第4話 安土城
俺は、気を失っていたらしい。
布団の上で寝ている。
フカフカの高級布団。
明らかに高級でありそうなシルクの白い寝巻き、パンツも・・・?
褌?
着替えさせられ寝ている。
畳の部屋に障子から光が指している。
まず目に写ったのは天井の豪華な装飾絵図、花鳥風月と言うのだろうか?花が色鮮やかに描かれている。
横を見れば、襖も金箔の背景に牡丹と思われる絵が書いてあった。
ん?高級旅館?お寺?
何かで俺は保護されたか?
ん~何はともあれ夢落ちか。
衣紋掛けには俺の学生服。
少しヤンチャな裏生地が紫に龍の刺繍入り。
布団を剥いで体を起こすと、夢に出てきた大手アイドル事務職所属に思える美男子が小侍のかっこをして、正座しながら首をコックラコックラと寝ている様子だった。
「はい?え?なに?」
と、思わず声が出てしまった。
「起きましたか、茨城の暴れ馬殿」
それは名前ではないのだが・・・・・・
口をパクパクして言葉が出せないでいる俺に困惑したのか、
「大丈夫です、大丈夫ですから、ここは安土城の本丸御殿でございますから」
「は?はい?安土城?はい??え?なに言ってんの?」
「困惑するのはごもっとも、あの朝、明智光秀を討ち取ったあと、京の都から大急ぎでこちらに戻りましたしだいで、失礼とは思いましたが、明智光秀を討ち取ったあなたをそのままにしておくには礼儀に失するので運ばせて頂きました、御館様が自ら馬にくくりつけて運ばれたのですよ、それから三日間、茨城の暴れ馬殿は寝ておられました。失礼とは思いましたがお着替えと体拭きをさせていただきました」
「はい?御館様?安土城?明智光秀?」
歴史の授業か大河ドラマでしか聞かないフレーズに耳を疑った。
「混乱しておりますか?大丈夫です、御館様、織田信長様の命により、茨城の暴れ馬殿は御客人、いえ、命の恩人として最大限もてなすよう言いつかっております。どうか安心してお休みください」
バン!
襖が突然開いた。
驚くからやめてくれ。
「目が覚めたか」
髭の生やしたダンディーなオジさんがこちらを睨み付ける。
役所さんではないのか?サイン欲しかったなぁ~。
鋭い眼光に身震いがした。
「御館様、先程起きられた所にございます」
俺は布団の上から動けない。
美男子は深々と畳に頭を押し付けるほどに一礼してから言葉を出した。
「飯を食ったら天主に連れて参れ」
「はっ、かしこまりました」
ダンディーなオジさんは言いたいことだけを言って襖を開けたまま出ていった。
俺はその先に見えた城に驚いた。
「安土城!」
庭に飛び出した。
裸足で。
え?なにこれ、雑誌やCGでしか見たことのない、天主!
平成現存天主とは一線を隠す望楼型天主!
六角形?え?金閣寺が最上階?
「スゲー」
驚愕の言葉しか出せなかった。
語彙力なくてごめんなさい。
振り替えり今飛び出た側を見ると、そこは平屋の御殿。
これって、もしかして御幸の間?
え?
「本丸が一番安全ですので御成の間を使用してます、御館様の最大限の礼儀だそうです」
絶対に平成でないことを確認した。
見える景色は朽ち果て消え去った城ではない、完全な安土城。
なぜにこうなったんだ?
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます