第8話常、フラグに寄り添い隠れているもの
ーー薄暗い、不思議と、落ち着いた色を保った部屋。中央の長テーブルを一人と二人、計3人で向き合って座っている。
一人ーーつまり、今微笑と、余裕ぶった表情をする二人の前に座る彼。銀髪碧眼の体の至る所が整った美少年、プレシャス・イオナ。
そして、彼は口を開く。
「この度は来てくれてありがとう。早速、本題に入るが……」
「ねえ、イオナお腹空いた〜〜」
「お嬢様、今は我慢してください」
「え〜〜今は嫌だ〜〜花火〜〜お菓子食べたい〜〜」
イオナの話を割り入るように彼女ーー内楽
そんな主人に呆れたのか、それとももう見慣れて聞き慣れているのか、メイドのような衣服を纏った少女がなだめる。
そんな中イオナは、無視しようと努力するため反応せずに話を続ける。
「無限の地位を奪うのに協力してもらいたい。今日はその事を話すために500歳のロリババアと、雪花 花火。あなた達を呼んだ」
「おい待て、今私の事なんて言った?」
そう、無意識にイオナの口から出てしまった挑発を髪を逆立て、声色を変えて言葉を発したのは、華日であった。
「500歳のロリババアです。どこか訂正すべき点がありますか?どれ一つとして間違ってはないだろ?」
「やかましいわ!」
「しょうがない、年齢というものには、たとえ超人であっても敵わない」
「うるさい!もう良い、全てが止まって死ねば良い。ーーフルーム」
「お嬢様、折角ですがこの人を殺めてはいけません」
そう、イオナに攻撃を仕掛けようとする華日を危機一髪で止めてくれたのは、メイドの花火だった。
花火の首チョップで華日は倒れ、間一髪自分は死なずに済んだ。だが、なんらかの手違いだったのだろう。なぜかアヘ顔である。マゾなのかな?
だらしない主人の顔を花火は、整えて眠った表情にさせ、彼女はイオナの方に向いて
「イオナ、お嬢様をあまり怒らせないでください」
と言い、眠る華日をお姫様抱っこし、「それでは」と後ろへ振り返る。そして、表情を来た時から今まで崩さなかったが、花火は見返って軽く一礼ーーそしてそっと微笑む。
そして、一瞬で消えてしまう。
まともに話さなかったが、まあうまくいくことに期待しよう。
策なんて話してもあのロリババアこと華日には絶対理解してくれない、というよりも「策なんてくだらない」なんていつもそれらしいこと言ってるからということ。
華日自身の持つ能力で流れを止め、派手に動いては物を破壊し、乱し、そして崩れさせその姿は完全に破壊神そのものだ。
でも、普通なら付き合いたくないような奴をなんで、そう関わるのか?それは何年か前。そうだな……ざっと490年前にさかのぼる。つまり、華日の年齢が10歳のときの話。
ーーその時は、まだ僕は自我を待たずして生きている。いわば寝ても起きてもいない状態。
腕やら足やら腹やら首やら……身体の至る所に細い管が通っている。
管から流れるものはーークスリそう言われるもの。
正直今でもそれが本当にクスリというものなのか分からない。そもそも自分はなぜ存在しているのかもわからない。人間でもなければ、サイボーグでもない、妖怪でもなければ、神でもない、超人でもなければ魔法使いでもない。
ーーただ、どの類にも当てはまらない生き物だ。
まあ、記憶がどれも、極端だったり曖昧なせいで自分でも嘘なのか本当なのかよくわからない。
だけど前の自分ーー管を通され自我を持たない、死体のように仰向けになって寝ていた自分に自我を芽生えさせてくれた人がいた。
その人が、華日である。つまり、華日は恩人なのだ。だが同時に、華日との契約もある。それは、
ーー
というものであった。
まあ、契約と言っても自分が自我を持つ前だったのでそれは契約とは言わないのは分かってる。契約とは、人の同意と任意があって初めて結ばれるのだ。
彼女は自我を持った自分にたくさんの事を教えてもらった。
そして、色々学んだ。色々知った。考える喜び、分かち合える喜び、たくさんの感情を得た。
全て華日の元でーー
ときに、華日という超人の性格も分かってくる。
どんな生き物でも細かく、深く考える事を追求できる生き物に限り、相手の感情を簡単に伝うことができるのだ。
いつでもお子様であれから、会った時から。いや、初めましてをいうときから身長は変わらなくて、でもお化けが怖くて、夜トイレに行けなくて怯えると言った可愛い一面もある。
恩人であり、唯一の家族。
管を通した人の事も僕の自我をどうにかしようとしてくれたのだろう。管を通したときの気持ちが治してやろうという優しさと痛い事をして悪いと思う辛さなら……
その人も家族というべきである。だけど、僕はその人を見てない。それに僕はあまりその人を家族とは考えたくない。僕には、無理しかしなかった人にしか思えない。
だって、それが成功を導く前に先に他の人が成功を導いてしまったのだから……
暗く、落ち着いたその空間に独りーーイオナは椅子に深く腰をかけて、体を反らせる。
そして、ふっと微笑み心は安堵の色に染まる。
ーーそして、気づいた頃にはいつの間にか寝ていることに気づく……
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
ーーこれは……記憶か?
突如として目の前。いや、ふっと浮かぶという表現が正しいだろう。
白い寝台のような台に仰向けになって誰かが寝ていた。誰なのかはもうわかる、自分ーープレシャス・イオナだ。
ーーそうだ、記憶だ。これは、僕が自我を持つ前の記憶。
管が所々入れられて痛々しく、禍々しい光景で、イオナは、なんと思えば良いのかよく分からなかった。
あんまり、気持ち悪いものをみるもんではないが、これが自分である以上、そう思ってしまうとなんか残念で、悔しくて、落ち込む。
そんな、自我を持つ前の彼の横たわった姿は、禍々しく、痛々しくて、たまらないような。でも、そんなの、自分の体だからだろう。
簡単に言えば人形にナイフを刺したようなものなのだ。
物と思ってしまえば、ああ可哀想だな。なんて情の入らない悲しみ。いや、哀れみというべきだろうか?でも、同じ生き物であれば感情は、移入されるのだろう。悲しみ。もっともらしく言えば愛に当たるのだろう。
ーーただ人形のようなものだった自分からすれば悲しく、嫌になる。……でも生きてないんだな。
イオナは彼ーー自分の目を見て言う。
開かれた目から見える黒目からは光が無くて、微動だにしない。多分息もしてないんだろう。
ーー怖いな
ふと、過ぎった言葉。
なんとなく思い浮かんだ言葉でもある。ほんと死んで尚、まだ生き続けているようなもの。言葉としてはおかしくあまりにも矛盾している。だが実際にそうだ。結果的にどこもおかしくない。
矛盾というのは、普通であり常である。
だから、結果的に真理に触れないでまとまってなさそうだが、矛盾とは、平気で存在し平気でそれを矛盾ではないと言い張る輩がいる。
ーーそう、無限だ。
この世の条理や道理とは、第三者。いや、ほとんどの人が「正しい」と思ったことが勝手にそれらしい形になるのだ。
つまりは、どんな偽りだろうとそれが正しいと認識されてしまえば、そのように世界の中身ーー設定は組み替えられるという意味である。
アップデートと仮称すればいいのだろうか?いや、でもそれでは少し意味が違う。
ーー改造……
いっその事、捏造とでも仮称するほうがいいのかもしれない。近いから。
でも、そんなら心理的に思い込ませる洗脳とでも言い換えてもいいのかもしれない。
だから、当たり前のように生きているうちにはたくさんの矛盾が存在するのだ。
簡単に例えるなら差別はしてはいけないみんな公平だ。じゃあ正義と悪という概念はどうなるのか?
常に皆んな平等なら、他人と自分を同じに見なければいけないだろう。
敬ってはいけないし、同時に謝ってもいけない。
そう、完全に居づらいのだ。
矛盾点など、これ以上にたくさんある。
ーー僕は矛盾するのが嫌いだ。
一回や二回……その程度なら自分だってなんとも思わない。
だが、そんな矛盾が立て続けに存在するのは大嫌いだ。
根本的な理由として、無限の管理が怠っている事が原因だ。
だから無限の位を奪ったら、自分が全部自分の理想郷作り変える。
ーー絶対にだ。
その頃、
禍々しい空の下。不気味な林の中を少女は少女を抱えて歩く。彼女達ーーメイドの花火とその主人の華日は、詳しく言えば、メイドは気絶した主人をお姫様抱っこして、腐って湿った落ち葉の安定しない道無き道を歩いていた。
こんなところを歩いているのは、ちゃんとした理由がある……
そう、ちゃんとしたーー
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
ーーさかのぼること1時間ほど前
花火は華日を抱えたままイオナのいる屋敷から出て、しばらく林の真ん中に続く道を歩いていたときのこと。
急に目の前が真っ暗に歪んで気づいたら見知らぬ世界の見知らぬ林に迷い込んでしまっていたのだ、自分でもなぜこんな事になってしまったのかは、薄々分かっている。
多分、世界と世界の境界の歪みが発生したのだろう。
だが、そんな珍しい事例ではないらしい。ふざけんなと、そう記録するやつに怒鳴りたいくらいだが……
別称で、有名なのが神隠しと言われるもの。まあ発祥は、多世界の事を知らないくせに、神は本気で信じてるような矛盾だらけの世界である地球からだけどね。
物理的というか、科学的というか、事実神隠しとは、色々な説があり、色々な例があるが、たくさんあるうちの一つに含まれるのが、この世界歪境である。あとは、有名アニメのタイムマシンでの件で次元の歪みがなんちゃらとかが挙げられる。
まあ、脱出方法としては、多世界空間に出るための出口ーー世界移動の扉がある場所まで行かなければならない。
ーーそして、今に至る
「流石に重い」
主人を持ち上げるメイドの腕は、だんだんと下がっていく。
そしてすぐに、ドサッと音を立てて落ちるようにしゃがみこむ。地面すれすれにメイドは主人を抱く腕が止まる。
疲れたな……もう嫌だ……
そう、心の奥から願いが無意識に行動に移っていた。
「主様、主様……華日様、起きてください、流石に疲れました。重いです。華日様。起きてくださ〜い。重いです。重いです。重いです」
「ああもう!うるさいなあ!重い重いって!レディにかける言葉じゃない!」
「失礼いたしました。では、腕がなぜか耐えられませんので……」
「だから違う!そうじゃない!体重が重たいことを連想される言葉は禁止!」
「華日様は、体重が重たいのを認めましたね」
「うるさいなあもう!」
元気よく話を返してくれる主の反応を見た花火は本題に入る。
「では、華日様。本題に入らせていただきます」
「……はい」
呆れたようにその言葉を華日は返す。
そして、花火は表情を崩さず言う。
「重たくて、腕がもう耐えきれないので……」
「聞いてるの!?体重が重たいことを連想される言葉は禁止って言ったはずなのに!?私の話聞いてたの?絶対聞いてないでしょ!」
「……すいません……今は、元気なツッコミよりも早く腕から離れてくれると……嬉しいです……」
辛さが言葉ににじみ出てきて、だんだんと華日を抱える腕がゆっくりと下がっていく。
そんな状況に、華日は焦って「ちょっと待って」と甲高い声で、止めるように求めるも止まらず、結果……
「あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"ぁ"ぁ"ぁぁぁぁぁぁぁ」
と、悲痛な叫びが林から響く。
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