第31話 柳生石舟斎宗厳と柳生新左衛門宗矩
前田慶次利益が事実上の家臣となって一月ほどすると、俺に会いたいと言う者が屋敷を訪ねてきた。
もちろん、織田信長の命だそうだ。
大広間に通された二人は胡座で頭を下げていた。
これ、恐縮しちゃうからどうにかならないのかな?
躊躇しながら上座に座る。
「黒坂常陸介真琴と申します。どうぞどうぞ頭を上げて楽にいたしてください」
「お初にお目にかかります。柳生石舟斎宗厳と申します。この者はわが子、新左衛門宗矩に御座います。この度、わが子を近習に取り立ててくださるとのことで元服させ連れて参りました」
と、白髪混じりの初老の柳生石舟斎宗厳は言う。
新左衛門宗矩を見るとまだ若そうな青年?少年がひれ伏していた。
ようやくチン毛が生えてきたか?くらいの12、3才くらいの少年。
「どうか楽にいたしてください、頭を上げて顔を見せて下さい」
と、俺が言うと新左衛門宗矩も顔を上げて、
「新左衛門宗矩に御座います。よろしくお引き回しのほどを」
と、挨拶する。
まだ、 あどけなさの残る顔立ちには似つかわしくない鋭い眼光。
だが、興味は少年より石舟斎にある。
「石舟斎殿に一手ご教授願いたいのですが、よろしいでしょうか?」
と、頼んでみた。
これでも、それなりの剣客のつもりなので好奇心があった。
「私ではなく、宗矩にお相手させましょう。なに、近習に使えさせるだけの腕は仕込んであります」
と、言うので革の巻かれた竹刀を手に取り庭に出る。
「宗矩、これを」
と、竹刀と念のための額、頭を守る鉢金を渡した。
もちろん、俺も鉢金を着用する。
自惚れてはいない。
しかし、宗矩は鉢金をしたが竹刀は縁側に置いた。
「柳生の奥義でお相手いたします」
なるほど、噂に聞く技か。
慶次が審判役に名乗り出たため任せた。
「では、尋常に、はじめ!」
俺は正眼に構えた。
宗矩は右手を目の高さくらいに、左手を臍ぐらいの高さで何も持たず構える。
まだ、少年だと言うのに鋭い目付き。
その眼光に一歩踏み出すのを躊躇させる。
一手目がラストになるのが想像出来る。
ジリジリと詰め寄った所で、左手だけを使った突きを出した。
そう、大好きな新撰組の斎藤一が得意とした左肩手一本突き。
俺の正規の得意とする、しっかりと学んだ物、鹿島神道流の太刀筋ではない技。
これは力量を見るためだから初手から本気、得意技は違うと感じたからだ。
「えいやー」
仕留めた!
と、思った瞬間、宗矩は下にしゃがみこみ突きを避け、しゃがみこんだ反動を利用して跳び跳ねる。
右手で俺の竹刀を持つ手を弾く。
左手を腹にぶつけてきた。
「ぐふぅ~」
まともに入ってしまった。
痛い。
「それまで」
と、慶次に止められた。
数分しゃがみこんだ俺は力丸に起こされ、縁側に腰を下ろした。
宗矩は、すぐ近くの玉砂利の庭に方膝を着いて腰を下ろしていた。
「これが柳生の無刀取りですか?強い」
「常陸様、謙遜ですか?今の太刀筋はお遊びで御座いますね」
石舟斎の目は誤魔化せないようだった。
「常陸様が初手から本気の一撃だったら拙者も受けられるかどうか怪しいところにございましょう」
ん?俺そんなに強いのかな?
「宗矩をどうか鍛えてやってください」
と、頭を下げている石舟斎。
「お預かり致します」
と、俺は頭を下げた。
宗矩は力丸と一緒に近習になった。
あと、一人、家臣にしたい名前を出してるんだが来るのか?
あれ?伊達政宗とかも来るのか?
来たら本当に戦国末期オールスター戦になりそう。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます