Ⅱ. 王都編
003. 拘束
パッと瞳を開けると、見たこともない光景が目の前に広がっていた。どうやら、俺は本当にどこか別の世界に転生させられたらしい。
――ここはどこだ。
最初に浮かび上がってきた疑問は、単純でもっとも複雑なものだった。自分の立っている居場所さえ分からない。未知の世界。
こういう場合は、現地の人に頼るのが一番なのだが……。不運なことに、どこにも人は見当たらない。
「駄目か……」
そう嘆いた瞬間、ガコンガコンと何かが回転するような音が森の奥の方から聞こえた。目を凝らして見えたのは、茶色い動物と人を乗せるための車体。
あれは、馬車だろうか?
――助かった。
ホッと安堵の息を漏らし、俺はその馬車に近づく。すると、馬が車体を揺らしながら「ブルルルルっ」と鳴き、動きを止めた。
「どうしたの……って、きゃあぁぁぁぁああああああああああああああああ⁉︎」
馬車の中から現れた少女はいきなり悲鳴をあげ、両手で自分の顔を覆い隠した。なぜ、と首を傾げたが……。自分の姿を見て、その理由をすぐに察した。
……というか、なんで今まで気付かなかったのだろう。
生まれたままの姿――。
言ってしまえば、全裸の状態。あの神様め、もうちょっと気を利かせてくれればいいものを。何も全裸で転生させることないじゃないかっ‼
しかし、それどころじゃない。俺の裸を目撃した彼女は、森の方へ叫び声をあげ続けていた。
「へ、変態。痴漢。誰か、助けてっ‼︎」
「おい。ちょっと待ってくれ」
マズい……。
このままだと、俺は見も知らずの世界で公然わいせつ罪に問われてしまう。
まあ、この世界に公然わいせつ罪なんてものがあるのかは知らないが、流石にフルチン状態で外をウロついてたら間違いなくアウトだろう。
しかし、弁解する余地もなく、見るからにヤバそうな武装をした兵士に俺は取り押さえられる。
「うぉ……。なんだ、コイツ裸だぞ」
「姫様、ご無事ですか?」
「とりあえず、コイツを王都に連れて行け」
「来い、変態ッ‼︎」
確かに、この格好は変態かもしれないが……。
なんとか、言い訳をさせてもらいたい。
「ま、待ってくれ。これには、ちゃんとした理由が―――」
「――全裸になるのに理由なんてあるわけがないだろ。馬車の荷台に早く乗れ。さもなければ、首を切り落とすぞ?」
兵士の中の一人が腰にぶら下げていた鞘から剣を抜き出し、俺の喉元に鉄製の剣を突きつけた。あっ、はい、詰みました……。
「………」
俺は全裸のまま、馬車の荷台に拘束された。
*
俺の第二の人生は王都の牢獄にぶち込まれるところから始まった。
あぁ、もう一回死にてぇ。
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