『自由』の無い国

九十九猿

オープニング

 家畜、奴隷なんて言葉では足りないだろう。何故なら彼らには役割があるのだから。食べられる為に生かされる。働く為に生かされる。それらは義務であり、彼らの生きる対価となる。けども、そこから逃げ出す自由が潰えてる訳ではない。リスクはあるといえどもその義務から離れ、自由という名の自分の命と行動の責任を得ることもあるだろう。

 ここで私は一つ疑問に思うのだ、生かされる為だけに、生かされているこの世界の人間は彼ら未満ではないかと__


 世界は2534年、そこは人類の存続の為に人類が自らAIに支配された時代だ。

 2200年代にに環境破壊によって、人類が5割まで減ったことがある。いわゆる「人工の地獄アーテフィシャル・ヘル」といわれる出来事だ。人間達だけでは解決が困難と判断し、あらゆる解決法を探った。その中で環境問題を解決したのがAIだった。

そこからAI開発は急激な進歩を見せ、中には人間以上の思考を持ち、感情すらも持ち得るようなものも開発された。そして過去環境問題を解決した功績から、各首脳陣はAIを評価し、徐々に政治に取り入れていった。

 その中政治に関わるようなAIなどの重要なAIを統括するようなAIが2200年代後半に産まれた。その名は「NOAHノア

 そして各国の首脳陣達は「人工の地獄」のような事件を二度と起すまい、とAIとNOAHに人類の存続を第一に命じた。AI達はその使命を第一に置き、人類を管理し始めた。表向きは首脳陣がAIを有効活用する、という名目のもとに。


 故に、私達は生かされる為に、生かされるのだ。


 もちろん、AIの支配に反発した人もいる。だがAI達は、反発するような者は人類の存続を妨げる、と判断し排除してきた。それだけではなくAI達に逆らう、という思考をしないように教育にも手を出し始めた。

 それでも人間は変わらない。変えられない。自由を奪われ、支配されるのに耐えられない人達がいる。自分の体が自分のものでは無い感覚に耐えられない人達がいる。もちろん今は表向きには動けない。でも、来たる日に向けて力を蓄えている。それが私達のテログループ「自由の無い国」だ。


 だから、これは私達が「自由」を無くす為の物語なのだ。

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