ポストの鍵の番号は知らない


私は部屋を見渡した。たぶんもうない。そもそも私物をほとんど持って来ていなかったらしい。…うろ覚えだ。ここにあったのか、という程度の特にお気に入りではない服とポシェット。服は畳んであったが畳み方が違ったので畳み直した。


四角い瓶と目が合う。

のどが痛いと言うからのど飴でも入れておいてあげようと思って買ってきたものだった。

瓶にはいつも私が好きなレモン味の飴を入れていた。酸味がいい。新しい袋を開けたばかりだった気がするから沢山入っていたはずなのだが、結構減っていた。僕はミルク系のやつがいいとか言ってたのにしっかり食べてる。

残りの飴は回収した。自分の好きな甘くて甘くて甘い飴でも入れればいい。


鍵はしめてポストにでも放り込んでおけばいいだろう。私は傘を手にとり部屋を出た。彼が買ってくれた白い傘。黒がよかったけど光が差さない日でも顔周りが明るくなるからそれなりに気に入っている。頑丈だし。


瓶だけが、置き去り。








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飴と傘 他日 @hanayagi

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