眠れない夜に
今日は特に忙しい。やらなければならないことが澤山だ。明日提出の卒業設計展示會用圖面が二枚。此れを描かなければならない。
構造研究室の聯中と辨當を買つて食つた。遅い時間のスーパーでは辨當や惣菜が割引になつてゐる。其れを狙ふのだ。何とも吝嗇的な思考であるが、實際に貧困だから仕方ない。コロッケとモツ煮を食べた。
其の後、聯中とunoをやつた。三囘くらいやつたが全部負けた。信じられないが、私はunoが下手らしい。
遊んでばかりゐても駄目なので圖面を描ひて印刷する。幸ひにも私の後に何人か順番待ちをしてゐる。まう少し遅ければ待たされるところである。
これで歸れると思ひきや、何と明日の朝八時半からゼミがあるさうだ。卒業設計の發表の練習をするらしい。嗚呼、氣が滅入つてきた。パワーポイントを作らなければならないではないか。
構はず歸宅した。まずレポートを書き始める。私は愚かなことに、未だに授業を取つてゐる。單位が足りないからだ。其處で課されたレポートだ。億劫の極みである。それなりに書ひて、
「雑なレポートです。卒業設計で忙しいことは云ひ譯にはなりませんが、だうか御許し下さい。今の私の精一杯です」
と書ひておいた。
パワーポイントを作り終へた時には朝になつてゐた。
疲れた。
ここでふと思ふ。私はだうしてこんなことをしてゐるのだらうかと。
好きで入つた建築學科であるが、入つてから其の過ちに氣附ひても既に遅過ぎた。私は建築が大嫌いになつた。しかし辭めるのは親不孝なので、卒業後に建築と關係の無い職に就かうと早々に決めた。
學校の授業や課題は學習の爲の價値が無くなつた。卒業の爲に必要な單位を獲得する爲だけに必要な徒勞となつた。意欲は減退した。
そんな人間が、卒業設計に際して數ヶ月頑張つたところで挽囘は出來ない。それなのに、(必要とはいへ)だうしてかうも徹夜續きで作業をするのだらう。無駄だ。クソの如き圖面と模型を晒され、發表會では大勢の前で恥をかく。
ふと思ひ出し、昔作つた唄を唄はう。
いつも見てゐた御前の笑顔
あれは良いものだ しみじみ思ひます
夜になつても忘れられない
夜中の三時だな まう眠れない…
此の曲を作つた頃は希望に滿ちてゐたな。さう思ふと泪が出てきそうだから、唄ふのをやめる。
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