02.
side→
あの
英国から大量の武器を裏輸入する代わりに、大量の麻薬を同じく裏輸出しようとしていたのだ。それも今回だけではなく、前々から秘密裏に行われてきていたらしい。そのほかにも、様々な悪行を働いているそうだ。そしてその話はついにエリザベス女王の耳にも入り、今回日本側の危険因子排除の命が下ったのだ。
(……切り裂き魔ねぇ……。よくもまあ、こんなに派手に……。毎回毎回、後始末大変なのよまったく……)
「…………!」
(……人の気配……、まだ残党が……?)
己の武器である、大鉄扇を構え神経を集中させる。向こうもこちらに気付いたようで、コンテナ一つ隔てて互いに飛び出すタイミングをうかがう。一つ分かっているのは、このコンテナの向こうにいる相手は、あの切り裂き魔ではないということだ。あの切り裂き魔ならば、きっといちいち間合いなど取らず、短期決戦を挑んでくるだろうと思うからだ。そしてほぼ同時に飛び出して、お互いを認識して驚きの声を上げる。
「……っどうして!?」
「……
武器の構えを解かず、お互い顔を見合わせる。
「……私と
エレナの言葉に嘘がないと分かると、ようやく
「……お、お前…………一ノ
「貴方……Gespenstだったのね。全然気付かなかった……。ほんと、人は見かけによらないわね。あぁ……、安心して。私も貴方たちと同業者だから。ついでに言うと、敵でもない」
『……
「…………。
そう言うと、
『……そんなわけで、いやぁ……意外っつうか、まさかだな。んで、さっきから気になってんだけど、その金髪のねーちゃんは?』
「あたしはサラ。三代目Gespenst ドライ。けど、今は
「……失礼。私は一ノ
「CROWN……今、荒れてるって聞いたわ。Abgrundとの交戦に、反逆部隊が……」
『その反逆部隊っつーのは、俺らのことだな。Abgrundとの交戦で結構な損害が出たとかで、ここ最近は大人しくしてるみたいだけど』
「マルクが……CROWNを自分の支配下に置くって言ってたよ……」
「……なるほど、そういうこと…………」
Abgrund――日本語では〝奈落〟の意味を持つ、独語だ。
Abgrundはドイツで絶大な勢力を誇っているマフィア組織だ。
そんな彼らが英国お抱えマフィアを支配下に置こうとしている。万が一にCROWNがAbgrundの手に落ちるようなことになれば、それはやがて表立っての戦争になるのだろう。国家軍事力で言えば、独国よりも英国が勝っているはずだ。その実力差は、私たちマフィア界隈でも同じだったはずだ。それでもCROWNが防戦一方ということは、独国が力をつけたのか、Abgrundが相当の力を持っているのか。どちらにせよ、このまま放っておくわけにはいかないようだ。
「それにしても……、お前らがCROWNだったなんてな。さすが、イギリス王室お抱えってとこか?」
「それは、貴方たちもね。ねえ……、私たちまた会える?」
「死ななければ、ね」
「まだ死ぬ気はないわよ」
『同じく』
互いにハイタッチをして別れる。いつか、また会えると信じて――
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