第5話 癒された傷と消え失せた痛み
「まさか、俺達正当なギジンカが、あんなハグレ者と人間にしてやられるとはな!」
戦いで敗北してしまい撤退し、遠方へと移動した六人、その内の一人である野生の塊のような大男・獣兵衛は悔しそうに言った。
「獣兵衛さまー、これから猫美達はどうしたら良いのですか?」
擬人化能力によって顕現した猫耳娘が質問する。
「再戦するに決まってんだろうが。次は絶対に勝つぜ!」
獣兵衛は即答した。
一方、黛は頭から湯気を出しそうなほど興奮し、怒っていた。
「この屈辱、決して忘れぬぞ、岩男綾女。そして名も知らぬ人間の娘よ。我を虚仮にした罪は重く・・・」
「いちいち大袈裟すぎるよ、まゆちゃん。あんた恥ずかしくないの?」
ホスト風の男、御影が呆れたように言った。
「う、ううう、五月蠅い!お主は我の眷属のくせに、我を否定するのか?それになんだ、その、ま、まゆちゃんなどという呼称は?主様と呼べ、主様と!」
「あーはいはい、分かりましたよ」
四人のやり取りを横目で見ながら、ミスミという男が言った。
「別のギジンカが接近しています。直美さん」
「とっくに気づいています。私達の上司です。ラインは植物。名前は」
直美の発言を遮るように、その近づいてきていた人物は答えた。
「ローズ・マリー」
戦いで負傷した六人を見ながら、名乗ったのは、派手な服装の華やかな雰囲気の美女だった。
「一体何なの、その惨めな体たらくは!?ハグレ者を駆除するどころか、返り討ちに遭うなんて!!・・・あなた達みたいな弱虫のクズどもは死んだ方が良いんじゃないの!?」
ローズマリーの口調は、やたら刺々しいものだった。嫌な上司である。
罵倒された六人は、全員でローズマリーを睨みつける。その視線に気圧されたのか、彼女は少し語気を弱めて告げた。
「ま、まあ・・・いいでしょう、今回だけは許してあげるわ。さあ、治療の時間よ。エクシード!」
そう言って、彼女、ローズマリーは懐から取り出した薬草を能力によって擬人化した。
つまり、人と植物の間にある境界線を超越したのだ。
数秒後、薬草は小さな女の子に変わっていた。
「あなたの名前はヨモギよ。さあ、早速、こいつらを癒してやりなさい」
ヨモギと呼ばれた幼女は、獣兵衛達六人に吐息を吹きかける。
すると、かなりの重傷を負っていた彼らの容体がみるみる改善していくのだった・・・。
五分も経つと、皆すっかり全快していた。
ローズマリーは宣言する。
「今度こそ、ハグレ者や人間を絶滅させるのよ!」
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