異常図書1401-8-5[読めば人生が変わる理想人論]

分類:図書凶器

人気推定値:8vol

状況:掲載物・原稿の焼却/生成物の駆逐作業中

発見時の脅威:変身/赤 人体の不可逆的変形 封じ込めの必要

現在の脅威1:変身/緑 低度の再使用の危険

現在の脅威2:汚染/黄 生成物繁殖の危険


作品の概要

 2001年8月、筆者である████が██社の知人(現在捜索中)を通じて共同出版した、人類も家畜のように改良すべきと説く思想書。3章からなる。


異常の発現

 素材や装丁に魔法陣が仕込まれており、本を開くことで魔術が始動する。この状態で各章に分散した呪文を全て読み取ると、人体の不可逆的変形が発生するものと思われる。

 この変形によって生成された人型生物(以降[理想の人間])は全て同一の特徴を持ち、被害者との関連性は一切示さない。

 確認しているうち、6.1%の事例で生成とほぼ同時に死亡している。死因は血胸による窒息と見られる。死亡事例が発生する条件は現在不明。


[理想の人間]

外見年齢:20〜30代

性別:両性。ただし外見は男性的

身長:182センチ

体重:70キロ

髪色:黒

目:丸く、大きい。黒の瞳。瞬膜が存在する

肌:紫外線量に応じて素早く変色する

鼻:鷲鼻

耳:丸く、大きい

声:様々な声を使う。女装して女声で話し、駆除部隊を欺こうとした事例あり

付記:体力、知能、共に非常に高い


発見と対応

 筆者である████がSNS上で発表した宣伝コメント「あなたを理想の人間に変える1冊」から、人格版画である可能性を考え、警戒態勢を構築していた。

 2001年8月██日、最初の人体変形を確認し、捕縛。異常図書と断定。

 回収、焼却を行うと共に、故意に異常図書を制作した疑いで████を逮捕。出版の協力、技術供与を行ったと見られる知人を捜索中。

 [理想の人間]は各種検査の結果、被害者と一切の関連性を示さなかったため、異常図書による生成物と断定。駆除した。

 販売分は全て回収、焼却できたが、████によって配布された68冊の行方がわかっていない。

 SEATに出動を要請し、回収、駆除作業を行っている。


異常発現の原因

 ████の知人によって魔術書として制作されたことが原因と見て間違いない。


現状

 回収できていない68冊と、████の知人の行方を追っている。


追記1

 ████の行動記録の追跡から59冊の所在が判明。全てを回収、焼却し、[理想の人間]46体を駆除。

 [理想の人間]が異常図書1401-8-5を利用して、[理想の人間]を増やそうとする行為、またヒトとの繁殖行動を試みている現場を確認。

 [理想の人間]の顔写真を公開し、ただちに治療を必要とする感染症の患者であったという情報を流布。


追記2

 ██人から「顔写真の男と接触した」という報告があった。このうち█人の女性の子宮内から[理想の人間]の体液を検出。ただちに洗浄し、感染症の予防薬として堕胎薬を投与。

 十分な効果があるか不明なため、監視を継続する。洗浄に対する抵抗力を有している可能性や、体液が変異原性を有している可能性があり、今後彼女らが妊娠した場合、それが[理想の人間]のものでないか確認する必要がある。


追記3

 「顔写真の男を見た」という通報を受け、[理想の人間]5体を駆除。4冊の所在が判明。焼却した。

 [理想の人間]が異常図書1401-8-5のコピーを制作しようと試みていた形跡を発見。内容のコピーだけなので、異常性は有していないものと思われる。


追記4

 2001年8月██日、[理想の人間]から報道機関13社に、駆除作業を虐殺、人権侵害であると批判する文書が送付された。

 ただちに破棄し、報道しないよう指示したが、████社が無視して報道しようとしたため、SEATに対応を要請。阻止に成功した。

 文書を送付した[理想の人間]3体を駆除。3冊を回収。焼却した。


追記5

 [理想の人間]の目撃証言を受けて駆除に向かったところ、[理想の人間]2体と、偽造した身分証を所持している男を発見。[理想の人間]を駆除し、男を逮捕した。

 取調べ中に、この男が████の知人と判明。[理想の人間]の国外逃亡を幇助ほうじょしようとしたものと見られる。

 2冊を回収。焼却した。これで回収は完了したと思われるが、[理想の人間]の駆除はまだ不完全である疑いがある。

 引き続き、[理想の人間]の警戒を継続。胎児の検査も行う。


音声1 ████と母親の電話

 2001年8月██日、████にかかってきた母親との電話の録音

『あなた、逮捕されたって一体何をやったの?』

「なんでも良いだろ。それよりなんで電話がかけられるんだよ」

『なんでって――』

「俺が送った本、読まなかったってことだろ!」

『ちょっと落ち着い――』

「うるさい! 黙れ! ……(嘲笑)本当に黙るのな。ああ、言ってやった。ついに言ってやった! 毎回毎回喚き散らして、そのうえ……(舌打ち)バカが! バカどもが! ああ!」

(電話を切る)

―――

 ████の母親宅から1冊を回収。見本として手作りされたものと見られる。同様に作られたものが存在する可能性が浮上した。

 材料の購入記録はこれを否定しているが、複数回に分けて購入し、その分の記録が未発見である可能性もある。

 ████は尋問に対して黙秘を続けていたが、音声1の内容から、母親の殺害が制作動機の1つである疑いが強くなった。

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