このゲームは
外はもう暗い。そして、葵はいない。そう、葵はあの世界にいるんだ。僕は、葵を取り戻すんだ。そのためには、手段なんか選んではダメなんだ。
もう二度と葵を失わないために。
あれ?僕、葵のこと、一度も失ってないはずなのに。まぁ、いいや、例え、友達さえも犠牲にしてでも、葵を二度と失ってはいけない。そう、僕は思う。
「薫、薫、このゲームはどういうゲームなんだ?」
僕は今、状況を一番知ってると思われる薫を揺すり起こす。
「う、翔太?あ、あ、あ、俺は、俺は、俺は、凛ちゃんを、凛ちゃんをまた、助けられなかったんだ。まただ、まただ、一体俺は何回チャンスを無駄にすれば、すればいいんだ。」
「薫、薫、しっかりしろ。凛ちゃん?って誰なんだ?さっきの女の子がどうしたって言うんだよ?」
「お、お前、やっぱり、凛ちゃんを忘れたのかよ。なんで、みんな、みんな、凛ちゃんのことを忘れるだよ。凛ちゃんは確かに存在したんだから。なんで、なんで、」
薫の咽び泣く声だけが、部屋に響く。だが、僕は進まなければいけない。
「薫、こっちを向け。僕の言ってることに答えてくれ。」
「う、う、」
「薫だって凛ちゃんのこと救いたいんだよな。もう一度聞く、このゲームはどういうゲームなんだ?」
「あ、あ、あ、」
僕はしびれを切らして、
「しっかりしろ、いい加減にしろ。お前は未来を向かないのか!凛ちゃんを助けたいじゃないのかよ!」
そう言って、薫の顔を平手打ちする。
「しょうた?」
キョトンとした顔でこっちを向く。そのあと、
「俺は、俺は、凛ちゃんに何を言われようと凛ちゃんを助けに行く。そう、決めたんだもんな。取り乱して、すまん。このゲームがどういうゲームか知ってること話すよ。」
そこからは薫は淡々と話始めた。
「このゲームは普通の人にとってはただのスマホゲームだ。ただ、選ばれた組にとっては自分の命を賭けて強くならないといけない、デスゲームさ。」
(デスゲーム....)
「選ばれた組ってのは正式名称じゃない。だれがいつから言い始めたらかはわからない、でもいつしかそれは定着したんだ。」
「選ばれた組は実際にゲームに入ってプレイすることができる。そして、ゲームの能力が現実でも使える。」
「これだけ聞くといいことづくしに思えるだろ?でもこれはデスゲームだ。ゲームで死んだらこの世界から存在が消える。誰からも忘れられる。」
(えっ?)
「ただそれだけだ。」
それを聞いた後、僕は何も言えなかった。そんなゲームで強くならなくてはならない。もっと楽だと思ってた。ゲームだから。呆然とする僕に薫は
「明日、学校で対策をたてよう。このゲームは現実の体調とかも生死に直結する。今日は寝ろ。」
「でも、葵が、」
「いいから、今日は疲れてるはずだ。寝てろ。」
その言葉を聞いてから布団に向かって僕は無意識に歩いていた。もう一度、ゲームに入らなければと思いつつも。その後はもう記憶がない。
目覚ましがなって目が覚めた。昨日のは夢のような、現実のような。でも、あまりにも非現実すぎて夢のような気がする。
そして、今日は始業式。学校にいかなければ。支度をして、家を出る。いつもなら、葵が僕の家にインターホンを鳴らしにくるが、音がしない。まさかと思い、葵の家のインターホンを鳴らす。
「はい、あら、翔太君じゃない。」
中から葵のお母さんの声が聴こえる。
「朝早くにすいません、葵、起きてますか?」
「えっと、ごめんなさい。葵って誰のこと?」
まさかと思ったが葵の存在がない。昨日のは夢じゃない。
「すいません、朝早くからありがとうございます。」
いつまでもここにいては、事態は変わらない。薫に会わなければ。
足を早めて、学校に向かう。
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