俺たちは二人で一人

猫山

あらすじ

第1話

悲しい世界。物には自由に動かすことが出来ず、ただ使われ、

そして使い終わった後すぐ捨てられる存在。しかし、極稀に雷によって文房具から人間になれる不思議な怪奇現象があるのだ。しかし、人間になれるといっても完全ではない。文房具のある一部分や色など、個人差はあるがそれは体に残ってしまう。これは身近にある文房具の話である。


「……ここはどこだ?」


倒れてた黒石はすっと起き上がった。辺りを見渡すとどこか見た風景。そしてこちらを見ている男。


「やっと目が覚めたか。お前が一番最後だ。」


黒石には男の言ってる意味がわからなかった。しかし、何故か初めてあった気がしない。黒石は男に尋ねた。自分がなぜ寝ていたのか。そして一番最後とは何のことか。そして男は誰なのか。


「お前いつも一緒に居た俺のことを忘れるなんてな、赤岩だよ。ボールペンの。」


黒川ははっと気づいた。赤岩の特徴的なボーダーカラーの格好。そうだ、確かにあの赤岩だ。


「ということは、白もこっちにきているのか!」


慌てて黒石は辺りを見渡した。しかし、赤岩以外誰もいなかった。赤岩以外誰もまだこの体になってないんだと落ち込んでいると、


「あぁ、白ならもうとっくの前に外の空気を吸いに出て行ったさ。それがどうした?」


黒石は一瞬にして絶望の顔から満面の笑みに変わった。端からみたら気持ち悪い顔だがそれは黒石もわかっていることだ。だが、白がいるのを知ったら笑みを浮かべずにはいられなかった。


「なぁ、赤岩!白はどんな格好してた!?やっぱかわいかったよな!」


赤岩を揺さぶりながら聞いている黒石。やっぱり気持ちが悪いくらいの笑みだ。

しかし慣れているのだろう。赤岩は冷静に答えた。


「白なら白のワンピースみたいなの着てたな。方向ならあっち方面に確か公園があるだろ?あそこに行くって言ってたぞ。」


黒石は話を聞かず、そのまま外に出た。赤岩は一人寂しく部屋にいる。しかし精神年齢が大人なのか、やれやれといった感じで赤岩はその場を後にした。




程よい日差しの中、汗をかいている男が一人。そう、黒岩だ。近くの公園にきた黒石はあることを思った。


「赤岩は近くに公園があるって言ってたけど……。いや、多すぎだろ!もうこれで5つめだぞ!」


黒石は赤岩に怒りをぶつけてやろうかとぶつぶつ言っている。だが、それは人の話を最後まで聞かない黒石が悪いではないだろうかと、公園にいる全ての人が思ったことだろう。


「はぁ、少し休憩しよう……。流石にずっと走りっぱなしで喉渇いたし、足も少し痛いし……。少しあそこで休憩しよう……。」


ベンチ横にある水飲み場で水を飲み、ちょうど日が差さないベンチに腰を下ろす。辺りを見渡すと小さな子供がキャッチボールをしている。


「はぁ……。それにしても見つからないなぁ..。てか、本当にここに白がいるのか?まさか赤岩俺に嘘を!?……いや、あいつに限ってそれはないか。それにしてもいいなぁ……。俺も普通にキャッチボールとかしてみてぇな……。この手さえちゃんとしたものならな……。」


黒石は自分の手を見ながらそう言った。それもそうだろう。普通の人間の手ではなく、指先全てシャーペンの手になっているのである。他の人に見せないように黒石は手袋をつけている。いくら人間の姿になったちはいえ、この手を見せたら流石に大騒ぎになるのはいくら人の話を聞かない黒石でも分かっている事だ。


「はぁ、これからどうしようかな。一回戻って赤岩に聞くのも手だけどあいつのことだから怒ってそうだから帰りづらいんだよなぁ。」


悩んでいること小一時間。流石に手がかりがないので黒石はしぶしぶもと来た道を戻り、赤岩のところに戻った。


「お、帰ってきた。お目当ての白には出会えたか?って言いたいところだけどその顔の様子じゃ見つからなかったみたいだな。それで俺に再度聞きに来たって感じだな。」


黒石はびっくりした。考えを全て当てられ冷や汗をかいた。こいつはもともとボールペンじゃなくて、超能力者じゃないのかと。いや、誰もが思うだろう。考えたらすぐ分かるということに。しかし、白に会えなかった黒石にとってはその考えすらなく、ただ呆然としていた。


「てか気の毒だな。お前が帰ってくる少し前に白が帰ってきてお前が目覚めたこと言ったら一目散にお前を探しに出て行ったぞ。お前ら何か?頭の中身一緒なのか?」


黒石は目を疑った。それもそのはず、自分が探していた人が自分を探してくれるなんて思っても見なかった。ただひとつ言えるのはなぜ白も黒石を探しているのか?それが疑問に残っていた。


「それはそうとなんでお前白のこと探しているんだ?俺にはさっぱりなんだが。」


赤岩は黒石に聞いたが黒石の返答がない。赤岩が気になり黒石のほうを見てみると、顔全体赤く染まった黒石がいた。


「いやさ、俺いつもマスターに使われてさ。それは普通のことなんだけど、マスターが字を書くの失敗していつも白が使われてさ。それがなんか俺にとってはつらい思いさせてるなって思って。それで自分のせいにはないにしろ、白には少し迷惑かけたなぁって思ってそれで謝りたいわけよ。」


赤岩は目を疑った。確かにシャーペンの黒石と消しゴムの白は二人で一つみたいなものではあるが、実際使っているのはマスターなのに自分が悪いと思っている黒石に赤岩は驚きを隠せないでいた。

だが、それだけの理由で顔全体が赤くなるだろうか?赤岩はそこを疑っていたが赤岩が聞く前に黒石が口に出した。


「まぁあと……、普通に白に惚れちまってさ。それで謝るついでに俺の思いを伝えようかなって。まぁ普通に振られるかもしれないけどやっぱそれだと俺の心の中が気持ち悪いからさ……。」


一人寂しく淡々と話している黒石を見て赤岩は思った。こいつ分かりやすいやつだと。しかし黒石の返しに毒舌で話すのも悪いと悟った赤岩は自分の思いを伏せてこいつの恋を応援しようと思った。


「まぁ、いんじゃねぇか?自分の思いを伝える分には。てかまた白探しに行くか?もし探しに行くんだったらこっちに白が戻ってきたらここに居るように伝えるよ。」


赤岩はそういうと黒石はありがとうと言いつつ、また白を探すため外に出た。


夕方18時。日も落ち始めあたりは暗くなってきたところだが黒石は白に会いたいがため、いろいろなところを走り探し回った。さすがに黒石は朝から探し回っているせいか疲れがピークになり、再び昼に休憩した公園で再度休憩を取った。


「さすがに疲れたな……。やっぱ見つからないなぁ。いったい白はどこにいるんだろ。」


ベンチにゆっくりと腰をかけ、ため息混じりに落ち込んでいる黒石。時間も遅くなってきたため公園についている外灯もつきはじめた。


「こんなところで何してんの?早く帰らないといろいろ面倒なことになるわよ。」


どこからともなく声がしたが意気消沈とした黒石にとってはどうでもいいことだった。声をかけた女性は意気消沈とした黒石にイライラし始めた。


「あのさ、私あんたのこと探して走り回ったのにそのあんたがこんなところでグッタリしてるなんて、ちょっと最悪なんですけど!」


疲れがたまっていた黒石もだんだん話しかけてきた女性にイライラし始めた。なんなんだこの女は、と黒石は思い、言い返そうとした。


「いや、あんた俺のことなんもしらな……って白!?何でここに居るんだよ!おれめっちゃ探したんだからな!」


黒石は白を目の前にいるのがびっくりして抱きつこうとした。が、白はなんなくかわし、黒石はなんもないところでこけた。黒石の顔は砂まみれですりむいていた。しかし白は黒石のその姿を見ても何食わぬ顔でこけた黒石の姿をみていた。


「ちょっといきなり抱きつかれるのは流石に無理なんだけど。てか今まで何してたの。」


さすがに顔からこけた黒石を少し気を使ってほしいと思ったが、そんなことはどうでもいいと思った。

なぜなら目の前には黒石が探しまわっていた白がそこにいるのだ。だから自分のことはどうでもよかった。

黒石は服や顔についた砂を落とし、その場ですっと立った。


「いや、こっちのセリフだよ。探しに行ったらどこにも居ないし...。」


黒石の頬が少し赤らめていた。だが今さっきすりむいていた為、顔が赤くなっていても不自然ではなかった。黒石は気持ちを白に伝えようとしたがふと、赤岩のある発言が気になった。『白も黒石を探していた』と。そこが気になり自分の思いを伝えないでいた。


「そういえば赤岩に聞いたんだけど俺のことを探してたって聞いたけどそれはどうして?」


黒石はもしかしたら相思相愛なのかもしれないと思い、自分に言い聞かせながら話した。それを聞いた白はきょとんとした顔で聞いていた。白は言いたいことはあったがそれをいざ黒石に話すとなると顔が少しイラついた顔になった。これは黒石に言って良いのかと。白にとってはすっきりすることであるが黒石にとってはどんな気持ちになるのか。白は初めて相手のことを考えたため、どういっていいかわからなくなってしまった。


「うーん、ここじゃなんだしここの近くに夜景が綺麗な公園があるからそこに行かない?ここだと少し人目が気になるし……。」


黒石は確信を持った。相思相愛だと。勘違いをしたまま黒石は即座に返事をした。その返事に少しびっくりした白は黒石は怒られることを察知したのだろう、と思い決心を決め、夜景の綺麗な公園に出向いた。


「んで、伝えたいことなんだけどさ。先にいっていいかな?」


口火を切ったのは白のほうだった。黒石は頬を少し赤らめながらOKをだした。しかし黒石が思っているのとはほぼ真逆といっていいほどつらいことをいわれるのを黒石は思いもしなかった。


「あのさ、この際だから言うけどあんたマスターに使われるときなんか申し訳なさそうな顔顔しないでくれる?おかげで色濃い色でるから私かなり痛いのよ!だから角ばっか使われるし力強く使ってくるし、それだけ毎回やめてほしいって思ってたのよ。」


黒石は少しびっくりした。確かに白の言ったとおりその事に関しては謝ろうとしていた。だが、黒石が思っていた以上に根に持っていたことに関して驚いていた。白は言いたいことを言い終え、スッキリした顔をしている。


「その件はごめん。俺も毎回使われて白に結構迷惑かけたなぁって思ってたからさ。でもようやくその件はちゃんと謝れるよ。本当にごめん。」


黒石は礼儀正しく白に頭を下げた。白もそれだけが言いたかっただけでもうこれくらいにしてやろうと思った。そしてこの件を言ったら部屋に戻ろうといていた。そう、黒石が次の言葉を口にするまで。


「それとさ、それ終わった後で言いづらいんだけどさ。俺さ、白のことが好きなんだ。だから、俺と一緒に付き合ってほしい。こんなだめだめな俺だけどさ。」


白は目が丸になった。白が言いたいだけ言っておきながらも黒石は白のことが好きだと。わけが分からなかった。白は黒石に関してまったく恋愛感情はおろか、ただの相棒だけだと思っていたのだから。

それなのにいきなり告白されたのだ。


「ななななんでそうなるわけ?いきなり告白するなんて、私さすがに予想外なんだけど。大体私たちは相棒なだけで、それ以上でもそれ以下でもないでしょ。何で恋愛感情に発展するかな!?」


白はそこが気になった。なぜ相手のことをほぼ知らないのに恋愛感情に発展するのかと。


「いやさ、マスターに使われてて思ったんだよ。俺の濃い黒色を白はいつも綺麗に消せてさ。それですごいかっこいいなぁって。しかも俺と違っていつも綺麗だしさ。そこに俺が惚れたわけよ。」


白は黒石に理由を述べられ、素直に嬉しかった。ただそれだけの理由なだけでも。でも白にとってはそれが初めてのことであり同様を隠せないでいた。


「……なるほどね。それでか……。でもさ、私はその告白に関しては素直に返答できないかな。ごめんだけど。私はあんた以上にあんたのこと知らない。でもそれは一緒じゃないかな?あんたは私のことを知ってる風で実際何も知らないでしょ?」


確かに白の言うとおりだ。黒石は自分が思っているだけで中身の白を知らないのだから。でもそれで黒石はよかったのだ。自分の思いさえちゃんと伝えられれば。


「だからさ、まずはお互いのことをもっと知ってからにしない?それでもし気持ちが変わらなければ再度告白してほしいし、もし違うなと思えばそれで終わればいいし。どうかな?私の案。」


白は少し恥ずかしかった。でも、もし自分のことを本当に好きになってくれるものなら、ちゃんと白自身、外面だけじゃなく、中身まで見てほしいと。そう思った。

黒石はびっくりしたがそれもそうだと白の案を受け入れることにした。

日も暮れているのもあり、結果早く帰ろうと白は言い出し、赤岩の待つ部屋に戻っていった。




月日が経ち、またあの見たことある風景を目の当たりにした。そしてまた目の前にはボーダーカラーの特徴の赤岩が目の前に居た。


「んで、結局はどうなったんだ?俺には皆目検討つかん。」


あの後時間がなくなりまたもとの姿に戻ってしまった。新しいシャーペンとして。そして何回もこの見たことある風景に出会わすも赤岩の姿が見られなかった。

しかし、今回やっと赤岩に出会えた。そしてあの後、白とどうなったのかを。


「ようやく赤岩に会えた。あの後どうなったかはこれを見たら分かるよ。」


黒石の背中にもう一人、人影が見えた。白いワンピースを着た女性が。


「黒石!ほら、さっさと支度する!この前いけなかった場所に行くよ!」


白は颯爽と行こうとするが黒石は赤岩に少しだけ話をするといって白を待たせることにした。


「とまぁこんな感じだよ。あの後白のことを知ろうと思ったから白は俺のシャーペンの上にある消しゴム。俺は白専用のシャーペンになったってわけ。んで白が俺を認めてくれて今は結婚してるよ。」


赤岩もやっぱりかと思い、ニヤニヤしながら黒石のほうを見た。


「なるほどね。まぁよかったよ。ちゃんと報告を聞けて。てか俺のことより早く白のところに行ってやりなよ。久々のここだと思うし。んじゃ、俺も少し用事あるからこれでな。」


赤岩はそう告げ、外に出て行った。黒石も少ししてハッと思い急いで白のもとに走っていった。



文房具とは使い終わったら、捨てられる運命。だが、捨てられても尚、新しいものにと生まれ変わるもの。


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