屋敷には主は少なく、その妻子がいる。
その妻子が進物を持って挨拶に来る。
俺ははっきり言ってまだ子供、高校3年生の年齢だ。
そんな俺が、お偉いさんの挨拶に対応などかたっくるしくて仕方がない。
この時代、屋敷の主は不在の時、その妻は名代となる。
屋敷に残った家臣に指示を出したりするぐらい意外に身分が高い。
平成の男女共同参画基本計画・男女雇用機会均等法などとは比べ物にならないくらい、女性の地位は高い。
一日に数人が段々と増えて数十人の行列ができはじめた。
うちにはそれに対応出切る人材はいない。
森力丸も柳生宗則は若すぎて、一番年長の前田慶次は逃げていった。
慶次~頼むよ~。
慶次が逃げたなら頼るは隣に住む前田利家の妻、松様。
宗則に松様に助けを呼びに言ってもらうと、快く来てくれた。
「このくらいの来客で値をあげていたら、茶々様の夫は勤まりませんよ」
「って、言われても、これはどうさばいていいやら、年長の慶次は逃げていったし」
「慶次が逃げた?女郎屋にでも行きましたか?まったく、親戚になるのですから手伝ってあげます」
そう松様は言ってくれた。
ん?親戚?ん?
「えっと、親戚とは?」
と、首をかしげながら聞くと、
「あれ?知りませんでしたか?我が家の嫡男、利長の嫁は上様の姫、永と申します」
「お永様?」
「様、なんて付けなくてもまだ10歳にもならない姫ですよ。その永と茶々は義姉妹になるのですから、常陸様は利長とは義兄弟になります。よろしくしてあげてくださいね」
織田信長の娘の永と義姉妹になる、その夫となれば妻の義理兄は俺の義理兄になるけど、永は茶々より年下だから妹?ん?永の下に義理に養女になるのだから姉?
とにかく義理の姉妹でその夫が前田利家の息子の利長なら、遠い遠い縁でも縁者?
ギリギリ兄?義々兄?
平成でも田舎には残る、親戚の親戚はみんな親戚って考え、そんなことばかり習慣で残るから顔も大して知らないのに、新聞の葬式欄に名前が載ると葬式が~って、祖父母は騒いでたのを思い出すよ。
その元祖?戦国時代特有の縁続き、来たよ、これ。
「義理の兄の母上様が松様になるわけですか?」
「今、深々と意識だけどこかに飛ばして考え込んでいましたね?話の途中で禅でもしてましたか?とにかく、深く考えずに縁者になりますから、よろしくしてお願いいたします。さて、お市様にも頼まれてますから、挨拶衆は私がさばいてあげます」
と、行って表玄関に松様は座込み、挨拶に来た者の名前を帳面に記帳していた。
どうやら俺は会わなくても良いらしくなった。
うん、松様にはカツカレーを作って御馳走してあげよう。
梅子に今井宗久のもとに豚を買いに走らせると、大きな黒豚に慶次が乗って帰ってきた。
玄関に松様が鎮座しているとも知らずに。
慶次は、松様にケツ箒の刑になった。
40過ぎのおっさん何してるのよ・・・。
なんで、松様には頭があがらないのだろう?不思議だ。
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