005. 奴隷
何時だろうか……。
牢獄には時計がないので、正確な時間が把握できない。
「――起きろッ‼︎」
兵士の怒鳴り声が自分の鼓膜を突き破るかのように、耳に飛び込んでくる。
「新入り。起きろ、時間だ」
俺はアランに体を揺すられ、重たい瞼を懸命に見開いた。
目の前には、牢獄に収容されていた人々が両腕に手錠を付けられ、一列に並べられ始めている。いったい、何事だろうか……。
「何が始まるんですか?」
俺は事態が把握できず、アランにこっそり耳打ちをした。
「これから、希少金属って言われてもわからないよな。そうだな、この辺りで採れるとされている珍しい鉱石を見つけるまで、洞窟を掘らされるんだ。そんでもって、俺たちが採取した鉱石は、王族が全てかっさらっていく。そして、それらの鉱石を売買して、王都の偉い奴らは儲けているんだ」
まるで、奴隷のような不当な扱いである。
「ほら、ボサッとしてないで行くぞ?」
「はい」
*
洞窟の中に入り、俺たちは効率化のために四人一組のグループに分けられた。俺たちのグループにはアランともう二人追加された。
「俺の名前はレンだ。アランとは昔酒場で知り合ったんだが、今やすっかり二人とも牢獄の常連者になっちまってる。何か困ったことがあれば、俺に言ってくれ。助けられる保証は無いが」
「僕はメイソンだ、よろしく。そうそう、君のことは『ジュン』って呼ばせてもらうね。それにしても、ひょろっとした体だね。スコップちゃんと持てるのかい?」
「自己紹介の必要はないな?」
と、グループ分けになった人と一通り挨拶を済ませ、俺たちは鉱石が採れる穴場へと向かった。
「そういえば、ジュンはどうして兵士に捕まったんだい?」
道中、メイソンがそんなことを尋ねてくる。
「えっと、それは」
なんと言ったらいいのだろうか。やっぱり、公然わいせつ罪だろうか……。
答えに頭を悩ませていると、アランが助け舟を出してくれた。
「コイツは遠くの村に住んでて、今は身寄りがないんだと。そんでもって、女王に自分の裸を見せたらしい」
プッ……と、メイソンとレンが噴き出すように笑い出した。
「あはは……、あの女王に裸を見せたのかい。それでよく牢獄行きで済んだね。下手したらギロチンで首を切られてたんじゃないか?」
メイソンが恐ろしいことを言い始める。
しかし、よくよく考えてみれば、牢獄が存在し、王都や奴隷の存在から想像するに、ここの文明レベルは中世の時代と合致しているといえる。もしかしたら、王族による斬首くらい普通のことなのかもしれない。
考えるだけでゾッとするが……。
「そういえば、ジュンは歳いくつなんだ? 随分と若そうに見えるけど……」
レンが首を傾げながら、聞いてくる。
「えっと、十六歳です」
「――えっ⁉︎」
前を先行して歩いていた三人の表情が驚きの色に変わる。俺、いま何かマズイことでも言ったか?
「ジュンッ‼︎」
「――っ⁉︎」
ガシッと力強くアランに肩を掴まれ、俺は心臓が口から出そうなくらい驚いた。しかし、そんなことおかまいなしにアランは怖い顔のまま言った。
「お前はここにいるべきじゃない」
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