第4話

「オラァ! どうしたどうしたあ!? 掛かってこんけえ! おれの二刀、斬らせてる限りあ隙なんぞ見せたりせんぞう? おまんの実力、おれにも早く見せてくりょうし、でねえと――死んじまうぜえ!!」


 二刀流。両手にそれぞれ剣を持ち、片方は防御を、片方は攻撃を、それぞれの役割を持たせた攻防一体の剣。しかし真の攻防一体とは、大五郎の剣のように攻めに転ずればそのどちらもが敵に牙を剥き苛烈な攻撃を、しかし敵の反撃は二刀の内そのどちらかが必ず目を光らせており行うことが叶わない。


 髑髏どくろの仮面の”彼”は大五郎の怒涛の攻めを避け、避け切れないものを身に纏うライダースに装着したプロテクターを使い防ぎ、何とか耐え忍んでいた。大五郎の剣には本当に隙が無いのか、それを知る為に彼は防戦一方を買って出たが、どうやら今のままでは本当に突破は困難なようである。


 普段は手甲として機能しているプロテクターは拳を強く握り込むとグローブの伸縮によって拳の全面へと展開しナックルダスター、つまりメリケンサックとなる。そうして彼は大五郎が振り抜いた右の剣を躱した後、すかさず鉄拳を突き出した。


(――!)


「甘え!!」


 張り巡らされた剣筋の隙間を見い出し、そこを的確に突いた筈の彼の拳は、しかし火花を散らし大五郎の懐あと一歩というところで音を立てて弾かれてしまった。大きく弾き出される腕に引っ張られた彼はたじろぎ、そこにまた大五郎の剣が襲う。すぐに彼は体勢を立て直し剣を躱し、防いで行く。事態はまた振り出し。


(こいつの言う通り、調子に乗ると強いタイプ。ならば、是非も無い。攻勢に打って出る他に無いか)


 顔面を狙った突きを間に割り込ませた手甲によって逸らし、ボルト部と刀身が擦れる際の火花の中で彼はいよいよ攻めに転じる覚悟を決めた。だが彼の攻撃は明らかに常人を越えた身体能力を有している大五郎の剣の前に通じない。では、届かない。


 出来る事ならば使用したくないと、彼はそう思いながらも状況がそれを許さない。使用できるのは二回、薬の量は最小。効果の継続時間は投薬量により変化する。今彼が所有している薬の量では一回の投薬で凡そ十分じゅっぷん持つかどうか。


 充分。彼は意を決し右の奥歯を強く噛み締めた。ぷちりと彼にしか聴こえないような小さな音と共に彼の口腔に苦みが広がるが、それはすぐに感じなくなる。そして次に彼の体がその内側から熱を彼に感じさせる。


 ――今こそ髑髏の仮面の彼の肉体は本来の力を取り戻した。

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