最終章 円満

 奥さんとお子さんと、私たち大学生4人で切り盛りしていたラーメン屋も、軌道に乗るとまでは行かなかったが、賃料が払えて、奥さんとお子さん2人が細々と生活する分までは回復が見込めるようになった。

 そして、私たちが大学を卒業する頃、皆、社会人となるので、もうお店も手伝えなくなり、少し寂しい気もしましたが、奥さんから、衝撃の告白をされました。




 「あなたたち4人がやって来た日、わたしとこの子ね・・・心中するところだったの」


「え?????えーーーーーーーーーーーーーーーーーっ!?!??」


「うふふふ・・・驚かせてごめんなさいね」


私には、当時、強い霊感があり、あの時みえた、あの黒い渦は、死地への扉でも開いてたのかもしれない、そう思いました。

1週間、ご主人と連絡がつかなかった奥さんは、途方に暮れて、親族たちも手を差し伸べてはくれず、その宗教団体と関わりを持ちたくない一心で、奥さんたちから遠ざかったそうです。孤立した奥さんとそのお子さんは、もう生きていけないと察知して、子どもと心中を決意したそうなのです。


「今は、生きていて良かったって思っています。皆さん、本当にありがとう。そして、私たち、これからも、主人の帰りを待っています」


奥さんは、そういって、にこっと笑って、私たちとさよならをした。


 その後、私たちのように、他の常連客たちが陰ながらその親子を励まし支えたと聞いています。みんな、そのラーメン屋さんをこよなく愛していましたから、お店が無くなって欲しくないという切なる願いでした。


 私たちは、社会人となり、仕事が忙しくなり中々、そのラーメン屋には行けなくなってしまいましたが、その場所にお店があるのは知っていたし、いつでも行けると思って安心もしていました。


後に、代替わりをして、支店を出すまでにお店が軌道に乗っていました。

そんなラーメン屋は今も地元に愛され続けています。

                        完

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ラーメン屋の悲劇 黄昏の夜月(たそがれのナイトムーン) @night-moon-crisis

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