第八章
笑顔1
◇
紫苑先輩と菖蒲くんと一緒に、私の特訓が始まってから一週間。ずっと何かに悩んでいるような顔ばかり先輩が浮かべていたから、心配していたのだけれど、今の私は陰から先輩を呪うように見つめていた。
一体どんな悩み事があるのか、悩み事がある時に甘いものを食べに誘ってはいけないか、などと考えてただ学校生活を過ごした一週間を今振り返ってみると、本当に恨めしい。
紫苑先輩はというと、蘇芳ちゃんと二人で、待宵市のお洒落なカフェで食事を楽しんでいた。もちろん、尾行している私も同じ店の中にいる。
悩み事はもしかしたら今日のデートのことだったのかもしれない。……いや、これはきっとデートではない。二人で秘密の作戦会議か何かをしているのだ、と思いたいけれど、もしそうだったら協力者である私や甲斐崎さん達も呼ぶはずだ。
私が本当に恨めしく思いたいのは、蘇芳ちゃんの方だ。でも年下の子に嫉妬するなんて情けなくて、つい紫苑先輩を睨んでしまう。いつも通りの涼しげな顔で美味しそうなケーキをつついて、蘇芳ちゃんと何か話して――わ、笑った……!
「――おい宮下」
「へっ?」
身を乗り出した私の肩を、甲斐崎さんがぐいっと引っ張った。
そう、今日私がここに来たのは、甲斐崎さんに呼ばれたからだ。蘇芳ちゃんに見張りを頼まれたから協力してくれと言われて、一体何のことかと思ったら、なぜか蘇芳ちゃんと紫苑先輩のデートを見せ付けられることに。
声に出したい不満を全部息に変えて吐くと、隣に座る甲斐崎さんも同じように溜息を吐いた。
「気付かれるだろ……」
「気付かれちゃいけないんですか? 蘇芳ちゃんはこのこと知ってるんじゃ?」
「知ってるぜ。呉羽は知らねぇと思うし、お前としても俺と二人きりでいるところなんて呉羽に見られたくねぇだろ?」
むっ、と言葉に詰まる。
むしろ見せ付けて嫉妬してくれたら嬉しい、なんて思っても、紫苑先輩は嫉妬なんてしないだろう。確実に「へぇ、枯葉と付き合ったんだ、お幸せに」とか言ってきそうだ。
尾行し始めて三時間ほどが経過した。甲斐崎さんはもう飽きてきたのか、蘇芳ちゃんと紫苑先輩の方をほとんど見ていなかった。私も、見ていると苛々してくる自分にむかつくから、視線を手元にだけ向けて、やけ食いならぬやけ飲みをする。口の中に甘いカフェオレの味が広がって、少しだけ落ち着いてきた。
「……お前さ」
「はい?」
コップをテーブルに置いて横を向くと、隣に座る甲斐崎さんの顔が思ったよりも近くにあり、即座に顔を逸らしてしまう。甲斐崎さんがそれを気にした様子はなく、横目で視線を返している私に、真剣な顔で問いかけてきた。
「呉羽のどこがいいんだ?」
「……へ?」
「……って、違うからな!? 俺は別に、お前に興味があるとかそんなんじゃねぇから! ただ、結構性格悪ぃっつーか、素直じゃないあいつを好いてる理由が知りてぇだけだ!!」
甲斐崎さんは早口で私の鼓膜を震わせる。いきなり大きな声を出されて驚いたが、それ以上に、私の恋心が気付かれていたということにもっと驚いた。
私は紫苑先輩を好きだと公言したことはない。それなのに甲斐崎さんが知っているのは、私の顔に先輩が好きだと書いてあるからだろう。そう思ったけれど、甲斐崎さんの能力を思い出してすぐにほっとする。心の声を聞かれただけなら、先輩にまで気付かれることはない。
先輩と出会ってから、約二週間が経った。日数的には、出会ったばかりと言っても間違いではない。だというのに恋心と思われる感情は、私の胸の中で、私自身が分かるほど大きくなっていた。
甲斐崎さんの問いに答えなければと思いながら、紫苑先輩が居る記憶を辿っていく。
「どこがいいか…………えっと、どこ……でしょう」
「……は?」
「最初は……自殺しようとしたのを紫苑先輩に止められて、優しくされて……。いえ、違いますね。言動そのものはとても冷たくて、感情はあまり込められてなかったんです。でも、それに惹かれました」
どういうことだ、と聞きたげに、甲斐崎さんの首が傾く。私は説明するように続けた。
「憐れまれるより、同情されるより、叱られるより……淡々と話されるのが、心地良かったんです、その時は。それから話していくうちに、根は優しい人だと知って、素直じゃないけど私を気にかけてくれていることも知って……」
喋りながら、私は自分の口元がだらしなく緩んでいることに気が付いた。紫苑先輩のことを考えるだけで自然と微笑んでしまう。それが少し恥ずかしくて、唇に手を当てる。
優しくて、強くて、完璧に見える紫苑先輩。しかし先輩にも欠点はある。強くない、弱い部分がちゃんとあって、先輩は、ちゃんと私と変わらない、人だった。
幻想みたいに綺麗で、私みたいな凡人とは吊り合わないし、触れることさえ許されない。そんな思いが、あの日――先輩が見舞いに来てくれた日に、砕けた。先輩の弱いところを知って、華奢な体を抱きしめて、好きだという気持ちが強くなった。
それを口に出すことを忘れており、私ははっとしてから甲斐崎さんに虹彩を向ける。彼は今のを全部聞いていたのか、黙ったまま私を見つめていた。
「……なんつーか、本当に好きなんだな、あいつのこと」
甲斐崎さんが、ふっと笑う。私のこんな話に優しく笑ってくれるなんて、やっぱり甲斐崎さんも優しい人だ。ここまで長い話を聞くつもりはなかっただろうに。箇条書きみたいに好きなところを数箇所あげるのが、普通の回答だったと思う。だから、出会いから語ってしまったことに恥ずかしさを感じ、頬が熱くなってきた。
小さな音を立てて、甲斐崎さんがコーヒーを飲む。置かれたコップに目をやると、飲み干してしまったみたいで、中身は空だった。
もしかしたらもう店を出るのかもしれない。慌てて蘇芳ちゃんと先輩の方を振り返り、二人がまだ何か話しているのを見て、ほっとした私はソファに背中を沈めた。
「宮下が飲み終わったら、もう出ようぜ」
「……え? いいんですか? 二人を追わなくて」
「飽きたからな。それに、何かあってもあいつらでなんとかするだろ。蘇芳はただ呉羽と二人で話したいことがあるってだけっぽかったし。そういうわけで、尾行はやめだ。俺らは俺らでデートしようぜ」
それは、もちろん冗談で放たれた言葉なのだろうけれど、どきっとした。かっこいい男の人にデートをしようと言われたら、大半の女の子は心を揺さぶられるのではないだろうか。甲斐崎さんは少し怖いものの顔立ちは整っているから、優しそうな表情でそう言われると怖さなんて気にならないくらい魅了される。
私はカフェオレをごくりと飲み込んで深呼吸をしてから、甲斐崎さんに頷いた。
「そうですね。せっかくですし、待宵市を満喫しましょう!」
私が荷物をまとめて立ち上がったのを見て、甲斐崎さんは楽しそうにニッと歯を覗かせる。
「よっし、行くか」
「はいっ」
甲斐崎さんと店を出ると、私は歩き出した彼の横に並んで進む。どこに行くかもう決まっているのか、彼の足に迷いはないようだった。
待宵市は三日市よりも色々なお店があり、街並みも綺麗だ。高い建物が多くて、思わず見上げてしまう。もちろん私は、田舎者のように思われるのが恥ずかしいから、極力きょろきょろしないようにしている。
もしかしたら甲斐崎さんは待宵市によく来るのかもしれないな、と思いながら彼に付いて行っていたのだけれど、ふと立ち止まった彼は困ったように頬を掻いた。
「なあ、待宵来んの初めてでどこになにがあんのかわかんねぇんだけど、宮下は知ってるか? 行きたい店とかあったら教えてくれよ」
ははは、と乾いた笑いを漏らす彼に、私も苦笑した。ただ適当に進んでみていただけのようだった。私も彼と同じだから行きたい店なんてすぐ思い浮かばない。なにか良さそうなお店がないか、周囲をぐるりと見回してみた。
ふと目に付いたのは、横断歩道を渡った先にあるクレープ屋だ。私達の傍を通りかかった人が美味しそうにそれを食べていて、よだれが零れそうになる。そういえば紫苑先輩とクレープを食べに行こうという話をしていたのに、結局まだ行けていない。今日は他のものを食べることにしようと思った時、
「――よし、じゃあクレープにするか」
と、甲斐崎さんが私の手首をぐいと引っ張った。驚いて顔を上げたら目が合って、くすりと笑われた。
「お前、甘いもの好きなんだな。さっきもカフェでケーキ食いまくってたのに」
「だ、だって、美味しいじゃないですか……!」
「まあな――って、あ……わ、悪ぃ」
店の前まで来て、甲斐崎さんがぱっと私の手を離す。やけに震えたような声を出すから何事かと思うと、彼の顔は心配になるくらい真っ赤だった。
「え、っと……甲斐崎さん? 熱中症、じゃないですよね?」
「あ、ああ。なんでもねぇよ。とっととクレープ買うぞ」
きょとんとしたまま問えば、ぶっきらぼうに返される。聞き方が悪かっただろうか。それとも、やはり熱でもあるのか。無理はさせたくないなと思ったが、気付くと甲斐崎さんはクレープを私の分まで頼んでくれていた。
「あっ、お金、払いますよ!」
「いいんだよ、奢ってやる」
「それは申し訳ないです……!」
「いいって言って――」
「クレープ二人分、お待たせしました! デート、楽しんでくださいね」
甲斐崎さんの強い声を遮って、ニコニコ笑った店員さんがクレープを二つ差し出してくる。デート、という単語を小声で反芻してみて、顔が赤くなっていくのを感じた。気まずい空気を出しながらクレープを受け取り、甲斐崎さんと歩いていく。座れる場所がないか視線を彷徨わせつつ、クレープにかじりついた。
「……宮下」
「…………はい?」
少し歩くと、公園があった。子供達のはしゃいでいる姿を微笑ましく見つめる私を、甲斐崎さんがつつく。ベンチがちょうど空いているようで、二人でそこに腰掛けた。
座って少しすると、「お前さ」と声をかけられた。
「俺のこと『ウサギ』かもしれねぇ、って。疑ってねぇのか?」
真剣な眼がこちらを向く。彼の瞳を揺らがせるのはきっと『不安』だろう。私は悩むことなく言ってのけた。
「疑ってないです。甲斐崎さん優しいですし、能力が違います。たまに怖いなぁと思いますけど」
そこまで口を走らせてから、しまった、と思った。怖いなんて、失礼なことまで声に出してしまっていた。尤も、言うまでもなく思っていれば彼には気付かれてしまう。
「……怖がられることはよくあるから気にしねぇよ」
呆れたように呟かれ、私は今更失言を誤魔化すべく笑う。いっそのこと勢いに任せて聞きたいことを全部聞いてしまおうと思った。どうせ聞かれてしまうのなら、私の声でちゃんと聞いてもらった方がいい。
私は無礼を承知で、ごほんと咳払いをしてから問いかけてみた。
「甲斐崎さんの、お父さんって、ヤクザだったり……します?」
「は?」
「だって、初めて会ったとき甲斐崎さん拳銃持ってたじゃないですか」
ぽかんとしていた彼の顔が、拳銃と聞いてはっとしたように固まる。クレープを持った手を何故か大きく振って自分の膝の上に叩きつけると、焦ったように口を動かす。
「ち、ちげえよ! 誤解だ!! 俺の親はヤクザじゃねぇし、拳銃は……。えっと、だな、あいつ……人兎から盗ったんだよ!!」
「そ、そうだったんですか……」
ただ弁解しているだけなのに、迫力と勢いが凄くて私は少しのけぞった。声があまりに怒声に近かったから怒られたのかと思った。
落ち着こうと思って、危なく落とすところだったクレープを食べる。
「……甲斐崎さんは、誰が『ウサギ』だと思います?」
叫びすぎて疲れたのか、甲斐崎さんの口から長い息が吐き出された。私の問いかけは聞こえていたか不安になったけれど、どうやらしっかり聞こえていたようだ。
「教えてやらねぇよ」
少し間があったから教えてくれると思ったのに、悪戯っぽく笑われる。私が残念そうに「そう、ですか」と言いながらクレープを食べると、甲斐崎さんが低くぽつりと零した。
「教える勇気なんて、ねえんだよ」
「……勇気、ですか?」
「俺が、こいつが『ウサギ』だと思う、って言って、それを誰かが信じたら。その『ウサギ』じゃないかもしれない誰かは俺が疑ったせいで死んで、記憶を失うんだぜ?」
言われて、私は顔を俯かせた。甲斐崎さんの言う通りだ。いや、私や他の能力者の予想ならきっと誰もが疑ってかかる。だが甲斐崎さんは心の声を聞けるのだ。その能力で得た情報から『ウサギ』を推断すれば、信じる人も多いだろう。
発言は取り返しがつかない。そしてどう受け取られるかも分からないもの。甲斐崎さんはそれをよく分かっている。自分の言葉が誰かを殺すかもしれない、ということを、私は意識の隅にすら置き忘れてしまっていた。
じっと睨むようにクレープを凝視していると、頭に手を置かれた。
「まあ、お前は人兎に殺されないように動いてりゃいいんだよ。この俺が、お前は『ウサギ』じゃないって断言したんだぜ? だから協力者の誰かが裏切ったとしても、お前は襲われない……はずだ。安心しとけ」
「……はい」
「適当に人兎あしらって生きてりゃ、そのうち誰かが『ウサギ』を殺して、終わらせてくれるだろ」
誰かが、ということは、甲斐崎さんは『ウサギ』を殺す気がないのだろうか。と考えて、私は首を小さく横に振った。甲斐崎さんだけじゃない。誰だって、人を殺したくなんてないと思う。例え死なない世界だったとしても。私は、絶対に誰かに刃を立てることなんて、出来ない。
小さく頷いて、私は大きな口でクレープに食いつく。甘い味が口いっぱいに広がって、頬が自然と緩んだ。
◆
朝十時頃に蘇芳と待宵駅で合流して、それから数時間経った今、僕達は彼女のオススメだというカフェにいた。彼女が僕を誘ってきた理由も気になるが、それよりも僕はここ最近ずっと菖蒲の心配ばかりしている。
事情を知ってから、放っておけなくなったのだ。あれから夜は浅葱と三人で訓練のようなことをしていたが、菖蒲は暗い顔を一切見せていない。それは良いことなのだろうが、一人で抱え込んでいないか心配になる。
僕はイチゴのムースケーキをつつきながら、ふと浅葱の顔を思い浮かべた。菖蒲のことばかり気にかけていたせいで、最近浅葱の方をあまり見ていない気がする。今浅葱は何をしているだろうか。休日だから、家でだらだらしているのかな、なんて考えていると、眼前にフォークが突きつけられた。
「呉羽先輩? もしかして他の女のことでも考えてたんですか? デート中ですよ?」
「……とりあえず、君の事情とやらをとっとと話して欲しいんだけど」
「うわー……動揺も謝罪もしてくれないなんて、あたしへの好感度絶対低いわ……」
独り言のつもりだったのだろう。しかし独り言にしては声が大きかったから、もちろん僕の耳に届いてきていた。呆れて眼を細め、彼女を一瞥する。
「君、好きでもないのによくそんなこと言いまくれるよね」
僕はケーキを一口食べて、目を瞠った。美味しい。自然と口が綻ぶ。他にも美味しそうなケーキがメニューに載っていたから、また今度来ようと思う。
食べることに夢中になっていた僕に、再びフォークが向けられた。それが充分凶器に成り得るのだと分かっているのだろうか。
顔を上げると、真っ直ぐこちらを見ていた彼女と視線が交わる。
「あたしがもし本当に呉羽先輩を好きで、付き合いたいって言ったらどうします?」
「……付き合えないよ。出会ったばかりなんだから」
「あたしは、ずっと見てきましたけどね」
「え?」
声も、表情も、真剣そのもの。出会ってから、という意味であることは間違いないだろうが、それでも彼女と過ごした時間は二十四時間にも満たないはずだ。僕が黙考していると、蘇芳が真面目に考えている僕を馬鹿にするように笑った。
「もちろん、冗談ですよ。ストーカーじゃあるまいし……ってそうだ、ストーカーです」
「ストーカーじゃないって言ったり、ストーカーだって言ったり、どっちなのさ?」
「違うんですよ、ストーカーは、あたしが言った事情のことです」
蘇芳のフォークがチョコレートケーキの上の苺に刺さる。それを口に含んで咀嚼しながら喋ろうとするから、注意してやった。
「喋るか食べるかどっちかにしなよ」
口がへの字に曲げられたが、食べながら喋るということはやめてくれたようだ。僕はもう食べるものが無くなってしまったため、コーヒーを喉に流し込んだ。
「最近、学校帰りとか、ストーキングされてる気がするんですよ」
「へえ、女子中学生は不審者に狙われやすいだろうから気を付けてね」
「ほんと呉羽先輩冷えっ冷えですよね、今まで冷凍庫にぶちこまれてたんですか?」
「……不審者じゃなければ、クラスメートとかじゃない? もしかしたら能力者って可能性もあるね。ああ……能力者を捕まえている組織の可能性もあるか」
今まですっかり忘れていたが、そんな組織があると東雲が言っていた。警察みたいなものなのだろうか。僕は普通の世界で能力を使うことが滅多にないから、世話になることはないと思う。蘇芳が日常的に能力を使っているとは考えられないが、もしそうならこの可能性が一番高い。
などと思考を巡らせていたら、蘇芳がつまらなそうに嘆息を漏らした。
「あたしの冷凍庫発言にはスルーですか」
「真面目に考えてるのになんで不機嫌そうなんだよ」
「ストーカー捕まえてやる、とか、僕が守ってやるよ、とか、これから登下校一緒にしよう、とか言ってくれる呉羽先輩を想像していたのに」
「へえ。で、用件ってそれだけ?」
もっと何か深刻な事情でもあるのかと思ったが、蘇芳はあっさりと頷いた。
「そうですね、このことを相談したかったのと、ただデートしたかっただけです。というか、会うのに真面目な理由がないといけないんですか? 遊びたいから、話したいから、一緒に笑いたいからってだけじゃ、駄目なんですか?」
苛立っているのか、その声付きは刺々しい。僕は気圧されるように、椅子の背もたれに背を預けた。
確かに、友人同士が会うのに深い理由などいらないと思う。それでもなにか事情があるのかもしれないと思うのは、彼女との関係がただの友人ではないからだ。協力者であり能力者であり、招かれた者である僕達が交わす言葉は、あの偽物の月の世界での話くらい。『ウサギ』やあの世界のことの情報を交換し合うことくらいだ、と思い込んでいた。
今一番大事にするべきなのは『日常』なのだ、と東雲が言っていたことを思い出す。僕の日常には、僕が思っている以上に偽物の世界が蔓延っているみたいだった。
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