夏休み①
「今日は何する?」
僕と中野くんは夏休みのプール開放の帰りに石蹴りをしながら今日の計画を立てていた。
「やっぱり例の病気の研究でしょ〜」
「えーまたー?」
「いいじゃん、ゲームのカセット貸してあげるから!お願い!」
「わかったわかった、でもちょっとだけね」
中野くんは一つのことに没頭すると中々抜け出せないんだ。でも夢中になれることがあるっていいよね。
僕は近くにあった石を蹴るとそのまままっ直線に走った。
「あ、待ってーーー!」
中野君は僕の後を追いかけてきた。
僕たちはそのまま走りながら僕の家に向かった。
「やっぱり淳ちゃんは早いなあ」
中野くんはバテながら言った。
「まあ元水泳選手なのでっ」
そうそう。僕実は小五のとき、日本一を争うくらいの選手だったんだ。結局決勝戦で負けっちゃって二位になったけど皆に自慢できる実績。でも途中から練習のし過ぎで肩を痛めて水泳やめたんだ。
「誰もいないから好きなよーに使っていいよ〜」
「お!淳ちゃんまだこのゲーム遊んでるんだ〜。僕がオススメしたやつ!」
「そうそう、これ意外と面白くてね。主人公のケンタがレベルアップして今もうレベ
ル67なんだぜ」
「え、それ僕よりもすごいやん!淳ちゃん最強だな。」
僕はキンキンに冷えた麦茶を中野くんにも注いであげると二人で一気飲みした。
頭がズキーンと痛くなる。
「さあ研究始めちゃいますう?」
中野君が興奮気味に言った。なんだか僕もやる気になってきちゃった。
僕はノートと鉛筆を部屋から持ってくると、中野くんはまだ中学生なのに自分専用のマックブックを起動させていた。中野くんはお金持ちだし、賢くて本当にすごいなって思う。
こんな僕とつるんでていいのかな。将来はプログラマーになりたいんだって。
プログラマー?なんじゃそれ。
中野君は僕の知らないことばかり知っていて多分学校一の物知りだ。クイズ番組の雑学部門で優勝できそうなくらいの。
「このイギリス人の少女も致死性家族性不眠症にかかって亡くなっちゃたらしい
よ。」
「じゃあこの病気は大人だけじゃないんだね。」
僕は新しい発見を手書きでノートに、中野君はタイピングでパソコンに打っていった。
気がつくと時計の針は五時を示していた。
僕たちは研究を区切りの良いところで終わらせるとソファーで二人でくつろぎながらテレビを見た。こうやってのんびり過ごすのが本当に楽しい。
「あ、そういえば淳ちゃん今公開中のトリプル・ディーって映画観た?」
体勢を整えながら中野くんが言った。
「なにそれ、観てない。どんな内容?」
「んー簡単に言うとある殿様が世界征服をしたくてどうしたらできるかの会議の内容
をドラマチックに描いた映画。」
「...」
「どうしたの?」
「...それなんで題名トリプル・ディーなの?」
「ね」
「...」
「...」
「あ、中野くんでもそこは知らないんだ。」
「うん。」
なんだかこの変な空気が面白くて二人で笑った。そして中野くんが切り出した。
「まあ、とりあえず明日あたりにでも観に行く?」
「いいよー」
明日もまた楽しくなりそうだ。
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