9-2
レッドはオレが引き受ける。
その隙にイエローとグリーンはスイマーズを追え。ブルーとダークは、イエローとグリーンがプログラムを修正している間、二人をスイマーズから守れ。
心配は無用だ。なぁに、オレの大分度器、スダルシャナ・チャクラムくんは、レッドのミョルニルくんなんかに負けやしない。
何だブルー、その顔は? 不安か? 大丈夫だ! オマエたちならやれる!
ほっ、はっ、やっ!
成長したな、レッド。それでこそ、退夢師のいろはを教えたかいがあったってもんよ。普段からそれくらい勉強熱心だったらよかったのに……な!
グリーン、そっちへ行ったぞ! よしっ、そうだ! ゾウの鼻は強力な武器になるからな。
ブルー、せっかくだからご機嫌なナンバーを一曲頼む。おっと、戦隊ヒーローシリーズ風の曲や、異世界ファンタジーゲーム風の曲はかんべんな。オレはロカビリーが好きなんだ。
何? ロカビリーを知らない? よくそれで、音楽の成績『◎』取れたな? 親に聞いて勉強し直せ!
イエロー、機械に頼りすぎるな! それに、オマエの攻撃は直線的すぎるぞ? 円だ、円の動きをしろ! 神聖幾何学模様の足さばきだ! 算数が得意なんだろ?
何だ、ダーク? 退夢師のなれの果て? 今か? 今それを聞くのか? 学校では大人しいくせに、驚くほど空気の読めないヤツだな?
せやっ! とぅ!
陰陽道から分かれた退夢師は、夢の中に入り悪夢を祓い、行動プログラムを変更する権限を持った。しかし、いつしかそれを、自分の欲のために使う輩が現れた。
睡魔に魂を売り、悪夢を生み出し、人間の精気、マイナスエネルギーをくらう。
時には人間を夢の世界に閉じ込め、また時には悪人から法外な金を受け取り、人の行動プログラムを破壊する。
スイマーズは人間の欲望のかたまりだ。
スイマーズに堕とされた退夢師は、退夢師として悪夢を祓っていた記憶を失う。そして、夜な夜な人の夢に入り込み、プログラムを片っ端から破壊しまくる。たとえそれが、自分の大切な人の夢でもだ。
レッドは幼い頃、際限のない人間の欲に溺れぬよう、またスイマーズに堕とされる恐怖に負けぬよう、自分の心を殺した。
レッドの心は決壊寸前のダムのようなものだった。このままではいつか、人としても退夢師としてもダメになる。だからオレは言ったんだ。仲間を、友を作れ……と。
自分の心を素直に表現できない幼く弱いレッドには、共に笑い共に泣き、手を差しのべてくれる仲間が必要だった。
人の心は、誰かを守りたいという想いや純粋な笑顔で、さらに強くなる。
レッドはまだまだ半人前だ。
ただ、今回はレッドの落ち度じゃない。スイマーズの方が一枚も二枚も上手だっただけだ。元退夢師だけあって、こっちの手の内を読んだ姑息な手を使う。
ぐっ! とりゃ!
ん? どこまで話したっけか? まぁ、戦いながら話すのは骨が折れるから、もういいだろ? もっと詳しく聞きたければ放課後に職員室へきなさい。
今、スイマーズとしてのレッドを倒しておかないと、アイツがもっとも傷つく結果になる。レッドとて本意ではあるまい。自分の手で友の夢を壊すなど。
あん? 夢にくるのが遅かったって? テストの採点途中にレッドから連絡が入ったんだよ。まったく、ゆっくり仕事もできやしない。
えいっ! ダァー!
よしっ、今だ! 行けっ! 妹を助けてこい!
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