第3話  ライプツィヒ預金

若いころから私は株を買っている。

きっかけは、会社に出入りしていた証券の営業さんと年が近く、一緒に遊んだりして親しくなったこと。同僚と3人で、一緒に飲み食いしたものだ、今でいう女子会? そして彼女に勧められて、月一万円で投資信託をはじめた。

時はバブル絶頂期。不動産も株もどんどん上がっていった。マンションを買った人が、半年で500万も値上がりしたと言っていた記憶が甦る。

でも私が儲かった記憶はない。投資信託で良い結果を出したことが、ほぼないんだからあの頃もきっとそうだった。


その証券の営業さんは退職され、私も職場を変わったけれど、その証券会社とはお付合いが今も続いている。担当者は何度か変わった。

長い期間少額投資を繰り返しているのだけど、大儲けしたことより損を出したことのほうが記憶に残っているなぜか。

内紛の起きかけた会社の株を買って大変な思いをしたのを機に、小儲けでコツコツやっている。担当者もそのように勧めてくれる。

トータルでみれば、普通に銀行や郵便局に預けたのと大して変わりないかなあと思う。ただ、良かったのは、何となく株をやっていると消費の感覚に近くなり、満足感が得られることかなあ。ああ損したなあ儲かったなあ、と思うのは一瞬だけど、それでちょっとした意義を感じて過ぎていった時間はたくさんあった。


クラシック愛好家生活に入ってからは、配当をそっくりそのまま貯めることにした。ライプツィヒに行くための蓄えとして。だから、株価の上がり下がりより、配当の何千円かにワクワクする。株の売り買いの額より、何千円かのほうがリアリティもある。A社は1,110円、B社は5,320円などなど、ね。ぼちぼち前年の期末配当がやってくる!

今までの、ライプツィヒ預金となった配当を合計したら幾らになるのか。幾らでもワクワクが入っている分、価値がある。




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