03.
side→
「
ノックをして、
「おう、ようやく来たか。おっ!
「……冗談じゃない!…………おい、離れろ」
「……す、すみません…………」
「
「…………誰が照れ隠しだ、くそっ」
「……で、玲ちゃん話って?」
「……それで呼ぶなだべ。お前がそれで呼ぶと、なんかこうぞわぞわっとするべ!」
「……じゃあ、雛」
「それは傷付くべ!」
「……じゃあ、鼻布」
「それはもっと傷付く!……もういいべ…………。それで話っていうのは、
「契約させればいいんでしょう?」
「……そうなんだけど、今ここにあるのが組紐しかないんだべ。今んとこ新しく作る予定もねーし……」
「……組紐?でもアレって…………」
「……契約は俺やらねぇぞ」
先に部屋を出て行ってしまう、
「……
「さぁ?私に聞かれても困るわ。……私たちが使ってる専用の武器には、全て付喪神が宿ってるの。だから、その武器を使うには武器との契約が必要になる。だけど、その組紐には何故か魂が宿ってな「それ……知ってる……」」
「…………俺……使ってた……?…………違う……違う…………、それ……俺……だ……」
「「えっ!?」」
「だって……
困惑する
「……うん。俺は
呆れたと言わんばかりの顔で、
「……呆れた……。契約もしてないのに
「年月経ちすぎて、自分が何者だったかも忘れてたというか…………」
「……
本来、武器と契約を結ぶ際は色々と手順が必要だ。この拠点に集められた武器には、全て付喪神が宿っている。
「
「ああ…………。
「…………ッ痛」
怖気づいている
side→
意識が遠のいていく。目を開けると、そこは真っ暗な闇。地面はあたり一面水面なのか、歩くたびに水の音がする。
「……ここは…………、
――赤 赤 赤 赤 赤 赤 赤 赤 赤 赤 赤 赤 赤 赤 赤 赤 赤 赤 赤 赤 赤 赤 赤
(…………もう……やめてくれ……)
吐き気がこみ上げてくる。息ができない。気がおかしくなりそうだ。どこを見ても、あたりは死体の山。老若男女は関係ない。肉を切り裂く度に浴びる、血の生暖かさが心地いい……。
『一人残ラズ、殺シテヤル。マダ、殺シ足リナイ…………モット……モット…………血ヲ 寄越セ…………。ナァ…………オ前ノ血ハ、美味イカナ……?』
頭の中に言葉が、感情が、流れ込んでくる。
「……っ、やめろ!見たく……ない…………。俺は……っ、俺は…………!」
一本の組紐――
飲まれそうになった意識を、どうにか引き戻す。涙が止まらない。肩でどうにか息をしながら、
「…………
純粋ともいえる殺戮衝動だけで主の精神を喰らい、殺し続けた。
――血に飢えた獣のように。全てを焼き尽くす、地獄の炎のように。それが
「そうだ。オレは、全てを無に還す存在として、生を受けた。オレは血を吸って、更に強くなる。それがオレだ。オレの本当の名は、
「…………どうかな……、俺にはよくわからない。だけど、一つだけわかったことがあるよ……」
さっきの光景を思い出すだけで、再び込み上げてくる吐き気をなんとか押し殺しながら、
「たとえ、
「…………っ」
「…………お前は……とんだ大馬鹿者だな」
そう小さく
「…………
「そう、これが俺の本当の姿。記憶取り戻したら、一緒に容姿も元通りってわけ」
「……そうな…………っ!?」
不意に引き寄せられて、唇を塞がれる。
「…………っ、んん!?」
驚いて目を見開いたまま反抗も出来ずにいると、ようやく唇が離される。
「……っな……、なにを……」
顔を真っ赤して、
「契約」
「…………へ?」
「だから、契約」
なんでも武器である
「だからっ!なんで…………」
文句の一つでも言ってやろうと、口を開くがそれは叶わず、突然あたたかな光に包まれる。眩しさに目を閉じてしまい、再び目を開けると
side→
契約中意識のない
契約時間は人によって様々だ。そのため、契約中は成功を祈るくらいしか出来ない。二時間ほど経った頃だろうか。ようやく
「あら、おかえり。契約は無事出来たみたいね」
「……誰」
この状況だ。十中八九、
「
「それが、本来の姿なわけ?」
「そーゆーこと」
この二人に関しては、いまだに謎が多そうだと、思わず頭を抱えていると、
「…………
「……は?…………キス……?」
「…………契約印は別に、どこでも構わないはずだけど」
「……っな!?」
絶句する
「契約印は一般人にも見えてしまうから、出来るだけ見えにくいところにするのが普通。そういう意味で言えば、口の中なんて誰も見ない絶好の場所だと思うわよ」
まだ納得がいかないのか、不服そうな
「それより、今日はもう疲れたんじゃない?明日は学校もないし、ゆっくり休むといいわ」
side→
「おやすみ」
「……おやすみ……なさい」
久しぶりに言われた『おやすみ』の一言。両親を亡くしてから親戚に引き取られたが、いないも同然に扱われて来た、数年間。それは素直に嬉しい。だが、やはり気になるのは…………。
(…………二回もキス……。しかも、両方男…………)
ちなみに、あの時の
(…………あの時どうして、
分かっているのに、考え出したらキリがなかった。
『……
「……なんでそうなるんだよ!」
けらけらと笑っている
『……っ……痛!』
感覚の共有というのは、こういう時に便利だなと思う。
side→
あれから
「順調そうだな」
「……実戦で戦えるようになるには、もう少しかかりそうよ」
「
「……おー。
「……ええ……、それは……もう……。全身筋肉痛で…………」
side→
壁際に腰を下ろすと、隣に
(…………って……特に、
ただちょっとあの晩のキスを一度考えだしたら、頭から離れなくなってしまっただけで。
side→
俺が見込んだ
一通り
(……何だあの動き…………)
「
「……なに」
「なあ、
「ええ……。時々、ありえない反射するのよね。最初は、
「…………」
「……
「……はい!ありがとうございます」
此の命、限りあるほどに美しい 澪汰 @crazycat1140
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