異常図書1319-A-C[宮沢邸]

分類:異常知識

人気推定値:計測不能

状況:監視網完成、脅威エリア封印済み

発見時の脅威:誘引/黄 危険地帯への誘導

現在の脅威:誘引/緑 低度の封鎖破綻の恐れ


作品の概要

 ██県██市内にある屋敷、脅威エリア[宮沢邸](座標██.██████, ███.██████)への道を示す地図。

 ██県██市の地図に、脅威エリア[宮沢邸]の異常性によって挿入されるものと思われる。


異常の発現

 ██県██市の地図を、10時8分〜10分、または22時8分〜10分の間に印刷すると、そのうちの1つに挿入される。地図帳だけでなく、店舗案内のアクセスマップ等に挿入された事例も確認されている。

 この現象は印刷物でのみ発生するものと思われ、手書きのものやデジタルデータに挿入された事例は確認できていない。手書きで1万回、デジタルデータで100万回の実験を行ったが、出現しなかった。

 地図が示す地点はバラバラ(██市西端と██市東端に挿入された例がある)だが、地図を持ち、地図に沿って進むと、脅威エリア[宮沢邸]に転移する。


発見と対応

 ███社から「自社の製品に見知らぬ地名が挿入されている」という通報を受け、調査を開始。

 トラップストリート(他社に地図の丸写しをされた場合に証拠とするために挿入される架空の道路)に行ってみるという企画を社員がWEBで発見し、閲覧中に異常に気付いた。

 企画の発起人は出発報告の後、行方不明になっており、現在も発見できていない。

 ただちに大々的な地図の回収を行い、出現の法則と脅威エリア[宮沢邸]の座標を特定。脅威エリア[宮沢邸]が挿入された地図は焼却し、脅威エリア[宮沢邸]周辺を封鎖。

 封鎖の際に脅威エリア[宮沢邸]内部の無人機調査を行ったが、ドア、窓、通気口、いずれからの侵入でも距離に関係なく、5秒後に実体、信号、ともに消失。

 内視鏡による調査では、5秒後に挿入部分が切断、消失。これらのことから、封鎖、調査に当たる職員は、絶対に建物内に手、足、首、貴重品などを入れてはならない。内部の状況が不明なため、石などを投げ込む行為も禁止である。


 脅威エリア[宮沢邸]の見え方には差異がある。大別すると下記のように分かれる。

「真っ暗で乱闘でもあったような荒れ方をしており、血痕のような汚れも見える」

「真っ暗で埃が積もっており、少なくとも十数年は放置されているように見える」

「明かりが点いていて、楽しそうな声が聞こえる。誰かの人影も見える」

 無人機や内視鏡で得た5秒間の記録でも、同様の差異がある。

 このうち「明かりが点いている」と報告した者は、脅威エリア[宮沢邸]内部に誘引される恐れがあるため、脅威エリア[宮沢邸]に関する業務からは除外すること。

 どこから差異が生じているのかは不明。地図の有無かと思われたが、地図に従っても、座標に直接向かっても、見え方にはバラつきがあった。年齢、性別、出身地、身長、体重、血液型等でも調査を行ったが、法則性は発見できていない。


異常発現の原因

 不明。脅威エリア[宮沢邸]から、10時8分〜10分、22時8分〜22時10分に強い電磁パルスを感知。これが印刷機に干渉していることが強く疑われるが、脅威エリア[宮沢邸]のどこから、何を目的として放射されているのか、手がかりが無い。


脅威エリア[宮沢邸]

 1925年、█████氏が建築した和洋折衷の、文化住宅と呼ばれた様式の邸宅。█████氏の親族が保管していた手紙などから、1938年まで知人などを招いていたことがわかっており、当時は普通の家屋だったものと思われる。

 1943年、大日本帝国陸軍が通信基地として使用するために接収し、終戦後の1945年9月には、占領軍により接収。1952年、日本政府に返還された。

 基地としては用済みであったため、占領軍が引き払った後は書類上でやりとりされたのみで、放置されていた。

 現時点で脅威エリア[宮沢邸]の干渉が確認できる最古の地図は1981年、██社から出版された[日本縦断のススメ]だが、異常の性質からして大量に拡散される類のものではないため、これ以前の物が気付かれないまま破棄されている可能性は高い。

 特に、通信基地として利用されていた時期があることと、電磁パルスにはなんらかの関連が疑われるため、1943〜1952年の間に異常性を帯びた可能性は否めない。


現状

 新しく販売される印刷機に異常図書1319-A-Cを検出するシステムを導入。今後30年ほどで更新が完了する見込み。

 また、脅威エリア[宮沢邸]周辺を封鎖し、被害者の発生を抑止すると共に、異常図書1319-A-Cが挿入された地図を回収している。

 印刷機の更新が完了次第、封鎖も緩和する予定だが、完全に解除することはできないだろう。


脅威エリア[宮沢邸]の破壊

 内部の状況、異常性の詳細が不明なことから、むやみに破壊すると異常性の増悪を招く恐れがあり、危険だと思われる。

 最悪の場合、建物内部の、物体を消失させる空間が周辺一帯に拡大し、脅威:失踪/黒の事象が発生する恐れがある。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る