飴と傘

他日

毎月第3木曜日


僕はテーブルの上の瓶を見つめた。縦10cm横10cm高さ10cmくらい。色は透明。上の面にはくるくる回すアルミの蓋が付いている。飴入れるんだ、と言って彼女が100均で買ってきたものだ。飴の袋を開けてはぎゅうぎゅう詰めていた。

いま、中に飴は一つも入っていない。おそらく全部持って行ったのだろう。


帰ってきたら彼女の私物はなくなっていた。

私物と言っても同棲していたわけではないし最近は全然来ていなかったから、うちに置いていた置き傘と数枚の服と鞄くらいのものだが。さすがに同じのは嫌、と言って買ってきた歯ブラシはティッシュがたまったゴミ箱に突き刺さっている。傘も捨てられるかと思っていた。僕と一緒に買いに行った傘を今後も彼女は使うつもりなのだろうか。


空っぽの瓶を見つめて、いらないなら捨てていけよ、と呟く。


「あ」


瓶の回収日は昨日だった気がする。瓶なんて月1でしか回収されない。困ったな。



しばらく、捨てられない。














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