異常図書1427-C-1F[真神州絵巻]
分類:図書凶器(暫定)
人気推定値:測定不能
状況:解析中に焼失
脅威:失踪/黒 人体消失 目的の達成
現在の脅威:不明
作品の概要
2039年12月31日、特異集団[神州文化保存学会]が制作、使用した異常図書。
概ね日本神話をなぞる形の絵巻物だが、国産みの神話に宇宙の概念が追加されており、太陽系内の惑星にそれぞれ神が割り振られている。
金星に豊穣神、火星に軍神を割り振るなど、ギリシア、ローマ神話との共通点が見られるが、死者の国が地上と繋がっているためか、冥王星が存在しない。
また、異常図書1413-9-1の設定資料に用いられている書式を参考にしたと思しき資料集が付属しており、異常図書1413-9-1を元にして、集団の活動理念「神州の正しき姿を再現すること」を実現しようとした可能性が高い。
これを裏付けるものとして、制作に関わった人物が使用していたチャット等の通信記録が存在する。
異常の発現
異常図書1427-C-1Fの上に大量の白い綿を積み上げ、これをかき分けて進むことで、異常図書1427-C-1Fによって生成された世界に天降ることができるとされている。
これが成功したかどうかは不明だが、この計画に関与した特異集団[神州文化保存学会]の構成員全員と、発見時に綿の中へ深く踏み込んだ捜査員1人が行方不明になっており、少なくとも人体消失までは成功するものと思われる。
発見と対応
[神州文化保存学会]の動向を監視していた警視庁捜査員から「施設内から人の気配が突然消えた」という報告があり、異常図書事件の疑いで調査を開始。
施設内は無人だったが、飲みかけの飲料や、開封済みの菓子袋が放置されており、逃走したような形跡もなく、講堂内には大量の綿が積み上げられていた。
綿は特に異常性を示さなかったため、手作業で撤去を開始。この作業中に警視庁捜査員████の行方がわからなくなった(事故報告提出済み)。
本件は事故であったと思われるが、████は[神州文化保存学会]と目的不明の接触をしていた形跡があり、故意に異常を発現させた可能性もある。
その後、綿の下から絵巻物と資料集を発見し、状況から異常図書と断定。加えて、計画と制作に関わった人物が残した記録を発見した。
この記録には異常図書1413-9-1と、その事件についての言及が見られる。
[神州文化保存学会]が、どのようにして非公開の解析データまで含めた異常図書1413-9-1の情報を入手したかは調査中である。
文書1 計画の記録
真神州計画
ホリゾニアという作品が、ひとつの世界を作るに至り、筆者を創造主として迎え入れたという事件があった。
あの構造を元に神州を再現することができれば、我々は真の神州に天降ることができる。
解析データは既に入手できており、あとは相似と類型を用いて対応させ、道を繋げれば良い。
形式は漫画が簡単であろうと思われるが、神州の姿を歪める恐れがあるため、絵巻物を用いることにする。絵師、画材の選定は菅原様にお任せする。
動作試験の方法は後日議論。
文書2 制作チームのものと思しきチャット記録
制作1:問題発生。宇宙の概念を挿入する必要。
制作3:高天原では?
制作1:天降って向かう都合上、この世界が高天原。これは上位次元。宇宙ではない。現有の資料では不足。
制作L:挿入せずに実行するとどうなる?
制作1:機能不全による失敗。神州の歪みに繋がる恐れ。ホリゾニアの能力を再現するためには不可欠。
制作2:どの程度まで作り込めば良い?
制作1:最低限、太陽系。
制作3:しかし、宇宙の挿入で歪みが出ては元も子もない。
制作L:とりあえず、菅原様にお尋ねしておく。宇宙は一旦保留で進められるか?
制作1:可能。しかし既に地上部の進捗率は7割超。4日以上経過した場合、作業遅滞は確実。
制作L:できるだけ急ぐが、この仕事は早さより完成度だ。
異常発現の原因
確認できている異常性は、転移の魔術書として機能する部分のみである。
これはほとんど既知の構造であるが、転移先として、この宇宙内に存在しないと思われる場所が指定されている。
帰還者がおらず、実験して検証することもできないため、これが設計者の企図したとおりに動作するのかは不明である。
記録が動作試験について言及しているため、[神州文化保存学会]はなんらかの方法で動作試験を行ったものと思われるが、試験の記録が発見できていない。
また、異常図書1413-9-1の解析データが流出していなければ、異常図書1427-C-1Fは完成しなかったか、相当に遅れたものと思われる。
備考
動作試験の記録が見つかるどころか、試験の準備をしたような痕跡も出て来ない。まさか、ぶっつけ本番で使ったのか?
↑やりかねない連中ではある。
現状
解析作業中に異常図書1427-C-1Fが発火し、激しく炎上。消火する間もなく焼失した。
偶発的なものではなく、生成した世界への道を閉ざすために、あらかじめ仕掛けてあったものと思われる。
何が原因となって発火に至ったかは不明である。
自壊する可能性は予想できていたが、どのようにして自壊するかを早期に予想することは非常に困難であるため、取り扱いの是非を論じることはしない。
異常図書1427-C-1Fについて、現在できることはほとんどない。今後、どのような動きを見せるかも不明である。
備考
生物を生成するだけでも十分異常だが、世界までもがこう簡単に作れて良いものだろうか?
[二重世界仮説]の関係資料を見ていると、我々の世界さえ、異常図書によって生成されたのではないかと思えてくる。
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