文化的生活への前進
寮の友人であるY.M氏から急にラインがきた。アルバイトの紹介だ。研究の手傳ひを一時間程度するだけで二千圓貰へると云ふので、其れをやることにした。
最近何かと騒がれてゐるAI(人工知能)に人間の聲を認識させる爲に、膨大な數の人(東國出身者から西國出身者まで)の聲を吹き込んでデータを取りたいさうだ。私は指定された二百個の文章を讀みあげ、スマートフォンに聲を吹き込んで二千圓を手に入れた。
其の後、Y.M氏としやぶしやぶ食べ放題にゆき、鱈腹食べた後に其の儘二人で買ひものにゆく。彼は自分の研究室に居場所が無いといふ。周圍に馴染めないさうだ。無理もない。彼は變人である。根性がひん曲がつてゐるし、態度が惡い。誰が好んで仲良くしやうとなどするものか。しかし私自身は變人は面白いから結構好きだ。寛容な人間であるからか、自分に嫌なことをしてこなければ其れで良いと思へるのだ。
タバコの匂ひで充滿した自宅の環境改善の爲に良い香りの出る蠟燭、アロマキャンドルと云ふらしいが、其れを買つた。其の後本屋へゆき、竹久夢二の畫集と梶井基次郎の檸檬といふ小説を買つた。亦、壞れて仕舞つた喫煙具を新調し、歸りに珈琲を飲んだ。
私が長い間したかつたことはこれだ。自分の文化的教養を高め、實踐する爲に本を買ひたかつた。環境を整へることも必要だ。私の腦といふバケツの中を文化的教養で滿たしたいのだ。未だ程遠いが、時間と經濟狀況が許す限りは死ぬる迄續けたい活動だ。
歸宅後、ゆつくりと本を讀み始める。かうして何にも追はれずにくつろぐ時間は私にとつて至福である。こんな時間がいつ迄も續けば良いのだが。
酔ひどれ日記 大川澂雄 @sumio-okawa
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