第3話因果
「なるほどね。つまりは、あなたがこの世界に来た理由も意味も話されていないわけね。」
目の前のコスプレイヤーさんは、ちゃんとこちらの話を聞いていたのだろうか。
「いやな、魔王とか勇者とか、神様的な奴らを救済するらしいんだわ。ここまでは、オーケー?」
バカにしているわけではないが、もう一度説明できるところからでも成り行きを説明する必要性がある。
「だから、それで、つまり、要するに、助けるってことしかわかってないじゃない。サポートするって言ってたはずの大天使様とは、連絡がとれずに転移した先は、私がいないと死んでるはずの空だったわけだし」
「ぬう・・・」押し黙って。
ところどころ、口をはさみたくなるような内容だったが、おおむねその通りなのでっやっぱり否定しきれない。
「まぁそこまでは、『不幸』で片づけてもいいレベルね。問題は、別の世界で私とうり二つな私を助けてくれたことね。」
「そうだな、面白いことにさっきローズも死にそうだったらしいからな。案外、向こうとこっちは、連動しているのかもしれないな。」
話は、こうだ。
ローズマローは、妖精と魔族という種族のハーフであり、そのことから故郷を追われ、国を追われていたところ、先ほどの蛇(キョウカイという魔物)に食われそうになり危機一髪の瞬間、浮遊岩(フォルス)という天空の城が
「案外ね。私は、あなたに礼を言うべきなのかしら、それともあなたが私にお礼を言うべきなのかしら?」
「いやなに、ローズは、勝手に助かっただけだし、俺が助けたのはあっちの世界の君に似た誰かだからさ。ただ、ありがとう。ほんと、さっきは危なかった。」
「まったく素直にお礼も言えないなんて、なんて教育を受けてたのかしらね。」
「素直に、礼を受け取らないなんてなんて育ちをしてきたんだかね。」
「なんですって!?」
「なんだよっ!」
売り言葉に買い言葉。そんな言葉が脳裏をよぎるほどにはこの会話が楽しいものだと実感している。つくづくローズマローという少女がどれほどの器量の持ち主か知らされる。反対に俺は、どれだけ器が小さいんだかな。
「ふう・・・それより、ここはどこだ?オーグターのどのあたりなんだ?」
「このあたりに、地名はないわ。ただ、オーグターは五つの大陸とひとつながりの海でできているわ。ここはその中でも一番人もすくなく魔物が多い大陸「
「じゃ、人がいる場所を目指したいんだが、どっちの方角かわかるか?」
「そうね。私は、よくてもあなたはこのままじゃまた死んじゃうもんね。こっちよ。」
歩き出す。
しばらくたって、小高い木の根を協力して乗り越える。
「いちいち、トゲがあるな。ことばに。それより、ローズマローは平気なのか?」
「なにが?・・・ああ、そうね。幸か不幸か契約のおかげで半分妖精の私はあなたに憑依できるから平気よ。」
「そう。なのか。ところで憑依って?」
しばらくは深い森が続くが、ローズマローは、迷わず進んでいくのだった。飛んできた方向に戻れば、小さな国があるので、そこを目指しているんだとか。
ローズマローは、魔族の多い大陸「
「憑依は、そのまま憑依よ。体験してみるといいわ。私の名前を心で呼んでみて」
「心で?」
振り返るローズマローに柔らかな春の風を感じる。
呼ぶ。するとローズマローの体が、きれいな赤と白の花びらに変わって俺の体に吸い込まれる。
「あれ、なんか体が軽い。すごいな。憑依!」
『でしょ。あーでも、副作用もあるわよ。体が女の子になっちゃてるはず。』
「あれ。声が頭に響いてる。すっげ!なにこれ!ってか、女の子!?確かに、なんか声が高いし、胸のあたりが窮屈だし、」
そういいながら近くの沢に身を乗り出して顔をのぞき込む。
そこには、見たことのある顔をした見たことのないケバイ髪の女がいた。
「ねーちゃんじゃん・・・!?」
『へぇ、あなたのお姉さんはずいぶん美人ね。髪色は、混ざっちゃったわね。あなたの茶色と私の黒髪、これは、これは汚い色ね』
「ずいぶんだな。ただ、初めのねーちゃんが美人なのは当然だ。なんたって、モデルだからな。」
『モデル?』
「そ。美人の中でも、スタイルもよくて、世渡り上手な人がなれる仕事さ。」
『モデルがどういう仕事かは知らないけれどきっとあなたの認識は、穿っているわね。』
少し、水を飲み、休憩し、キイチゴを食べたところで日が暮れかけたので、野宿をした。
ローズマローの魔法で、大きな木にうろを開け、枯れ枝を拾い集めて、魔法で火をつけ、暖を取り、交代で眠ることにした。
そうこうすること20日程
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