發表會と其の後

 卒業設計の發表會の日になつた。寢坊した瞬間に留年が決するのでヒヤヒヤしたが、何とか間に合つた。スーツを着て學校へゆく。私はスーツがよく似合ふ。

 發表の順番が發表された。四十人中丗三番であつた。早めに發表して樂になりたいが、さうもゆかない順番だ。

 同期の發表を聞ひて晝になつた。友人のS.K氏は同期だが留年してゐるので發表とは關係が無いものの、發表を聞きに來てゐた。一緒に晝飯を食ひにゆくことになつた。

「俺達は貴族だから、學校の食堂やコンビニ辨當などは身の丈に合はないわ。レストランで食事しやう」

と云ふので、

「如何にも。私は桓武平氏國香流。君は清和源氏のナントカ流。いずれも武家であり且つ朝廷の中樞で帝に仕へた名門の家柄。卑しき民と同じ食事は出來かねる」

と調子を合はせておいて、高級豆腐料理屋で湯葉を食べた。美味であつた。

 其の後發表をした。それなりの出來であつた。私は大學卒業に一歩前進した。

 しかし、終はればよいといふものではなかつた。私が期待した成果は擧げられなかつた。今迄の設計課題で手を抜ひてきた所爲だ。卒業設計は此れ迄の積み重ねだつたのか、直前に頑張つたところで無駄であつた。評價は教授たちがするが、教授達には今迄の生徒に關するイメージが強く殘つてゐるやうだ。始めから成績は決まつてゐたのである。全ては徒勞であつた。

 夜に研究室で打ち上げがあつたが、酒も美味くはなかつた。


 暫く休みになるので、すべきことを考へて成果としたい。大嫌いな建築よ、さらば。

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