第7話 俺は...

{職人視点)


俺は、旅をしている職人だ。

名前はない、生まれも分からない。


気が付いたら、孤児院で育ってられていた。


子供時代のオレは、何時もお腹を空かせていたよ。

孤児院では、食べるにも競争だ。

早く食べないと、誰かに自分の食事を盗られてしまうからだ。


だからか、孤児院で食べた物の、味を覚えてはいなかった。

記憶にあるのは、飢えと競争だけだ。


そんなオレも、孤児院で、10歳になった時に、転機が訪れた。

孤児院に、皮職人が来ていたのだった。皮職人は徒弟とていを数人探していた。


徒弟とは、住み込みで親方の弟子を2~8年程して、親方が認めたら独立できる。

徒弟制度の一環で存在していた。


その中の1人に、俺は選ばれたのだ、理由は手先が器用だったから。

それだけで、徒弟に選ばれた、この先、手に職を持てば、食って行ける。


手に職を持てる機会が、孤児院では無いに等しいのだ。

これは、神様がくれた、俺の最初で最後の幸運かもしれない。


親方の下で励んで、早く独立したい。

数年間は、そればっかりを考えて、働いていた。


気が付けば、俺も15歳になっている。

孤児院を出てから、5年の歳月が過ぎ去っていた。


そして、皮職人としての腕も、それなり良かった。

親方も俺に目をかけてくれ、メキメキと腕を伸ばして言った。


俺の親方は、若い時に旅をしながら、皮職人としての腕を磨いたそうだ。

それに習い、俺も近々、親方の下を離れることになった。


最終試験には合格していたので、親方にはなれるのだが、

このまま店を持っても、直ぐに潰すだけだと、親方に言われた。

一人前になりたければ、旅をして腕を磨いて来い。


親方の考えた、正しいと思う。

世界には、俺の扱ったことのない皮が、沢山有るのだから。

親方は、それを知っているのだ。


だから俺は、旅をする。



┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈



{親方職人視点}


孤児院で拾ってきた、徒弟の中で、25番が一番手先が器用だった

何を教えても、直ぐに覚えてしまうのだ。


オレが若い頃、旅をしていた時に覚えた、大工仕事も覚えてしまった。

皮職人だけでなく、大工仕事もこなせる、そんな奴は一握りだろう。


こいつは、こんな小さな町で、生涯を終わらせるのは勿体無かった。

だから、時には厳しくし、良い物が出来た時には、褒めてやった。


そんな奴が、最終試験の品物を、オレに持ってきた時は、

正直に言ったら、驚いたよ。まさか、こんなに早くに、

オレの元を離れるなんってな、思いもしなかった。


でも弟子は、育つ物だ。ここは笑顔で送り出してあげないと。

オレも歩んだ道なのだから、笑顔で....うっううう....


餞別に、仕事道具を分けて渡してやった。

皮職人の仕事道具だけだけどな。大工仕事の道具は、

仕事をするのなら、自分で揃えるべきだ。


それと、業物職人ギルドの登録だ。

これが、本来の餞別である。

道具の餞別は、特別な時にしかしない。


しっかりと腕を鍛えて来い。

体には気をつけろよ。

たまには、顔を見せに来いよ。


.......


25番は、何をしてるんだろうな?



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{レオン視点}


俺に名前が出来た。

アンジェリク・ジェローム名前を、俺にくれた人物だ。


アンジェが、魔獣に襲われてたので、助けたら、

名前がない、俺の為に、名前を付けてくれた。


最初は、名前など必要ないと、思っていたのだが、

名前で呼ばれると、何故か嬉しくなってしまう。

この歳になるまで、名前がなかったからなのか、

凄く名前で、呼んでもらいたい。


アンジェも俺と一緒で、目的地が無く旅をしてるようだ。

一緒に旅をしようと言われた時は、驚いて頭が真っ白になったよ。


女性と接する機会なんって、今までで多くないのだから、

接し方が、わからない。困ってるのだが。


当の本人は、気にしてないようだ。

俺は今年で、17歳になるのに、アンジェは恥ずかしくないのだろうか?

年頃の男女が、一緒に旅をするのだ。色々と問題もあるだろう。


寝る場所もそうだが、着替えや、お風呂、生活していたら、

色々な場所で、俺が側にいるのだ。困らないはずがない。

どうしたら。いいものか悩むよ。


それと、俺が年下と言う事は、伏せておいた方が、良さそうである。

下手に言うと、弟扱いされて、尻に敷かれそうだからだ。

それだけは避けたい、何としてでも。


同い年と言って他方が、今後の為にもよな?

アンジェの性格からしたら、それが良いだろう。


行き先だって、俺も決めたい。

だから、対等な立場でいたいのである。


この先の事は、どうなるか分からないけど、

住み易い大きな街を見つけて、永住したいな。

そこで、お店を開いて、幸せな家庭を築きたい。


アンジェと結婚?ないわ~死んでもないわ~!

もっと、お淑やか女性と結婚したい。



先の事は、何も決まってない。

決められるはずも無い。


気長に旅を、続けるさ~!

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