異常図書事件コードH30-0905-M-Uk

分類:図書凶器(暫定)

人気推定値:測定不能

状況:異常図書特定中

脅威:失踪/赤 人体消失 封じ込めの必要


作品の概要

 不明。画集か、漫画のように見える。A6判文庫本、モノクロの表紙、表紙に「青き」「かな」の文字を確認。


追記1

 19██年の映像に同様の異常性を保持していると思われるA5判ハードカバーの存在を確認。これも画集か、漫画のように見える。恐らく同一の内容。群青の表紙、フィルムが劣化しており、文字判読不能。


追記2

 18世紀頃の怪談に、同様の異常図書によるものと思しき記述を発見。被害者は本を読みながら堀へ転落し、落下中に消失。

 洋本様式の装丁が日本に伝わったのは明治以降であるので、新種の可能性が高い。3種類以上存在する?


追記3

 タイトルは「青きことは美しきかな」であると思われる。著者名、出版社名は書かれていなかった。


異常の発現

 一定以上の速度で移動中に特定のページを開くと、異常図書と被害者がその場から消失するものと思われる。


発見と対応

 20██年9月█日、休憩中の職員がSNSに人体消失の目撃情報を発見。

 「本を読んでいた人が消えた」と記述されていたことから、異常図書事件の可能性を考え、さかのぼって詳細に検索したところ、発見当日時点で同様の投稿が██件あり、おおよそ1〜2か月に1件のペースで増加していることがわかった。

 さらに大規模掲示板、オカルト雑誌の投書欄等に検索範囲を拡大したところ、同様の記述を███件発見。

 今のところ分かっている被害者の共通点は「移動中に本を読んでいた」ことのみ。鉄道、バスに乗車中が最も多く、まれなものでは高所からの転落が█件。

 明らかに本が関係していることから、異常図書事件と断定、調査を開始した。

 しかし、そもそも車内の映像が少なく、被害者が映っている映像も7本しか得られなかった。映像から判明した異常図書の情報は、作品の概要に示した通りである。

 防犯の名目で鉄道、バスに監視網を構築。


追記1

 書店、古書店、骨董市、フリーマーケット、出版記録を捜索したが、捜索中の異常図書と特徴の一致するものは発見できなかった。

 しかし、店員に質問したところ、特徴の一致する本を渡したという証言を得られた。

 バーコードの読み取りができず、データベースにも登録が無かったため、遺失物として警察に届けようかと考えたが、客が買い取りを強く希望したため、無料で渡したという。

 この異常図書は、妖怪図書のように出現した可能性が高く、人格版画のように被害者の行動を制御する疑いがある。

 外見について新たに得られた情報は、作品の概要、追記3を参照。 


追記2

 前回の被害からもうすぐ1か月が経過する。利用客数の多い書店に当たりを付け、2人1組で異常図書の確保を試みることにした。


記録1

 異常図書を確保したと思われる職員、████との通信記録。

「██班、定時報告が来ていません。……██班? ██班応答してください」

『こちら███、すみません。トイレに行っていました。今合流して……あれ? ██さん? ██さん?』

「どうしました?」

『██さんが見当たりません。トイレの外で待ってるはずなんですけど』

「トイレ内ということは?」

『ありえません。ここは男女共用で、誰も入ってません(店員に問い合わせる声)本部、██さんは異常図書の影響下にある可能性があります。すぐ追います』

「了解。全班、██班が異常図書と接触した疑い有り。██が異常図書の影響下にあるものと思われる。次の鉄道駅、バス停に急行せよ」

(重要性が低いため10分省略)

「██、██、応答してください。██、██、応答してください」

『(ノイズ混じりの鼻歌、[月がとっても青いから]か?)』

「██? 現状を報告してください。██、今どうなっていますか!?」

『(不明な男性の声)あの、呼ばれてるみたいですけど』

『(ページをめくる音)ええ、呼ばれてるんです』

「██? 今、何のページをめくっていますか? ただちに応答してください! 5秒後にフラウンノイズを送信しますよ!」

『美しい世界に行くんです。月の青い、なんていうのかな……そう! ノスタルジックな』

「(フラウンノイズ)██、応答してください!」

(以後応答無し)

 ████と異常図書は消失した。████は鉄道もバスも使わず、ヒッチハイクを行っていた。

 運転手の男性によると、████は終始機嫌が良く、これから向かう先の話をしながら異常図書のページをめくっていたらしい。

 そして、赤信号で停止する際、時速35キロ前後に減速した瞬間、消失したものと見られる。

 ████の発言内容は、異常図書がポータルである可能性を示唆しているが、解析できない現段階では、分類は図書凶器のままに設定しておく。


現状

 次の出現周期に確保するための作戦を考案中。異常図書に被害者を分断する機能が備わっている可能性があり、闇雲に確保にかかると今回の二の舞になる恐れがある。

 遠隔麻痺装置による被害者確保、被害者が利用する交通手段の制御、出現周期前後に全ての書店の書棚を空にして店舗ごと確保する等の作戦案が出ている。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る