承
「それで、早速だけど、パーティーメンバーを紹介するわね」
ああ、クエストを受けた後、この、洞窟だか遺跡だかな感じのダンジョンの入り口で合流し、以後、黙って付いてきたこの二人の事を、やっと紹介してくれるんだ。全然早速じゃない。正直、どう接していいか分からなかったし、息が詰まりそうだった。
「まずは、中堅ちゃん」
歩きながら、紹介をされる。見た目は……二十代から三十代の、中堅といった感じの女性。ちなみに、あの男性の後を引き継いでくれた〝ベテランさん〟は、この人よりももう少し、歳、いや、キャリアがある感じの女性だ。
「どうも、中堅です。ベテラン先輩には、日頃お世話になっているので、アタシ、このクエストに一緒に参加できて嬉しいです。頑張りましょう」
なるほど、きっといくつものクエストをこなしてきたのだろう。ベテランさん程では無いが、余裕がある。また、クエストを楽しむと共に、更に成長しようという意思も感じられた。
「で、新人ちゃん」
「し、新人です! 本日は、よろしくおねがいします!」
この子は……若い。これ以上、何度も年齢の事を言うのはあれなので、とりあえず、若い、とだけ表現しておこうと思った。そんな女の子だ。
「わ、わたし、ベテラン先輩に憧れて同じギルドに入ったんですけど、今まで、ベテラン先輩や中堅先輩には優しく色々と教えてもらえて、それで、今回お二人と初めて同じクエストに参加出来て……あの、とても嬉しいです!」
一応説明し忘れていたが、まず、このクエストに参加するに当たって、いくつかの手続きがあった。ボクが決めたクエストをベテランさんが受注し、それに続いて、同じギルド(便宜上、いくつかに分かれている団体の事)に所属している、中堅さん、新人さん他、何人かが同クエストを受注した後、審査やら何やらがあって、今、このパーティーとなっている。
「ええ、私も嬉しいわ。初々しい子との共闘は楽しいし、私も色々と大切な事を思い出したり出来て、今まで気付けなかった新しい発見や成長があるのよ」
新人さんの頭を撫でながらベテランさんが言う。
「あんまり緊張するんじゃないぞー?」
そして、中堅さんも同じく、新人さんの頭を撫でる。ベテランさんへ接する時の様な畏まった風ではなく、こちらも〝良い先輩〟といった感じのラフな接し方だった。
「さて、そろそろ、敵が出て来る頃よ。気を引き締めていきましょう!」
「はい!」「は、はい!」
ベテランさんの鼓舞の言葉で、パーティーは一丸となる。それにしても、敵って一体……
「あ、それで、敵って、」
と、ボクがささやかな疑問を口にしようとした瞬間、目の前に大きな影が現れた。
え、何これ、耳? 耳なの? いや、デカイけど。人間の身長大程の大きさがあるけど。ああ、敵ってこれだわ。絶対これだわ。倒さなきゃいけないフォルムしてるもの、間違いないよね。っていうか、ヤバくない?!
「来たわよ! まずは私がいくわ!」
言って、ベテランさんは、背中に背負っていた巨大な剣を鞘から引き抜き、振り上げられたソレをそのまま〝耳〟へと落とす。
――ギャァァァァァ!
攻撃を受けた〝耳〟は、どこから発声しているのかは不明だが、叫び声を上げて消えた。
「流石先輩! 一撃ですね!」
「す、すごいです!」
中堅さん、新人さんの二人も、ベテランさんに続いて、各々の剣を抜く。それに呼応してか、〝耳〟も更に数体現れた。
『声は剣。コイツを使って敵を撃つ』、そう誰かが言っていたが、成程、それが、この戦闘か。三人は、次々と〝耳〟を倒して行き、しばらくの後、一旦、戦いは収まった。
「ふう。そう、これが私たちの仕事よ。敵、通称『カスタマー』を倒すの。どう? 理解した?」
なんとなく理解はしてきた。倒すって表現はアレだけど、きっと〝満足させる〟とか、そういう感じなんだろう。
「よかったよ新人ちゃん。しっかり戦えてる!」
「ありがとうございます、中堅先輩!」
中堅さんが、新人さんの頭をまた撫でている。
「そうね、よくやったわね」
「べ、ベテラン先輩……!」
新人さんが、二人に褒められて嬉しそうにしていた。なんだか、とても良いな、と思った。
「さ、次の階層へ進むわよ」
「「はい!」」
次の階層、そう、このダンジョンは、クエストを受注した段階で聞いた話だと、12階層あるらしい。ダンジョンは、通常、大体、11階層から13階層程で、たまに23階層から26階層の物もある様だ。また、稀に永遠と続くと思われる程の、長いダンジョンまであるとの事。さっき、ベテランさんから聞いた。
パーティーは順調に階層を攻略して行った。しかし、ある階層で、ボクの思いもよらなかった事が起きる。
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