第54話 織田信長とガレオン船
「じゃ~話を進めますね」
と、いつも通りに俺の提案事の話を始めた。
ズボンのポケットから耐衝撃型スマートフォンを取り出す。
織田信長は前に見ているので気にもしていないが、茶々は気になる様子で、離れているところからじわりじわりと近づいてきた。
「えっと、これ、見てもらっていいですか?」
と、画面に宮城県石巻市に復元され木造で作られたサン・フアン・バウティスタ号を出して見せた。
「ん?南蛮の船か?これがどうした?」
「いや、この船って、俺がいた時代に復元事業で木造で作られた船なんですが、そのもとになる船って伊達政宗が作るんですよ、今から約20年後の日本で」
「それは、まことか?伊達政宗とは先日、登城した輝宗の嫡男だったな?」
「はい、奥州で63万石の領主になったのちに、海外貿易をするために使者を乗せるのに建造するんですよ。日本初国産ガレオン船を」
「そうか、日本でも作れるのか?」
「うろ覚えなんですがスペイン?イスパニアの船長だか冒険家が監修して作るんですが、信長様なら南蛮人と交流もあるから作れませんか?」
耐衝撃型スマートフォンの画面をまじまじと睨む織田信長。
「そうか、奉行に南蛮人を雇って日本の船大工に作らせる、できなくはないことだな」
「はい、安宅船では外海を航行するのには不向き、そこでこの南蛮船型を作るんですよ、これに石山本願寺戦に使ったように鉄板を貼って大砲を積めば最強間違いなしです」
最強と言う言葉に反応する織田信長。
「最強か、我が名に相応しい響きだの」
最恐の気もしないでもないが。
「よし、水軍奉行・九鬼喜隆(くきよしたか)にさっそく指示を出そう、南蛮人のほうがいささか困るのだが」
「協力が得られないと?」
「奴らは頭が良い、自分たちの利益にならないどころか、害を与えそうな軍船の建造などなかなか協力はしない」
「なら、スペイン?イスパニアとポルトガルとイギリスとの争いを利用しましょう」
「イギリス?」
「あ、すみません、この時代の呼び名、国の名前知らなくて、地球儀ありますか?」
と、言うと、襖の外で走っていく足音が聞こえた。
蘭丸なのだろう、5分もしないうちに届けられた。
不完全ながら国の形はわかる地図、地球儀を指さし、
「ここの国が台頭します」
と、イギリスを指さした。
「同じキリストを神として崇めますが考えの違いから宗教対立が発生します、てか、今争っているはずです、そこを利用します、最強、無敵艦隊と言われたスペイン艦隊と、この国の艦隊は大規模な海戦が始まります、結果的にはスペイン艦隊が力を失っていきイギリスが台頭します。小さな小競り合いは始まっているはずです。そこで日本も艦隊を編成して助力してやる、と、どちらかに持ちかけてはいかがでしょうか?」
「またしても小癪な手を考えるの、よし、後のことはわしに任せよ、常陸は今の事、ほかで話すなよ」
「はい、わかっております。で、ですね、水軍の本拠地として石山本願寺跡に海城を築くことを提案します。この地は信長様も築城を計画されていると思いますが、のちの世では豊臣秀吉が「大阪城」と言う巨大な城を築いております。のちの世にも続く西日本最大級の都市になりますが俺的にはそれは勧めたくないのです」
「なぜじゃ?あのような好立地のところに街が繁栄してはいけないのか?」
「人の住む、繁栄する町は俺的には海から少し離れているのをお勧めします。津波の被害を少なくするために」
俺は311を経験している。
茨城でも多大な津波の被害を受けている。
さらに、アウターライズ地震による津波の予想や南海トラフ地震が近々起きると言われているのに、日本の大都市は太平洋沿岸に集中している。
だからこそ、今から主要都市は海からできるだけ離したい。
そう考えていた。
「津波?」
「はい、地震と連動して起きる津波は恐ろしく街を壊滅させます。ですので、少なくとも主要都市は陸側がお勧めです」
「では、その石山本願寺跡に作る海城はどうする?」
「造船所を兼ねて建設したうえで作り、高台になる石山本願寺跡を避難場所として整備するのが理想、商業で繁栄する街としては陸側に作ったほうが、よろしいかと」
「あの地をわしの次の居城をと考えていたのだかな、天下を治めるのに良いと睨んでいたのだが」
「首都としてなら琵琶湖周辺を一周利用したほうが良いかと思いますが」
「わかった、それは後々、考えよう。誰もわざわざ災害が来るとわかっていながら整備する馬鹿もおらんからな」
「そういえば、豊臣秀吉が関白になった直後、近江周辺で大地震が起きています。長浜城が壊滅的被害にあったのをドラマで見ています」
「正確な日付はわからぬのか?」
「すみません、流石にそこまでは、ただ日本は地震と津波と火山はワンセットの国、これから地震、津波、火山の噴火は多い時代になります、富士山も噴火しますし」
「ん、わかった、考えよう」
そう言って織田信長は部屋を出て言った。
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