第4話 闘争の結末と異端児の笑顔
夕貴は身構えた。自分は到底勝てないだろうが、それでも、この綾女という女の子だけは守らなくては!と決意したからだ。
だが、その時。
綾女が夕貴に、そっと触れながら呟いたのだ。
「エクシード」
その時、夕貴の体が光に包まれ、彼女は不思議な温もりを感じた。
数秒後、夕貴は自分の大柄な体を見下ろして、触れて、丁度ポケットに入れていた手鏡を取り出し、そこに映っている自分の顔を見て、呆然とした。
「こ、こ、これって!一体・・・?」
夕貴の体は、紛れもない男性のものになっていたのである!
獣兵衛、直美、黛の三人は全員そろって、しまった!と言いたそうな表情を浮かべたが、他の三人とともに夕貴と綾女に襲い掛かる。
夕貴は、困惑している暇もなく、六人を敵とみなし・・・
拳を振り上げた!
空間を切り裂き、音ですら遅れを取るほどの神速の打撃。
戦おうとして飛び掛かった獣兵衛が、後方へ、反発する磁石みたいに吹き飛ばされた。
間髪入れず、ミスミが研ぎ澄まされた鋏のように鋭い手刀を夕貴に向かって撃つ。
だが流水の如き身のこなしで、夕貴はそれを回避してしまう。
そのまま夕貴は、地を這う蛇よりも円滑で柔軟な動作で、ミスミの筋肉質な腕に己が剛腕を巻き付けて、鬼のような勢いで投げ飛ばしたのだ!
当然のように背後から襲い掛かる御影の気配を感じ取っていた夕貴は、華麗な軌跡を描きつつ放った後ろ回し蹴りで、三人目の男を倒した・・・。
約十数分後。
夕貴はどうにか勝利していた。
獣兵衛達六人は健闘したが敗北し、逃走していたのだ。
今回は、とりあえず勝利した夕貴は、自分の体を再び検分する。
やはり男性の肉体に間違いなかった。
人工的な手段を用いずに、自然に性転換できているようだった。
夕貴は、女性というハンデを背負っていても、数多の大会で優勝してきた、天才格闘技者である。
その夕貴がもし男だったら、まさに怪物といってもいい。
綾女は、その仮定、たらればの話を現実のものにしてしまったのである。
「俺の眼に狂いはなかったな。あなたは、素晴らしく強い人だ」
綾女の言葉を聞きながら、夕貴は再び彼女と向き合う。
少年のような少女と、真正面から。
「綾女ちゃん、君はまさか」
「そうだ、俺もギジンカなんだ。あいつらと違って、まともな能力者じゃない、ハグレ者だがな」
岩男綾女という少女は打ち明けたのだった。
笑いながら。
しかし、その笑顔は辛そうなものだった。
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