第2話 訳アリ恩赦
「ふぅ…。久しぶりの風呂は気持ちいいな〜。全く牢屋の中じゃ身動き出来なかったから身体が痛いのなんのって。」
監獄塔の中にあるバスルームでレオハルトはじっくりと湯船に浸かり身体を癒していた。
傷だらけの身体はすべて拷問によるものであった。しかし、みるみるその傷は消えていったのだった。
だが背中にあった大きな傷は他のものとは違って消えることなく残っていたのだった。
「流石だな。傷を癒す効果があるのか。」
ここの湯には傷を癒すという効能があった。入る人間は所長だけであり、看守たちは一切立ち入りを許されていないのだ。
しかし、今回は特別に入ること許されておりレオハルトはこうやって湯船に浸かっていたのだった。
「さてと…。そろそろあがりますか」
身体を起き上がらせて湯船から出ていった。そして脱衣場のある扉を開いた。
ガチャ…
「え?」
「お?」
扉を開けるとなんとそこにはタオルだけの全裸のクリスタルが立っていた。
もちろんレオハルトの方も裸であり、男の逞しいアレも見えてしまっていたのだった。
「な、な、な!!!」
「うん。やっぱりいい胸してるよな。」
うんうんと納得した表情でうなづいていた。
しかしクリスタルはタオルで箇所を隠して顔を真っ赤にしていた。
「この……変態がぁぁぁぁ!!!」
「ぬぁぁぁぁぁ!!!!!」
クリスタルにさんざんボコボコにされたレオハルトであったのだった…。
「さてと…どっから聞こうかな」
「あら?レオちゃんどうしてお風呂入ってきたのに身体ボロボロなの?」
所長室にてレオハルトにクリスタル、フリージアにゼルダがいた。
先程傷を癒す風呂に入ったはずのレオハルトが全く変わらずむしろ酷くなっていることに気になっていた。
「あぁ、気にするな…そこのバカ女にやられただけさ」
腫れ上がっている顔でクリスタルの方を見ていた。クリスタルは顔を赤らめつつ反論をした。
「貴様が私の裸をみたのが悪いのだ!!」
「でも、入浴中って看板あったわよ?ね?ゼルダちゃん。」
「はい。所長の言う通りにドアの方にありましたが。」
全員がレオハルトの味方をした。実際レオハルトはとばっちりを喰らっただけであり、責めらる筋合いなどなかったのだ。
にも関わらず、クリスタルにボコボコにされるとは何とも理不尽極まりない。
「うっっ…。申し訳ない…」
「たくっ、本気で殺しにかかりやがって人殺しはダメだぜ?」
真面目なかおで正論をいうレオハルトであるが、そもそも彼は大罪人であり数多の人を手にかけているのだ。
彼女にとってはレオハルトには絶対に言われたくないだあろう。
「それよりも、今回の出所の条件だが」
「話を変えやがった…」
今回レオハルトが出されることとなった事件である永久遺産である七つの剣強奪事件のことである。
正確には一つを除く六つが盗まれたのだが、全く手がかりがなく行き詰まっていたのだった。
「盗られなかった一本は何だ?」
「英雄マルスの剣 聖剣 《エリュシオン》」
かつて《セブン・ブレーブス》の一人英雄マルスが所有し扱っていたと言われる魔剣。鋼を容易く切り裂くその切れ味と特殊な能力から問題児とまで言われていた剣である。
「ほぅー。あの問題児が残ってたのか。」
「問題はそこよね。どうして盗んだ奴は《エリュシオン》だけ盗まなかったのか」
フリージアはカップに入ったコーヒーを一口飲みながら疑問を投げかけた。
「あれは自分の気に入ったやつしか触れることも許さない気難しい乙女みたいな剣なんだよ」
「確かに…あれだけ保管する際に大変苦労したと聞いたことがある」
《エリュシオン》は他に比べて気難しく、扱いこなせるものもマルスだけであったと言われるほどであるのだ。
保管するだけでも何十人もの怪我人や果ては死亡者を出すほどであったらしいのだ。
「まぁ、手間はだいぶ省けたな。あとの六本はまだマシだからな」
「しかしどうやって探すのだ。」
盗まれた際、手がかりらしきものは一切残ってはいなかった。そのため、どこに持っていかれたかすら何も分からない状態である。
そのため、レオハルトに探させても同じことではないかと思っていた。
「安心しろ。当てはあるから」
「当て?」
一体何の当てかは知らない。もしかするとどこにあるのか知っているのだろうか。
しかし、タルタロスに収監されていたレオハルトが分かるとも言えない。
レオハルトはテーブルに置かれて少し冷めたコーヒーに手をつけて一気に飲み干した。
「ところで俺の剣はどこにあるんだ?」
「あれなら、ここにあるわよ。ゼルダ」
ゼルダを呼ぶと彼女はひと振りの剣を持ってやってきた。
黒と金色で施された鞘と柄であり、何人にも触れること許さないようなオーラのようなものが感じれた。
「久しぶりだな《リベリオン》。お前にあえて嬉しいよ。」
「相変わらず、不気味な剣よね。レオちゃん以外ではつかいこなせるのは誰もいないくらいだし。」
フリージアは鞘から引き抜いて剣身をじっくりと見るレオハルトに微笑みながら語りかけた。
「それが《リベリオン》…。《反逆》の名を冠する名剣で鍛冶師マキナの最悪の傑作と呼ばれる剣…」
「おいおい、うちの剣をそんな言い方はないだろう?」
自分の相棒をひどい言われ方をしたためか、少しムッとした表情をしていた。
「事実、その剣持った人間はろくな人生をおくったことないと聞くからな」
レオハルトの剣の《リベリオン》は伝説の鍛冶師マキナによって作られた剣であり、マキナ曰く「とんでもない化物を作ってしまった」という程である。
これを手にした人間の人生はまともではなかったらしくみな非業の死を遂げている。
「こいつは俺の相棒だからな。俺はこいつの全てを受け入れる」
「ふふ。私がその剣だったらレオちゃんにベタ惚れだけどねー」
フリージアはコーヒーを飲み、愉快に笑っていた。
「それより話は戻るが手がかりはあるのだな?」
「手がかりって言うか、当てだな。そんなに期待はできないけど」
レオハルトは割としつこく聞いてくるクリスタルに気を押されつつ答えた。
しかし、永久遺産を奪われたことは国民に知れたらとんでもないことになる。だからこそこの騒動を早急に片付けなければならないのだ。
「さてと、この伸びきった髪と髭を切りたいのだが…」
「それなら後でゼルダが切ってあげるから大丈夫よ。それよりちゃんとした服を着せないとね。」
ちなみに誰も反応してなかったが、レオハルトはバスローブ姿であった。
そのためその下は素っ裸なのだ。
「動きやすいやつがいいな!頼むぜ所長!」
「はいはい」
レオハルトがニコッと人懐っこい笑顔でフリージアにした。その顔を見て少々呆れながらも弟のオネダリを聞く姉のような優しい顔で返事をした。
「さてと支度をし始めるか!」
レオハルトは清々しい顔で両手を上げて叫んだ。
「ちなみに私も監視目的を兼ねて同行するからな」
その言葉を聞いてまるで大きな岩にぶつかったかのように倒れた
まさかの出来事にショックが大きかったようである。
「えぇ!?お前も来るの?この暴力女!!!?」
ゴス!!!
鈍い音が部屋の中に響きフリージアは思わず目を背けた。
そこには大きなたんこぶが浮かび煙がでている倒れたレオハルトがいた。
先程重いゲンコツ頭に食らったようである。
「誰が暴力女だ。文句は受け付けんぞ。決定事項だからな。」
「あらあら良かったじゃないレオちゃん。一人じゃ寂しいだろうし」
「いや一人の方が全然マシなんですけど…」
手をブンブンと振ってあくまで彼女を受け入れるつもりはなさそうである。
そんなレオハルトにイラッとしたのか、彼に向かって剣を抜いて喉仏に突き付けた。
「ふざけたこと言うその喉はいらないだろう?私が取ってやろうか?」
「可愛げのない女だな?お前ぜっっっったいモテないだろ?」
彼女に癇に触ったのか、怒りのこもった表情に剣をプルプルと震わせていた。
「うるさい死ねぇ!!!」
「あぶねぇ!!!」
クリスタルは躊躇なく剣を喉に突きにきた。
間一髪で避けたレオハルトであるがさらに剣を振り上げて攻撃してきた。
「なぜ避けるのだ!!」
「なんで避けちゃダメなの!!?」
彼女の目は本気である迷いのない殺意のこもった目。まさに獲物を狩る怪物の如く彼女はオーラが溢れていた。
「どうして私が、お前と共に旅することになったと思う?」
「さぁ?興味ないね」
「ふん。そんな口も今のうちだけだぞ。私がお前の力を制限出来るからだ。」
クリスタルからでた言葉は衝撃的なものであった。あの最悪の大罪人であるレオハルトを止めるのは決して容易ではない。
何十もの部隊を投入、さらに最高戦力の
「ほぅ…。やれるもんならやってみな」
彼女の言葉に火がついたのか、やる気になっていた。
2人はお互いを見つめ合い相見えていた。
セブン・ブレーブス 石田未来 @IshidaMirai
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