第4話 

20日間という期間は、途方もなく長く感じられたのだった。

いや、どうだろう。長い期間ではあるんだろうけど、ここまで長いともう駄目なんじゃないかという気持ちが十分立たないうちに湧き上がってくる。

「シャキッとしなさい。まだ、一か月もたってないわよ。」

汚れが目立ちやすい白い服に赤い鎖のような装飾が華美な妖精と魔族のハーフ少女が前を先導して歩きながら、こちらを横目で見やりながらカツを入れてくるのだった。

「くっそ!きっつ!もう駄目!はっはっ…」

そう。ここまでは、ずっと険しい獣道やら、足場の悪い川などを横断してきているのだ。限界だった。食料は、この森特有の甘いキイチゴと時々流れている川の水やらだ。たまに、現れる魔物の中でも食べられる奴は、ローズマローが、倒しては、味がなくても比較的食べやすい部位を食べるのみ。

ゆとりの国の王子さまは、しにそうだ。

「あーはいはい。何回もきいたから、それ。ほんと人族オーグルって貧弱よね。しかも、口がうまい。ていうか、息するように嘘を吐くわ。」

人族オーグルは、この世界で一番数が多く、大陸「キョウ」に住んでいる。なんでも、京は大きな一つと小さな島がそれはもうぎゅうぎゅうに重なっている変なばしょだとか。

「もう少しもう少しって、ぜんぜんつかないんだモーン」

「また幼児退行!?何回目よもう!あんたなんか見捨てればよかったと心底後悔するわ。まって、もうほんとに目の前なんだってば。ほら、あれ!」

ローズマローが駆けていった先は、森が終わっており、そこからは、なだらかな坂になった草と砂場が混じる開けたところだった。

「ま、まさか!?あれか!」

「そ、あれが大陸「ムラサキ」唯一のセーフポイント「大樹ユーシェル」」

「あの雲まである木って、ゲームじゃん」

「あれは、大樹ユーシェルんで、もって、国の名前も大樹ユーシェル

「いや、もう聞いたから・・・っまいいや、早く行こうぜ」

「その前に、憑依させて頂戴、じゃないと入れないかも」

憑依完了。三週間前よりは、憑依もうまくなり、髪は、セミロングで茶髪に、瞳の模様は、魔族特有の赤い花の虹彩に変わる。

事前の打ち合わせ。

「国に入る前に、憑依を変える必要があるわ。」

「ん?」

「妖精と魔族のハーフの特徴は、赤い瞳と黒い髪なの。」

「ふむふむ。んで、どうすんの?」

「あなたにも私と同じイメージをもってもらわないと成功しないのよ。人族のようにすることの方が、早いだろうけど…」

「んだな。その方がおらもやりやすいだ~」

「ふざけないで。ハゲもやろうと思えばできるのよ?」

「なるほどなるほど。つまり、人族にすると紫の森を抜けてくるのは不自然ということだな!」

「まったく・・・察しだけは、いいようね。そう。大陸が離れすぎた人族がこの地に来るのは、海からの方が早いから基本的に森を抜けてくるのは、妖精かゲールそれとこの大陸の原住民であるロタね。」

「妖精族になるのが一番だな。まあ、魔族でもおかしくないとは、思うんだが?いやなんだろ」

「うぅ。でも魔族の方が、交流は、図りやすいわ。大樹では、魔族がロタの次に多いから」

「無理しなくても・・・」

「無理じゃない!」

「・・・わかった。」

あーだこーだあって。現在。魔族風な姿に収まっているわけだ。

ちなみに設定は、魔族の採取ハンターということになっている。妖精族の母親から教えられた薬草の種類を記憶しているローズマローは、道中様々な薬草を摘みとっては、自身の背嚢に収集していたのだった。

「なんで、迫害されているのかは、なんとなく察しはついているんだけどさ、人間もハブられてたりしないよな?」

『少なからず、その傾向はあるけど、大樹のロタも魔族も基本的には、人族に理解のある人達ばかりだから大丈夫よ。ま、大樹は、王制度で成り立っているんだけど、そこの官僚の中には、人族がいるらしいし』

頭の中に響く声は、見た目とは裏腹な知識の底が見れないようだ。

「ローズは、何でも知ってるな。」

『あなたが知らなさすぎるのよ。記憶喪失なんじゃない?』

「はは、わらえない。」

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