異常図書1355-C-1[りの・かてす・ちいとに]

分類:召喚媒体

人気推定値:測定不能

状況:水際作戦中

発見時の脅威:召喚/赤 危険物召喚 封じ込めの必要

現在の脅威:召喚/黄 危険物召喚 封じ込めの維持


作品の概要

 1985年12月から郵送されていたカタログ。商品の写真と、筆書きの短い直線を多数組み合わせた表意文字と見られる未知の言語(以後、特異言語1355-C-1)で構成されている。

 手触りや性質は紙に似ているが、植物繊維ではなく、皮膚を薄く剥がし取ったようなタンパク質のシートで作られており、未知の生物のDNAが1種類検出されている。このことから[特異知的生物]によって、あるいは[特異知的生物]を利用して制作された可能性がある。

 タイトル[りの・かてす・ちいとに]は、受取人が音読したもので、受取人による説明から和訳すると「あなたが欲しい物は何ですか?」が近いと思われる。

 振る舞いを見るに通販用カタログのようだが、料金等の請求が無いことから、カタログギフトと思われる。


異常の発現

 受取人宛ての荷物として、赤い封筒(これも異常図書1355-C-1と同様のタンパク質シートで作られている)に入った状態で宅配車両内に出現する。この時、配送管理データも挿入されるようである。

 封筒に貼られたシールに発送者の情報が記載されているようだが、郵便番号に類するものと思われる8桁の数字以外解読できていない。

 全ページが特異言語1355-C-1で記述されているが、受取人はこれを問題なく読解でき、いずれかの商品の入手を熱望する。このプロセスにも異常性が備わっているように思われるが、特異な技術体系で制作されているため、このメカニズムは現在も解析中である。

 1枚だけ付属しているハガキ様のタンパク質シートが注文書と見られ、これに商品写真左上の円内に書かれた文字(特異言語1355-C-1の数字と思われる)を書いてポストに投函することで注文が完了する。

 この時、ポストに投函した時点で注文書は消失する。

 商品は、その3〜4日後、受取人の住宅に、ピンク色の硬質ケラチンで作られた箱に入れられて届く。

 回収に成功した商品の詳細なリストは後述。


発見と対応

 19██年8月██日、██市立市民病院の分娩室周辺で発生した、新生児による8人殺傷事件の状況があまりにも異常であった事から、地元警察がSEATに出動を要請。

 SEATが現場に到着した時点で、医師1人、助産師2人、看護師2人の計5人が既に死亡、父親と付近にいた患者2人の計3人が負傷していた。いずれも新生児の攻撃を受けたものと思われる。分娩室にいたはずの母親は行方がわかっていない。

 極めて危険であった事から新生児の解析を断念。交戦規定[拾骨]を発令。

 SEATと新生児の戦闘は3時間におよび、対戦車ロケット弾7発を撃ち込んで、やっと制圧に成功した。

 父親を尋問した結果、使用済みの異常図書1355-C-1と、[そりそか・きなてら・ついちと(和訳:赤ちゃんすくすくミルク)]12グラムとパッケージを回収。

 [そりそか・きなてら・ついちと]と新生児の詳細は後述の商品リストに記述。


 この時点では出現プロセスが判明していなかったため、バイオテロの可能性があるとして赤い封筒の映像を公表し、回収を試みたところ、家庭から5冊、███運輸から3冊を回収。

 現在未確認というだけかもしれないが、███運輸以外の宅配車両に出現した例は確認されていない。


追記

 米国でも█████社の宅配車両に出現していたことがわかった。

 単純に最大シェア企業を選択しているのか、発送者が得意先として選択しているのかは、現時点では不明である。

 米国以外の地域の情報は現在回答待ち。


異常発現の原因:異常図書1355-C-1

 解析中。特異な技術体系で制作されているが、恐らく既存の魔術書と共通する構造を持つものと思われるため、時間さえあれば困難な作業ではないと思われる。


異常発現の原因:商品

 大半がタンパク質から形成されており、異常図書1355-C-1から検出されたものと同一のDNAが検出されている。

 細胞が整列していること、いくつかの商品に鋭利な刃物による切断の痕跡が見られたことから、木から果実を収穫するように、未知の生物の器官として生成されたものを収穫している可能性が高い。

 家具、食器等、手で触れる程度の物は、現時点では異常性を示していないが、食品類は摂取すると極めて強い変異原性を示す。未知の酵素がDNA複製の異常と細胞分裂の促進を引き起こし、3時間ほどで人体の不可逆的変形に至る。

 これら全ての商品が巨大な生きた工場で製造されていると仮定した場合、工場の敷地面積は少なくとも2万平方メートル、工場の維持に1日あたり2〜4千トンの飼料が必要になると思われる。

 そのような敷地も、物資の移動も確認できないことから、異常図書1355-C-1は地球以外の土地から発送されている可能性が高い。


現状

 関係各社に情報共有を徹底し、出現次第破棄することで被害の発生を食い止めている。

 注文書を使用して発送の停止を要求する作戦を検討中であるが、その前に特異言語1355-C-1を解読する必要がある。

 解読作業は20██年頃に完了する見込み。


回収できた商品の分析

[のいちといの(和訳:やわらかな口付け)]

 無地、乳白色のカップとソーサー4組、平皿4枚、ポット1つからなるティーセット。タンパク質から形成されているが、-41度の低温から241度の高温にまで耐える。

 分析の結果、細胞が生きており、注がれた物をいくらか栄養として摂取し、温度に応じて構造を変化させていることがわかった。

 魅力的な研究資材であることから、協力機関が買い取りを熱望したが、これらが変形するなどして、新生児による8人殺傷事件が再現される可能性を考慮し、焼却処分した。


[なにのね(和訳:平穏)]

 乳白色のテーブル(幅150センチ、奥行80センチ、高さ70センチ)。

 これも細胞が生きており、傷を自動で修復し、強い力を受けると変形して受け止める。この変形は極めて巧妙であり、3メートルの高さから鶏卵を落としても割れない。

 変形が高速で行われること、ティーセットよりも大型であることから、不用意に破壊しようとすると、脱走や致死傷性事象に至る恐れがあり、耐爆容器に一時保管中。


[そりそか・きなてら・ついちと(和訳:赤ちゃんすくすくミルク)]

 粘度の高い乳白色のペースト。強い乳臭がする。説明書には「胎児の臓器が揃ったら、1日1回20グラムを40度のお湯150ミリリットルに溶かして飲用する」と書かれていたらしい。

 わかっているだけで2千種類以上のタンパク質が含まれており、生きた細胞も見つかっている。

 この細胞はヒトの細胞に接触すると、ウイルスの生産拠点のような挙動を示し、それを用いてDNAの改造を行う。改造された細胞もまた他の細胞を改造する能力を持ち、高速で増殖して肉体を作り変えていく。

 培養した細胞で実験したところ、異なる人物の細胞が、改造後に融合する姿が見られた。検証不可能な事柄ではあるが、新生児による8人殺傷事件で母親が行方不明になったのは、新生児と融合したためだと考えれば辻褄が合う。

 漏出した場合に甚大な被害を及ぼす恐れがあるため、実験後焼却処分。


[そりそか・きなてら・ついちと]によって変異した新生児

 身長約2メートルのヒト型生命体。全身が皮膚を剥がしたようなピンク色で、顔が無く、手足には指が無く、全身がゴムのように変形したことから骨も無いものと思われる。

 被害者の状態から大型肉食獣をしのぐ筋力を持っており、交戦記録から戦車装甲並みの耐久力を備えていたことがわかっている。

 制圧と同時に焼却処分したため、それ以上の性質は不明。


[りつたちか・ついちと・のねにりと(和訳:肉汁たっぷり分厚いステーキ)]

 400グラムのステーキ肉2枚。説明書には「熱したフライパンで両面を10秒強火で焼いて食べる」と書かれていたらしい。

 組織検査を行ったところ[そりそか・きなてら・ついちと]から見つかったものとよく似た細胞が見つかった。

 説明書のとおりに調理すると、中心部までは火が通らない。体内に取り込まれた細胞が、[そりそか・きなてら・ついちと]と同様の振る舞いをするものと思われる。

 組織検査後に焼却処分。


[めゆ・えろ・すねにつちに・ねなりひにち(和訳:6日すねにつちに旅行)]

 ツアーチケットと思われる、タンパク質の板(縦6センチ、横16センチ、厚さ6ミリ)。

 5泊6日のツアーだと思われるが[すねにつちに]が地名であること以上はわかっていない。

 説明書に、チケットに両手で触れて左右に撫でるイラストと、ポータルらしい穴のイラストが書かれており、チケット自体がポータルとしての機能を有すると見られる。

 これを使用して発送者の世界を調査するという提案がされたが、地球でも発送者の世界でもない場所へポータルを作ることも可能だろうと思われることから、却下された。

 生きた組織が使われていないので、比較的安全性が高いと判断し、ポータルの解析用資料として保存。


追記

 回収から174日後、急速に分解が進み破損。使用期限が切れたものと見られる。


████の商品

[たないの・まなにの(和訳:貴人の衣装)]

 生きた細胞で作られたイブニングドレス。表面が常にぬめりのある液体で湿っており、食品同様の変異原性を示す。これが着用者と融合すると、歩き回る変異原と化す。

 19██年6月██日、████が半径約5メートルの範囲に入った生物を手当たりしだいに変異させる事件が発生。

 発見時、既に█████████████な██に██が████████、███と████に██を██、██県██市███の30%を████████して制圧した。

 ███████と思われるが、███████████。

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